親友ポジション

used

文字の大きさ
48 / 50
追加品

恵方巻きの美味しい食べ方(R15

しおりを挟む
 コンビニっていうのは、それなりに季節感がある店だ。食品が絡むイベント系は特に。
 今だとバレンタインと節分になる。恋人としてのイベントはバレンタインだけど、節分もエロ目線で見れば関係なくもないかなーと思う。
 まあ、お約束だよな。恋人が恵方巻きを頬張る姿をニヤニヤと眺めてみるってのは。この季節になれば、2次元界隈はそんなイラストたちでいっぱいだし。
 去年はそれをニヤニヤと眺めていたわけだけど、今年は真山くんがいる。
 売れ残っている恵方巻きをじっと見つめていると、真美さんに背中を叩かれた。
 
「買ってくの? 恵方巻き」
「え、ああ……はい、まあ」
「エロいなー。エロい匂いがする」
「なっ、何言ってるんですか!」
 
 女性なのにこう、率先してズケズケ下ネタやエロトークをかます真美さんに、俺はまだ慣れない。
 そもそも真山くんが現れるまでは、こんなふうに女性と会話をすることもなかったんだ。俺にとって女性っていうのは、本当に2次元だけの存在で。こういう下ネタを普通に言ったりするギャルじゃなかった。
 それでも真美さんが言うとどんな下ネタな話題でもどこか普通に聞こえるというか、爽やかに聞こえてしまうあたりが彼女らしい。
 
「普通に、節分でしょう」
「うっそだぁ。恋人に、俺の恵方巻きを食べてくれよとかやっちゃうんでしょ、この~」
「しませんから!」
「そう? 真美についてたら絶対にやるんだけどな……」
 
 恐ろしい……。
 
「まあ、本物の恵方巻きは、無理矢理頬張らせるけどね。涙目にさせるのが可愛いんだぁ、フフッ。そういう表情って、グッとクるじゃない?」
「だから、やめてくださいよ。俺そういう話苦手なんですから」
「えっ? 恋人の泣き顔とかたまには見たいよねって話だよ? 何エロい意味にとってるのかな~冬夜クンは」
 
 絶対嘘だ。からかわれてる。そして、真美さんが香織さんやユカにこの手の会話を強要しているのも見たことないし、また彼女たちがいる時は俺にも言ってきたりはしないから、人を選んではいるみたいだけど……。選んで、どうして俺なんだよ。苦手だって言ってるのに。
 
「だって冬夜クン、むっつりだからそういうことやりそうじゃない? お姉さんはなんでもお見通しなのだよ」
「……今、俺、声に出してました?」
「いや、顔に出てました」
 
 鋭すぎるにもほどがある。それとも俺がわかりやすいのか?
 赤くなっていそうな頬を軽くはたいてから、やってきたお客さんの対応をする。
 恵方巻き、買ってる……恋人いそうな、チャラ男だ。
 普通なのかな。恋人同士はそういうことを、普通にやってるのかな。
 
「ありがとうございましたー」
 
 お会計が終わって、隣から肘で小突かれた。
 
「ちょっと。恵方巻きを変な目で見ないの! 今日バイトきてからチラチラ見てるんだもん。わかりやすいったら」
 
 もしかして真美さんが俺にエロい話題ばかり振ってくるのは、俺の脳内がそんな感じになってたからなのかもしれないと、ちょっと思った。
 
「……買って帰りますよ、恵方巻き」
「ウン、頑張ってね」
「普通に食べるだけですよ?」
「切らずに食べるの結構大変だから、頑張ってねって台詞はそれこそ普通の返しだと思うんだけど?」
「……!」
 
 もう俺は、ダメだと思った。




「と、いう感じで、バイト先で真美さんに凄くからかわれてさー」
「あははは、お前らしいな!」
「で、買ってきました。恵方巻き」
 
 コンビニの袋を、こたつに入っている真山くんの前に掲げて見せる。
 
「おー。オレ、今日は0時からだから、まだちょっと時間あるな。一緒に食うか?」
「うん……」
「何。そんで冬夜くんは、オレが食べてるところをジッと見たいわけ?」
「そういうふうに言うなよ! 食べにくくなるだろ!」
「なんだ。普通に食べるだけかぁ」
「いや……でも、その。見ちゃう……とは思うけど」
「素直」
 
 真山くんは立ち上がって俺の手からビニール袋を奪うと、頬にちゅっとキスをしてきた。
 
「さ、じゃあそこ座って食べろ」
「え、俺だけ? 真山くんは?」
「オレはあとで。えーっと、今年の方角はどっちだったっけ?」
 
 そう言いながら、スマホでカチカチ調べている。そして、よしっと俺をベッドへ腰掛けさせた。
 方角があるから、さすがにポッキーゲームのように逆からかぶりついたりはしないだろうけど、真山くんは相変わらず正面に立ったままだ。
 
「真山くんも、俺がかぶりつくところが見たかったりする?」
「まあ、そりゃあ。男ですから」
 
 逆のパターンはあまり考えてなかったけど、そうならちょっと……食べ方、サービスしてあげたりしたほうがいいのかな。
 しておけばあとで、真山くんが食べるときもエッチな食べ方してくれるかもしれないし。
 
「じゃ、食べるよ」
「ああ」
 
 えっと、こうやって持ってぱくっと……って。ま、真山くん、なっ……何しゃがんで、俺のズボンから恵方巻き的なモノを取り出してるんだよ!
 俺は思わず、口に含んだ恵方巻きを思い切り噴き出していた。
 
「わ、馬鹿! お前……っ。これからバイトだってのに、髪に飯粒がついただろ!」
「き、君がいけないんだろ! 何やってるんだよ!」
「恵方巻きを食べている冬夜くんの恵方巻きを頬張ってあげようかと」
「いや……こういうのはさあ、普通に食べているのを見て、そういう妄想をするのがいいんであって」
「やっぱりむっつりだな、お前」
「……」
 
 もうなんとでも言えばいい。
 口の周りについたご飯粒を、真山くんが唇でちゅっちゅと食べていってくれる。
 
「お、股間の恵方巻きが反応した」
「それはもういいって」
「どっちの意味で?」
 
 指先でぐにぐにといじられて、にやりと怪しい笑みを浮かべられて。もう、答えなんて決まっていた。
 
「……恵方巻きはもういいので、普通にフェラしてください」
「リョーカイ。じゃ、とりあえずそれはおいとけよ」
「んっ……。あの、真山くんのも……」
「オレはいいんだよ」
「で、でも……」
「時間ないから。お前が噴いたからシャワーも浴びなきゃまずいし」
「ええ? まだ平気だろ。俺、そんなにもたないと思うし……」
「お前が可愛すぎて、手を出されたら最後までヤらない自信がないんだよ。深夜バイトが絶対につらくなるから、ダーメ」
 
 そう駄々っ子をさとすように言われて、ぬるりとくわえられた。
 ずっとこたつにあたっていて体温が高くなっているからか、嘘みたいに熱い口の中。俺の、とけちゃいそう。
 ああ……もう。こんな、狡い。俺のをくわえたすぐあとの口で恵方巻き頬張る姿なんて見たら、バイトへ行かせたくなくなるだろ。すでにそんな気分だけど

 快感を享受しながら真山くんの髪を撫でる。幸せすぎて、今ならきっと鬼も裸足で逃げ出すだろうと思った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...