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ステージ4
練習
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香織さんを送り届けて、さて自分も帰るかと最寄りの駅へ。
「送り狼になるなとは言ったけど、手くらい握れよ、純情だなぁ」
ついた途端、そんな真山くんの声が耳元で響いた。
「なっ……真山くん!? カラオケに行ったんじゃ……」
「何言ってるんだ。かおちゃんで攻略対象は4人出揃ったろ? ならオレがカラオケ行く意味ねーもん」
「行く意味って……。真山くんが楽しければ、それが意味になるんじゃないか?」
「楽しい……楽しい、ねえ。だったらオレは、お前といるよ」
「え?」
「冬夜と一緒にいたい。言っただろ、オレは誰よりもお前のことを考えてるって」
「でもそれは、君の楽しさじゃないだろう?」
「どうしてそう思う? オレは、お前といるのが一番楽しいんだよ。お前のために存在しているんだから、当然だろ」
嬉しいはずなのに、どこかジリジリと、胸に焼け付くような感覚がある。
真山くんが言っていることは、彼の中では真実なんだろう。
でも……それは、作られた感情じゃないのか? そう設定されているから、俺のことが……大切なだけじゃ、ないのか。俺が、君の主人公だから。
「またなんか、変なこと考えてるだろ」
真山くんが、俺の髪をくしゃっと撫でる。
「親友と一緒にいたいと思っちゃダメなのかよ」
「……ダメじゃないけどさ」
「親友つったって、演じてるだけならここまでべったりする必要はないだろ? オレが、お前といたいんだよ」
「なんか親友って言うよりそれ、口説いてるみたいだ」
「お前が余計なこと言わすからじゃねーか。オレだって恥ずかしいぞ、こんなの」
前まではどんなクサイことでも平気で言ってたくせに、何を今更照れてるんだか。
真山くんは初めからこんな感じだった気もするけど、やっぱり少し……どこか変わった気がする。どこが、とは上手く説明できないんだけど……。
「それよりさ、今日泊っていけよ。今後について話そうぜ」
「今後って、攻略対象を絞るとかそんな?」
「それもある。ユカちゃんについてとかな」
「全力で遠慮したい」
「お前が遠慮しても、向こうはそうはいかないかもしれないだろ?」
ユカに関しては、いまいち感情がついていかない。混乱してる。
俺の中でユカは悪魔の姿をしていると言っても過言じゃない。なのに、そんなユカから好意を示されるとか本当に訳がわからない。
バイト先に来る予定だったのも、真山くんじゃなく俺が目当てだったのかもしれない……なんて。
それですら、自意識過剰すぎるんじゃないかと考えてしまう、それくらい今の事態についていけないでいる。
なんだか、本当に……恋愛ゲームをしているみたいだ。真山くんと出会ってから俺は、ゲームの世界に迷い込んでしまったに違いない。
ただし攻略対象は実写で俺にとってはまぎれもなく現実の世界。
たとえ……実は真山くんが画面から飛び出してきた訳でなく、俺が画面の中に入ってしまったのだとしても。
親友と夜の町を並んで歩く。少し前ならば考えられなかった現実が目の前にある。
そしてそれは、俺にとってとても心地好いものだった。
コンビニでつまみだけ買って真山くんのマンションへ。
家にお酒でも買ってあるのかと思えばお揃いのグラスに注がれた液体はスポーツドリンクだった。
「ずいぶんと健全だな……」
「無駄遣いはできないからな。それに酔ってするような話でもないさ」
いや、俺にとっては酔ってするような話にしたい。
真山くんはグラスの中身をぐいっと飲み干し、段ボールにぼすっと置いてニヤリと笑った。
「さて、何が聞きたい?」
「別に何も聞きたくない」
「ちょっ、お前少しはノれよ! 女の子の情報とか今の好感度とか聞けよ!」
「それよりテーブル買ったほうがいいよ。決めたつもりかもしんないけどまったくかっこつかないから」
「あー、やっぱり? 冬に向けてテーブルコタツでも買うかな。この前ハンズで6千円程度で売って……じゃなくて! 今はそんな話はどうでもいーんだよ。とりあえずユカちゃんの情報からな」
どうせ言い出すなら質問させようとするなよ……。
「前、罪悪感って言ったと思うけど今はそれがスッパリ消えて好感度MAXだ。今度会ったら話を聞いてやれ」
「はあ……」
「んで、次にかおちゃん。恋愛慣れしてないお前のことだから、もうこれベタ惚れじゃね? くらいに思ってっかもしんねーけど、残念ながら好意を寄せている、程度だ。ハート6個分くらい」
ハートで表したからってゲームに思えて食いついたりしないんだからねっ!
……でも、MAX10くらいか?
そして別にベタ惚れだなんて思ってない。
「まあ、役者が揃ってきたし、こうなれば夏美ちゃんは攻略対象から除いてもいいだろう」
「是非そうしてくれ」
「で、残るは真美さんなんだが、これがまったく読めない。ラブを表す単位はハートのはずなのに何故かお花が見えてるような感じだ」
「……なんでだろう。意味がわからないのになんとなく納得してしまうのは」
「だから今のところ、本命としてはかおちゃん、次にユカちゃん、大穴で真美さんってとこだな」
「好感度順って訳じゃないんだ」
「ああ。独断と偏見で、お前が幸せになれそうな順。もちろんお前の意志を尊重するぜ。さあ誰がいい?」
誰がいい? とか言われてもなー。興味ないって言ってるのに。
いつもからかわれてばっかだし、少しからかってみるか。
「真山くんがいい」
「恋愛対象としてだって」
「だから真山くん」
「冗談よせよ、笑えないぜ」
やっぱりそう簡単には引っ掛からないか。悔しい……。
「冗談じゃないって言ったら?」
「……嬉しいよ」
「えっ!?」
思ってもみなかった答えに焦る。
嬉しいってどういうこと? 確かに真山くん、少し怪しいとこはあったけど。
「お前が、オレでいいって言うなら……」
「わっ、待って! 冗談……」
「……お前、もうちょっと粘れよ。オレをからかおうなんて100年早いぜ」
真山くんが笑う。もうバレバレ。
「お前本当に恋愛慣れしてないから、ちょっと心配だよ。いざって時、ことに及べるのか、とか」
「余計なお世話だ」
「エロゲーの知識で進めるなよ? 生身の女は中に出してなんて早々言わないし、ちゃんと洗ってないちんこは嫌がるからな」
ゲーム世界の住人に現実の女性のことをレクチャーされる俺って……。
「い、いいんだよ。俺にはゲームの中のコさえいれば、それでいい」
「またそんなことを。よし、わかった。ちょっと待ってろ」
真山くんが台所から包帯みたいなものを取り出してきた。
「ま、真山くんっ!? 何やってんだよ!」
布で視界を奪われて、それをほどこうとする手を押さえられる。
「オレで練習させてやる」
「はっ? 真山くんは男だろ、練習って言ったって」
「オレに不可能はない。だから視界はそのままな。お前には触らないから安心しろ」
真山くんがゆっくりと手を離す。
特に何か無理矢理してくる訳でもなさそうだったので、言われた通り待機してみた。
真山くんから俺に触らずに一体どう練習させるんだという興味が少なからず勝っていた。
……なんか、ごそごそしてる。何やってるんだ?
衣擦れの音……まさか、脱いでる?
「ま、真山くん」
「外すなよー。ちょっとだけ手に触るな」
手というより腕を掴まれて誘導される。何をする気なんだと思った瞬間。
「!?」
えもいわれぬふにっとした柔らかい感触が、手の平を通して伝わってきた。
丸くてふにっとしてる。位置的に……胸のあたり……。
「ななな、何これ」
手の平にすっぽりとおさまるようなそれを、思わず軽く揉んでみる。
「あんっ……! もうちょっと優しく揉めよ。壊れちまう……」
「何そのわざとらしい喘ぎ……」
真山くんに演技の才能はないようだ。
「オレはゲーム世界の人間だぜ? 女体化くらいお手の物」
「……声、思い切り男のままなんですけど」
「まあ、いいからいいから。優しく揉めよ。頭の中で女体を想像し……」
いや、ない……これはない。
でも柔らかい。布越しだけど、真山くんにこのサイズの胸が生えてるとしたら……。
と、想像して、あまりの気持ち悪さについ手に力を込めてしまった。
「あっ!」
声を上げる真山くんと、どこまでもズブズブ沈んでいく指。
スプラッタを思い描いて血の気が引いた。
「真山くっ……」
思わず手を離して目隠しを取ると、一面血だらけの世界が……!
なんてことはなく、床に潰れた肉まんが転がっていた。
これが、おっぱいの正体……確かにある意味肉の塊だけどさ。
「オレの服に肉汁がー!」
「自業自得だ、馬鹿! 何考えてるんだ、こんな!」
「いや……。冬夜に感覚だけでもリアルな女の子を知ってもらおうと思ってさー。乳首付近触ったら、ちゃんと声出してやるつもりでさー」
「……やめといたほうがいいよ。真山くん演技下手すぎだから」
「マジで!?」
自覚ないのか……。
「しかも肉まんじゃリアルも何もないだろ。なら、まだ貧乳とか言って普通に触らせたほうが……」
「やだっ、冬夜くんったら……。オレのこんなちっぱい触りたいの? でもお前がそう言うなら」
「触りたいなんて誰も言ってない! 大体、練習からして頼んでないんだよ」
本当に馬鹿じゃないか。服にこんな油染み作って。
思わずふと、その油に指先で触れてみた。
「んっ……」
真山くんがびくりと身体を震わせて、俺の腕を掴む。
「なっ、何、今の声」
「ば、馬鹿! 本当に乳首触る奴があるか! 冬夜くんのエッチ!」
「エッチって……。単に結構染みが酷いから……気になっただけで……」
なのに、どうして俺こんなにドキドキしてるんだ!?
真山くんが変な声あげるからだ。
さっきの練習は別の意味でドキドキしたけど、なんか……。
「……冬夜?」
「あの……その、やっぱりちょっとだけ……触ってみてもいい?」
「へっ!? おい、待っ……」
返事を聞く余裕はなかった。
油染みがついているのは左側。俺がさっき触ったせいか布が少し持ち上がって、それが油でてらてらと光って凄くいやらしく見える。
指先で軽く触れただけで、真山くんは息を飲んでぎゅっと目をつぶった。
「あっ……」
押し上げるようにすると小さく声を漏らす。
やばい。なんか俺、異様に興奮してる……。
「真山くんって、ここ感じるんだ」
「知るか。ここ、自分でそんなふーに触ったことなんてねーし……」
油のせいか、ぬるってしてる。少し顔を近づけると、食欲をそそる匂いがした。
多分俺、今自分が何をしているか……よく、わかってない。頭の中にもやがかかって、ただ身体の中を突き動かす何かに従って、動いてる。
それが単に、欲情しているんだってことに気づいたのは、服の上からそこを舐めてしまってからだった。
「やっ……待て、おい! それはなんか、まず……」
「肉まんの味がする」
「……それは、そ……っ。あ、冬夜、よせって……やばい」
透けて赤く光るそこを舌先で擦って、銜えるように吸い上げる。
なんとはなしにシャツの下に手を入れて腹の辺りを手の平で撫でてみると、しっとりとしていて暖かく凄く触り心地がよかった。
何度か吸ってから軽く噛むと、真山くんが俺の背をぎゅっと抱きしめた。
「はぁ……。冬夜……」
って何やってるんだ、俺!
だって透けてるんだよ! なんだよこの展開! なんで二次オタの俺が反応してしまうような展開なんだよ! 落ち着けこれは孔明の罠だ!
「あー……、勃っちまった」
耳元で熱い吐息と共に囁かれたその言葉に、頭に冷水をぶっかけられたような感覚が広がった。
なんとなくエッチな雰囲気に飲まれた俺でも、さすがにソコの話題を出されれば我に返る。
真山くんは間違いなく男だ。そして、俺も。
「お前ふざけすぎなんだよ、マジで」
「……ごめん。あんまり飲んでないつもりだったけど、結構酔ってたのかも」
「まあ、だろうな。でも、なんとなく練習になったか? お前吸うの割りと上手いから、彼女できたら披露してやれよ」
「ま、真山くん!」
やばい、恥ずかしい。これは間違いなく黒歴史!
「忘れて……もう忘れて……」
「いやー忘れらんねーな、これはー」
にやにや笑ってる。何これ。さっきまで喘いでいた癖に、立場逆転?
「まっ……真山くんこそ、可愛らしく喘いでいたくせに! 忘れてやらないからな!」
「……忘れて」
真山くんの様子はいつも通りで、それに酷くホッとした。
あー……本当に、なんでこんなことしちゃったんだろう。
そしてなんで……勃ってるんだろう、俺も。
こうして初の合コン参加は、真山くんにお持ち帰られた感じで終了した。
「送り狼になるなとは言ったけど、手くらい握れよ、純情だなぁ」
ついた途端、そんな真山くんの声が耳元で響いた。
「なっ……真山くん!? カラオケに行ったんじゃ……」
「何言ってるんだ。かおちゃんで攻略対象は4人出揃ったろ? ならオレがカラオケ行く意味ねーもん」
「行く意味って……。真山くんが楽しければ、それが意味になるんじゃないか?」
「楽しい……楽しい、ねえ。だったらオレは、お前といるよ」
「え?」
「冬夜と一緒にいたい。言っただろ、オレは誰よりもお前のことを考えてるって」
「でもそれは、君の楽しさじゃないだろう?」
「どうしてそう思う? オレは、お前といるのが一番楽しいんだよ。お前のために存在しているんだから、当然だろ」
嬉しいはずなのに、どこかジリジリと、胸に焼け付くような感覚がある。
真山くんが言っていることは、彼の中では真実なんだろう。
でも……それは、作られた感情じゃないのか? そう設定されているから、俺のことが……大切なだけじゃ、ないのか。俺が、君の主人公だから。
「またなんか、変なこと考えてるだろ」
真山くんが、俺の髪をくしゃっと撫でる。
「親友と一緒にいたいと思っちゃダメなのかよ」
「……ダメじゃないけどさ」
「親友つったって、演じてるだけならここまでべったりする必要はないだろ? オレが、お前といたいんだよ」
「なんか親友って言うよりそれ、口説いてるみたいだ」
「お前が余計なこと言わすからじゃねーか。オレだって恥ずかしいぞ、こんなの」
前まではどんなクサイことでも平気で言ってたくせに、何を今更照れてるんだか。
真山くんは初めからこんな感じだった気もするけど、やっぱり少し……どこか変わった気がする。どこが、とは上手く説明できないんだけど……。
「それよりさ、今日泊っていけよ。今後について話そうぜ」
「今後って、攻略対象を絞るとかそんな?」
「それもある。ユカちゃんについてとかな」
「全力で遠慮したい」
「お前が遠慮しても、向こうはそうはいかないかもしれないだろ?」
ユカに関しては、いまいち感情がついていかない。混乱してる。
俺の中でユカは悪魔の姿をしていると言っても過言じゃない。なのに、そんなユカから好意を示されるとか本当に訳がわからない。
バイト先に来る予定だったのも、真山くんじゃなく俺が目当てだったのかもしれない……なんて。
それですら、自意識過剰すぎるんじゃないかと考えてしまう、それくらい今の事態についていけないでいる。
なんだか、本当に……恋愛ゲームをしているみたいだ。真山くんと出会ってから俺は、ゲームの世界に迷い込んでしまったに違いない。
ただし攻略対象は実写で俺にとってはまぎれもなく現実の世界。
たとえ……実は真山くんが画面から飛び出してきた訳でなく、俺が画面の中に入ってしまったのだとしても。
親友と夜の町を並んで歩く。少し前ならば考えられなかった現実が目の前にある。
そしてそれは、俺にとってとても心地好いものだった。
コンビニでつまみだけ買って真山くんのマンションへ。
家にお酒でも買ってあるのかと思えばお揃いのグラスに注がれた液体はスポーツドリンクだった。
「ずいぶんと健全だな……」
「無駄遣いはできないからな。それに酔ってするような話でもないさ」
いや、俺にとっては酔ってするような話にしたい。
真山くんはグラスの中身をぐいっと飲み干し、段ボールにぼすっと置いてニヤリと笑った。
「さて、何が聞きたい?」
「別に何も聞きたくない」
「ちょっ、お前少しはノれよ! 女の子の情報とか今の好感度とか聞けよ!」
「それよりテーブル買ったほうがいいよ。決めたつもりかもしんないけどまったくかっこつかないから」
「あー、やっぱり? 冬に向けてテーブルコタツでも買うかな。この前ハンズで6千円程度で売って……じゃなくて! 今はそんな話はどうでもいーんだよ。とりあえずユカちゃんの情報からな」
どうせ言い出すなら質問させようとするなよ……。
「前、罪悪感って言ったと思うけど今はそれがスッパリ消えて好感度MAXだ。今度会ったら話を聞いてやれ」
「はあ……」
「んで、次にかおちゃん。恋愛慣れしてないお前のことだから、もうこれベタ惚れじゃね? くらいに思ってっかもしんねーけど、残念ながら好意を寄せている、程度だ。ハート6個分くらい」
ハートで表したからってゲームに思えて食いついたりしないんだからねっ!
……でも、MAX10くらいか?
そして別にベタ惚れだなんて思ってない。
「まあ、役者が揃ってきたし、こうなれば夏美ちゃんは攻略対象から除いてもいいだろう」
「是非そうしてくれ」
「で、残るは真美さんなんだが、これがまったく読めない。ラブを表す単位はハートのはずなのに何故かお花が見えてるような感じだ」
「……なんでだろう。意味がわからないのになんとなく納得してしまうのは」
「だから今のところ、本命としてはかおちゃん、次にユカちゃん、大穴で真美さんってとこだな」
「好感度順って訳じゃないんだ」
「ああ。独断と偏見で、お前が幸せになれそうな順。もちろんお前の意志を尊重するぜ。さあ誰がいい?」
誰がいい? とか言われてもなー。興味ないって言ってるのに。
いつもからかわれてばっかだし、少しからかってみるか。
「真山くんがいい」
「恋愛対象としてだって」
「だから真山くん」
「冗談よせよ、笑えないぜ」
やっぱりそう簡単には引っ掛からないか。悔しい……。
「冗談じゃないって言ったら?」
「……嬉しいよ」
「えっ!?」
思ってもみなかった答えに焦る。
嬉しいってどういうこと? 確かに真山くん、少し怪しいとこはあったけど。
「お前が、オレでいいって言うなら……」
「わっ、待って! 冗談……」
「……お前、もうちょっと粘れよ。オレをからかおうなんて100年早いぜ」
真山くんが笑う。もうバレバレ。
「お前本当に恋愛慣れしてないから、ちょっと心配だよ。いざって時、ことに及べるのか、とか」
「余計なお世話だ」
「エロゲーの知識で進めるなよ? 生身の女は中に出してなんて早々言わないし、ちゃんと洗ってないちんこは嫌がるからな」
ゲーム世界の住人に現実の女性のことをレクチャーされる俺って……。
「い、いいんだよ。俺にはゲームの中のコさえいれば、それでいい」
「またそんなことを。よし、わかった。ちょっと待ってろ」
真山くんが台所から包帯みたいなものを取り出してきた。
「ま、真山くんっ!? 何やってんだよ!」
布で視界を奪われて、それをほどこうとする手を押さえられる。
「オレで練習させてやる」
「はっ? 真山くんは男だろ、練習って言ったって」
「オレに不可能はない。だから視界はそのままな。お前には触らないから安心しろ」
真山くんがゆっくりと手を離す。
特に何か無理矢理してくる訳でもなさそうだったので、言われた通り待機してみた。
真山くんから俺に触らずに一体どう練習させるんだという興味が少なからず勝っていた。
……なんか、ごそごそしてる。何やってるんだ?
衣擦れの音……まさか、脱いでる?
「ま、真山くん」
「外すなよー。ちょっとだけ手に触るな」
手というより腕を掴まれて誘導される。何をする気なんだと思った瞬間。
「!?」
えもいわれぬふにっとした柔らかい感触が、手の平を通して伝わってきた。
丸くてふにっとしてる。位置的に……胸のあたり……。
「ななな、何これ」
手の平にすっぽりとおさまるようなそれを、思わず軽く揉んでみる。
「あんっ……! もうちょっと優しく揉めよ。壊れちまう……」
「何そのわざとらしい喘ぎ……」
真山くんに演技の才能はないようだ。
「オレはゲーム世界の人間だぜ? 女体化くらいお手の物」
「……声、思い切り男のままなんですけど」
「まあ、いいからいいから。優しく揉めよ。頭の中で女体を想像し……」
いや、ない……これはない。
でも柔らかい。布越しだけど、真山くんにこのサイズの胸が生えてるとしたら……。
と、想像して、あまりの気持ち悪さについ手に力を込めてしまった。
「あっ!」
声を上げる真山くんと、どこまでもズブズブ沈んでいく指。
スプラッタを思い描いて血の気が引いた。
「真山くっ……」
思わず手を離して目隠しを取ると、一面血だらけの世界が……!
なんてことはなく、床に潰れた肉まんが転がっていた。
これが、おっぱいの正体……確かにある意味肉の塊だけどさ。
「オレの服に肉汁がー!」
「自業自得だ、馬鹿! 何考えてるんだ、こんな!」
「いや……。冬夜に感覚だけでもリアルな女の子を知ってもらおうと思ってさー。乳首付近触ったら、ちゃんと声出してやるつもりでさー」
「……やめといたほうがいいよ。真山くん演技下手すぎだから」
「マジで!?」
自覚ないのか……。
「しかも肉まんじゃリアルも何もないだろ。なら、まだ貧乳とか言って普通に触らせたほうが……」
「やだっ、冬夜くんったら……。オレのこんなちっぱい触りたいの? でもお前がそう言うなら」
「触りたいなんて誰も言ってない! 大体、練習からして頼んでないんだよ」
本当に馬鹿じゃないか。服にこんな油染み作って。
思わずふと、その油に指先で触れてみた。
「んっ……」
真山くんがびくりと身体を震わせて、俺の腕を掴む。
「なっ、何、今の声」
「ば、馬鹿! 本当に乳首触る奴があるか! 冬夜くんのエッチ!」
「エッチって……。単に結構染みが酷いから……気になっただけで……」
なのに、どうして俺こんなにドキドキしてるんだ!?
真山くんが変な声あげるからだ。
さっきの練習は別の意味でドキドキしたけど、なんか……。
「……冬夜?」
「あの……その、やっぱりちょっとだけ……触ってみてもいい?」
「へっ!? おい、待っ……」
返事を聞く余裕はなかった。
油染みがついているのは左側。俺がさっき触ったせいか布が少し持ち上がって、それが油でてらてらと光って凄くいやらしく見える。
指先で軽く触れただけで、真山くんは息を飲んでぎゅっと目をつぶった。
「あっ……」
押し上げるようにすると小さく声を漏らす。
やばい。なんか俺、異様に興奮してる……。
「真山くんって、ここ感じるんだ」
「知るか。ここ、自分でそんなふーに触ったことなんてねーし……」
油のせいか、ぬるってしてる。少し顔を近づけると、食欲をそそる匂いがした。
多分俺、今自分が何をしているか……よく、わかってない。頭の中にもやがかかって、ただ身体の中を突き動かす何かに従って、動いてる。
それが単に、欲情しているんだってことに気づいたのは、服の上からそこを舐めてしまってからだった。
「やっ……待て、おい! それはなんか、まず……」
「肉まんの味がする」
「……それは、そ……っ。あ、冬夜、よせって……やばい」
透けて赤く光るそこを舌先で擦って、銜えるように吸い上げる。
なんとはなしにシャツの下に手を入れて腹の辺りを手の平で撫でてみると、しっとりとしていて暖かく凄く触り心地がよかった。
何度か吸ってから軽く噛むと、真山くんが俺の背をぎゅっと抱きしめた。
「はぁ……。冬夜……」
って何やってるんだ、俺!
だって透けてるんだよ! なんだよこの展開! なんで二次オタの俺が反応してしまうような展開なんだよ! 落ち着けこれは孔明の罠だ!
「あー……、勃っちまった」
耳元で熱い吐息と共に囁かれたその言葉に、頭に冷水をぶっかけられたような感覚が広がった。
なんとなくエッチな雰囲気に飲まれた俺でも、さすがにソコの話題を出されれば我に返る。
真山くんは間違いなく男だ。そして、俺も。
「お前ふざけすぎなんだよ、マジで」
「……ごめん。あんまり飲んでないつもりだったけど、結構酔ってたのかも」
「まあ、だろうな。でも、なんとなく練習になったか? お前吸うの割りと上手いから、彼女できたら披露してやれよ」
「ま、真山くん!」
やばい、恥ずかしい。これは間違いなく黒歴史!
「忘れて……もう忘れて……」
「いやー忘れらんねーな、これはー」
にやにや笑ってる。何これ。さっきまで喘いでいた癖に、立場逆転?
「まっ……真山くんこそ、可愛らしく喘いでいたくせに! 忘れてやらないからな!」
「……忘れて」
真山くんの様子はいつも通りで、それに酷くホッとした。
あー……本当に、なんでこんなことしちゃったんだろう。
そしてなんで……勃ってるんだろう、俺も。
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