弟を好きになりました

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それからの2人

僕のお兄ちゃん(R18

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※弟視点


 
 兄さんが休日出勤だというので、久々に友達と出かけることになった。
 ボーリングへ行って、その帰り……カラオケにでも行こうかと話していた時だった。
 
「律!」
 
 聞き間違えるはずのない、愛しい人の声に顔を上げる。
 
「兄さん……仕事は?」
「思ったより早く終わって……。お友達?」
 
 兄さんが、僕の友達に、爽やかな笑みを向けた。
 こんな爽やかな笑顔の裏では、女の子はいないな……とかホッとしているんだろうな。
 よかった、今日のメンバー、男ばっかりで。
 
 兄さんは歳より若く見られるほうだけど、僕たちより十二も年上だ。
 突然現れたスーツ姿の大人はきっと眩しく映るんだろう。友達がざわめく。
 
「律のお兄ちゃん、かっこいいな」
 
 そんなの当然だ。僕の兄さんは世界一かっこよくて、可愛い。
 
「お久しぶりです。俺、覚えてますか。ずっと前にプールへ連れてってもらって……」
「ああ。猛くん、だっけ……」
「はい!」
「律は学校ではどう?」
「彼女ののろけと、兄自慢ばっかりです。ブラコンですよねー」
「猛!」
 
 よけいなことは言わないでほしい。
 しかも、結局それ、同じ人物だから。彼女も兄も。
 自分が彼女ということにされていると知っている兄さんも、少し照れたような顔をしている。
 僕のほうが恥ずかしい……。
 
「俺たち今からカラオケ行くんですけど、お兄さんもきませんか?」
「え……そんな、邪魔しちゃ悪いよ」
 
 本当に、家にいる時とまったく違う、ぴしっとした姿。
 僕があまり見たことのない姿を、僕の友達に見せている。
 ……いや、友達の前だから、なんだろうけど。
 実際、夏休みに兄さんの社員旅行へついて行った時は、基本的にはいつもの姿だった。
 でも、今は……作られた姿だ。こんなところ、初めて見る。
 胸の奥がもやもやして仕方ない。
 
「それに兄同伴だなんて、律が嫌がるよ。なあ?」
「うん、そうだね」
 
 言った僕に、兄さんが少しだけ悲しそうな表情をした。
 
「ごめん、みんな。僕、兄さんと帰るから」
「えっ」
 
 友達の声と、兄さんの声が重なる。僕は、兄さんの手を引いて駆けだしていた。
 
「お、おい、律……! と、友達は……」
「兄さんのほうが大事」
 
 きっと明日学校へ行ったら、ブラコンだってまた散々からかわれるんだろうな。
 でも……なんだか、見られたら減る気がしたんだ。
 それを言ったら笑うだろうから、兄さんには言わないでおくけど。 
 
 
 
 
 友達が見えなくなったあたりで、足を止める。
 振り返ってみれば、兄さんはすっかり息が上がっていた。
 上気した肌に荒い息遣いは、嫌でもあの時を連想させる。
 僕は兄さんを路地裏に連れ込んで、ネクタイを引き寄せてキスをした。
 
「……ん、り……律っ」
 
 首が締まって、ちょっと苦しそうにしてる。
 
「兄さんがカラオケに来たら嫌なのはね、僕だけの兄さんでいてほしいからだよ」
 
 僕の言葉に、唇を解放された兄さんがくすりと笑った。
 
「……俺の引率で、プールへ行った時のことを思い出すな」
「ああ……」
 
 そういえばあの時も、僕は嫉妬をして具合が悪いフリをしたっけ。
 でもあの時と今じゃ、意味がまったく違う。
 兄を取られそうで焦る気持ちと、恋人を誰の目にも触れさせたくない嫉妬とじゃ。
 
 恋人を……か。もしかすると僕、自分でも気付かないうちに、恋人ではなく兄を取られたくない気分になっていたのかもしれない。
 だって明らかに、社員旅行の時とは違うもやもやだった。
 恋人としても、兄としても、僕だけのじゃなきゃ嫌なんだ。
 
「小学生の時のように、可愛い焼き餅じゃないからね。人には言えないくらい、心の中ドッロドロだよ」
「言えないなら、見せてほしい」
 
 兄さんの声が、熱っぽい。
 この……僕だけが見られる表情が、大好き。
 
「どうやって?」
「わかってるくせに、訊くなよ」
 
 僕はもう一度、兄さんに口づけた。
 
「たっぷり、見せてあげる……」
「うん。見たい……律の、全部」
 
 もうここで始めてしまいそうなくらい盛り上がってたけど、さすがにそういう訳にはいかず、タクシーを拾ってマンションへ駆け込んだ。
 ベッドへ行く間も惜しく、玄関でその熱い身体を押し倒す。
 
「律……ま、待って」
「兄さんの身体のほうが、待てないほど熱くなってるくせに」
 
 ネクタイをほどいて喉元に噛みつく。
 舐めあげると汗の味がした。
 本当は兄さんだって、このまま繋がってしまいたいほど興奮していると思う。
 なのに拒むのは、汚れてる身体が恥ずかしいとか、友達とでかけていた僕が何も持っていないだろうとか、そのあたりだろう。
 確かに今日はゴムもローションも持っていない。
 いくら慣れているといっても、兄さんの身体に少なからず負担はかけると思う。
 でも今日はまだ早い時間だし、起きあがれなくなっても僕が看病してあげるから、だから……早く、抱かせて。
 
「見せるって言ったでしょ。今は僕、優しくできないよ」
 
 ベルトを外してズボンを下着ごとおろす。その奥を、ためらいなく舐めた。
 
「……っや! あ、洗ってないのに……っ」
「平気だよ。毎日綺麗にしてるんだから」
「ん、んっ……。は……律ぅ……」
 
 舌を押し入れて、中をほぐす。それだけで僕を迎え入れるように開いていく身体が愛おしい。
 
「ごめん、もう挿れる。先走りでいっぱいだから、入るよね」
「あ、あ、あっ……」
 
 ぬるりと、僕のそれが兄さんに沈み込んでいく。
 さっきまでゆるゆると拒んでいた腕は、背中へ回された。
 でもやっぱり、唾液だけじゃちょっときつい……。
 
「律……律……」
 
 兄さんの中が奥へ奥へと絡みつくように、僕を誘導する。揉みしだかれるみたいで、気持ちいい。
 
「っ……兄さん」
「俺の……律。もっと見せて。もっと見て……俺だけ」
 
 縋りつく腕。僕を離すまいとくわえこむ内部。そして……兄さんの表情。
 僕はそこで、やっと気づいた。
 兄さんも、多分、嫉妬……してたんだ。
 今日のメンバーは男だけだったし、自分のことでいっぱいいっぱいだったからわからなかった。
 
「大好きだよ。僕だけの兄さん……。ずっと僕だけの兄さんで……恋人でいてね」
「ん……っ」
 
 深く口づけて、腰を隙間ないくらい穿つ。
 兄さんの背がびくびくとしなって、僕のお腹に白濁を吐き出した。
 
「ん……うう」
 
 注ぎ込んでほしいとでもいうように中が吸い込む動きを見せる。兄さんが両足で、僕の身体をきゅうっと挟み込んだ。
 
「あ……兄さん、それ……凄い」
 
 背筋をぞくぞくと快感が走り、僕は搾り取られるように、兄さんの中に全てを吐き出した。
 
「律の……」
 
 兄さんが栓をしていてもこぼれ落ちる精液を、指先で拭う。結合部をなぞられて、また頭をもたげそうになった。
 
「ごめん、いっぱい……」
「律ので、熱くっていっぱいで嬉しい……」
 
 熱に浮かされた表情に、たまらなくなって何度もキスをした。
 でも……玄関でこんな、盛っちゃって……兄さん腰大丈夫かな。
 挿れたまま腰を撫でると、奥がまた僕を締め付けた。
 
「ベッド……行って、もう一回したい」
 
 そう言って、兄さんが僕に抱きつく。
 もちろん、兄さんがそう言うなら、若い僕には望むところ。
 そのままお姫様抱っこでベッドまで運んで、ぐったりするまで抱き合った。
 
 
 
 
「兄さんさ、僕の友達の前じゃ、凄いかっこつけてるんだもん。兄って感じでさ」
「それは……。律の友達には、やっぱりかっこよく見られたいじゃないか。自慢の兄だって思ってもらえるように」
「そんなかっこつけなくても、僕にとっては世界一の兄さんで……恋人だから、いいんだよ」
「そうは言ってもなあ」
「でも、これだけは約束して。可愛い兄さんは、僕だけが知っていればいい」
「じゃあ、かっこいい律も、俺だけが知っていればいいかな?」
 
 ……それは、どうかな。最近は可愛いじゃなくて、かっこいいって言われることのほうが多くなったし。
 むしろ……僕をいつまでも可愛い可愛いって言うのは、兄さんだけなんだけど……この人は気づいてないんだろうな。
 
 でも、それでいい。兄さんの前では、いつまでも可愛いままの弟で、いたいから。
 もちろん、恋人前提の、だけど。 
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