その身を賭けろ

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その後のお話

葉月の幸せ

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※葉月視点


 おれには不思議な力がある。勝てる勝負がわかる、というものだ。

 そんな特殊な能力があるならさぞかしイージーモードだろうと思われるかもしれないが、まあ人生ってのは上手くできてるもんで、とても幸せとは言えない生い立ちだし、おれと深い関係を持った女は、必ず不幸になった。気持ち悪いくらい。
 運を吸われているのよと罵られ、化け物と奇異の目で見られ、必ずおかしくなっていった。
 不思議な力といったって、おれとしてはカンが鋭いだけだと思ってるんだが、周りから見れば運がいいと捉えられるんだろう。だから『運を吸った』なんて言いがかりをつけられる。

 しかし。一度ならただの偶然だが、何度も続けばそうなのかと諦めもついたし、自分でもそうなのかもしれないと思うようになっていった。
 こんな状態でガキを作るわけにもいかない。女とは深い関係にならないようにした。



 人肌が恋しかったある日、おれは男を買った。一緒に眠るだけでよかった。なのに何故か惚れられて、乗られたり犯されそうになったりする。笑うしかない。
 なら普通の友人を作ろうと思ってみれば、今度はストーカー化され、その上、粘膜的な接触があるとやはり相手に不幸が訪れる。
 ストーカーに狙われ、尻を触られ、友人だと思っていた相手に罵られ裏切られる日々。もう疲れちまって、今度こそ人と深く関わるのはよそうと決めた。そんな時だ。勝ち知らずのカモネギギャンブラーである旭を知ったのは。

 まったく勝てないギャンブルの何が面白いのか毎日楽しそうにカジノへ通う姿に、コイツならおれの欲を満たせるんじゃないかと思った。見たところストレートのようだし、何よりからかいがいがありそうだ。

 ……何より、元から不運体質なら、おれと仲良くなって不幸が訪れたところで、おれのせいだなんて気づかないんじゃないか。そんな打算もあった。
 だからタイミングをはかって、金に困っている旭に声をかけた。一万円を賭けて勝負しようと。
 読み通りノッてきたし、結果はもちろん、おれの勝ち。おれは旭の時間を買った。

 率直に言えば、彼と過ごす時間はとても楽しかった。おれは旭を気に入った。このまま、友人になれたらいいと思った。これが、最後の賭けだ。もしこの賭けに勝てなかったら、今度こそ一生他人とは関わらない。友人も作らない。そう決めていた。

 おれには不思議な力がある。勝てる勝負がわかる、というものだ。
 だが、人の心まではわからない。

 結果は……。どう、言っていいものか。
 おれは勝ったのか。それとも、負けたのか。 

 男に興味がなかったはずの旭に惚れられ乗られ、ついには掘られ……。結局いつもと同じというか、それどころか悪化しているような気もするんだが。

 なのに……幸せだって、思っちまってるんだよなあ。

 旭は、葉月と恋人になれたことが今までで一番の幸運だと言う。
 お前コレが一番ってマジかよ。今までどんだけヒドかったんだ? そう突っ込みたいのをこらえながら、おれもだと言って笑ってやる。それを見て、また笑顔が返ってくる。

 ……好きなヤツの幸福と笑顔がこんなにも自分を幸せにするなんて知らなかった。
 お前は『心がこもってない、クールに返しすぎ』なんて唇を尖らせるけどさ、全部本音なんだぜ。
 長年培ったポーカーフェイス、そう簡単に崩せるとは思うなよ。

「葉月、大変だ! 初めて当たったんだ、宝くじ!」
「300円か?」
「そ……、いやいや、それ連番で10枚買ったら必ず当たるからな!? なんと3000円だ! 10枚しか買ってないのにだぞ! 3300円で300円の勝利だぞ!!」
「…………」
「でも、これには一億円の価値があるんだ」
「……、な、なんでだよ」
「葉月のそんな表情、初めて見た!」

 お前、これは卑怯すぎるだろ?
 たかだか300円の勝利で、表情から身体から全部で幸せを表す旭を、心底可愛いと思ってしまった。

 ホントにさ、幸せだよ、旭。
 腹が痛くなるほど笑うことなんて、そうはないだろうからな。
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