親友ポジション

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ステージ3

寝起きの悪い親友

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 とは、思っていたけれど。
 
「真山くん。ま、や、ま、くーん」
「……んー。千里って呼んでくれなきゃ起きないから……」
「ち、ちさ……と」
「…………」
 
 起きねーじゃん!
 今朝はまた、いつにも増して寝起きが悪かった。
 
「大学、遅れるぞ」
「ん……。オレ、今日行かないからさ。休み休み。今日は物件探しに行くことにした……。だからあと一時間寝かせて……」
 
 俺は溜息をついて、大学へ行く支度を始めた。
 ここのところずっと一緒にいたから、離れて過ごすのがなんか落ち着かない気がする。
 こんなんでどうするんだ、俺。あと三日四日したら、真山くんは俺の家からいなくなるんだぞ。 
 
「……行ってきま……す」
 
 返事はない。当の本人は人の気も知らず、ベッドで丸くなって眠っていた。
 
 
 
 
 大学へ行けば、いつもボッチなはずの俺にイケメンやらギャルやらがチャラチャラ話しかけてきて、瀕死状態。
 当然のように真山くんのことを聞かれた。
 かと言って、あいつなら今俺のベッドで寝てるよ……とか、事実とはいえ言えるはずもなく、愛想笑いでごまかした。昨日頑張って習得したばかりの愛想笑いは、きっと酷くひきつっていた。
 でも、思っていたより、みんな普通に話しかけてきたな。からかわれたり馬鹿にされることもなかったし。裏では何を言われているかわからないけど。あいつ暗い、オタクくさい、くらいは言われているかもしれない。
 一人で食べる昼飯にも慣れていたのに、真山くんのせいで味気なく感じた。明日は普通に、大学へ来るんだろうか。
 真山くんやバイトのことを考えてしまって、今日の講義はあまり身に入らない。
 どんなに夢中になったギャルゲーも、ここまで俺の心を乱すなんてこと、なかったのに。
 ああ……初めてプレイしたソフトは、こんな気分だったかな。早く帰りたい。帰って続きやりたいって思った気がする。
 それと同じ気分だなんて、俺、どれほど囚われてるんだ。
 ぽきりと折れたシャーペンの芯が床に落ちる。二回ほどノックして新しい芯を出してから、前を向き直った。
 
 
 
 
 バイト先で数時間ぶりに顔を見ることができて、やたらとホッとしてしまった自分に動揺する。
 
「こんなに長い時間離れてることなかったから、なんかすげー寂しかった。冬夜は?」
「別に……」
「つれないなー」
 
 君みたいに、そういうことが軽く言えないほどには、心細かったというか、寂しかっ……ああ、もう。
 
「いらっしゃいませー」
「いらっしゃいませ」
 
 久しぶりに入ってきたお客さんにグリーディング。
 裏には店長がいるけど、今日は初めて二人だけで店に立っていた。俺たちが慣れたから二人にしたのではなく、暇な日を狙ったのか今日は比較的暇だ。納品が来るまでは話す時間がそれなりにある。
 
「物件、どうだった?」
「ああー。いいトコ見つかった。1DKのバストイレつき、月2万。敷金礼金ナシ。部屋凄ぇ綺麗」
「え……そ、それって」
「ふふふ、そう。事故物件ってヤツだな」
「な、なんか出たら、どうするんだよ」
「そんなん。オレ自体が呪われたソフト、なんだろ、冬夜くん?」
「あ……。あれは、悪かったよ」
「いいんだよ。その通りだからな。まあ、そんなオレだからさ、前に何があったかなんて気にしねーし、安さ重視だ」
 
 真山くんが明るくそう言うなら、そうかって気になってくる。
 言ってることはもっともだし、真山くん相手なら幽霊のほうが裸足で逃げそうだ。
 
「引っ越しは日曜だから、よろしくな。つっても、荷物もそうねーけど……」
 
 そういえば、貸したのはパジャマくらいだ。下着は買ってあげたけど……。
 着てる服洗濯するために、俺の服貸したほうがいいかな。
 
「俺の服、いくつか貸そうか。洗濯するのに困るよな? 真山くんの好きそうな服は、ないけど……」
「マジ? すげー助かる。そろそろ匂いそうで心配してた」
 
 現実的すぎるだろ……。
 
 ファンタジー世界の住人だって自覚が足りないんじゃないか?
 俺は真山くんがパソコンの画面から出てくるのを確かに見ているのに、あれは錯覚で全部からかわれているだけなんじゃないかって、そんな気分になってしまう。
 
「あ、そういや、妹ちゃんの好感度、少し上がってたぜ?」
「それは、君を連れてきたせいじゃないかな……多分」
 
 好感度云々も、実際どこまで本当か怪しいもんだし。
 
「なあ、オレが一人暮らししたら絶対遊びに来いよ。絶対だぞ」
「あー、うん、まあ」
 
 お客さんがレジに来たので、会話はここで終了。会計が終わるとその後すぐ納品もきて、バタバタしていた。
 俺がおにぎりと弁当を並べていると、真美さんがやってきた。まだ陳列作業は終わってないけど、もう上がりの時間だ。
 真山くんは3時間バイトが延びてるから、俺が先に帰ることになる。別に待っていてもよかったんだけど、真山くんが何も言わなかったので先に帰ることにした。
 
「そんじゃ、冬夜、またあとでな」
「うん……それじゃ、お先に失礼します」
 
 真美さんと真山くんにぺこりと頭を下げる。
 
「冬夜くん、次は土曜ねー。よろしく」
 
 俺は後ろ髪を引かれながらコンビニを後にした。
 一緒に帰りたかった訳じゃない。待っててくれと言って欲しかった訳でもないからな、別に……。
 真山くんが俺の部屋に、ただいまと言って帰らなくなる。今日みたいに、一緒に帰ったり行動したりすることが少なくなる。
 そう考えただけで、こんな妙な気持ちになるなんて。
 ……だから嫌だったんだ、踏み込まれるのは。俺はこういうことに免疫がないんだ。
 くそ。三日に一度は泊まりに行ってやる。鬱陶しくなっても、もう遅いぞ、馬鹿……。
 
 
 その日部屋で真山くんを待つ3時間は、本当に長く感じた。
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