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それからの2人
お風呂上がり
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※弟視点
「最近暑いからさ、うちの兄貴なんて風呂上がり、パンツ一枚で歩くんだぜ、うっとうしいったら。妹もいるのにさ。たまにパンツすら穿いてなくて」
「うちもうちも。なあ、律のとこはどんな感じ?」
「お前んとこの兄貴ならきっと、いつもきちっとしてるんだろ。暑くても涼しげな感じでさ」
「あー……うん。そうだね」
まあ、裸になってる時もあるけど、それは決して友達が言うような場面でじゃないと思う。
何より、兄さんは暑くても友人の言うとおりきちっと着込んでいる。これは実家にいた時から変わりない。
僕の前では常にかっこいい兄でい続けた。
弟にとって理想のお兄ちゃんでいたい、という想いがそうさせたのかはわからないけど、兄さんは僕に関すること以外では本当に理想の兄だった。
僕に関することでは……世間から見てちょっと変態っぽいかなあとは思うけど。
「いいなあ、俺もそんな兄ちゃんほしかったぜー」
「まあ、うちの兄さんは世界一だからね」
「また始まったよ律のブラコンが」
でも……。
でも、僕も……少しだけ、暑くてだらっとしてる、だらしない兄さんが見てみたい、と思ってしまった。
案外僕のいないところではそんな姿でいるのかもしれない。
そう思った僕は家に帰ったあと、今夜は遅くなるとラインして、カーテンの影に隠れた。
準備のために冷房をつけていないから、いっそ僕が裸になりたい勢いで暑い。
「ただいまー。って、律は遅くなるんだっけ……」
独り言、可愛いっ……。今すぐにでも出ていきたい!
ネクタイを緩めて、何かを探す兄さん。
多分冷房のリモコン。今は僕が持っている。部屋が暑くないとこの作戦は意味がないから。
だからもちろん、探しても見つかる訳がなく、兄さんは暑そうにソファへ身をゆだねた。
でも、脱ぎ出す様子はない。
ここには兄さんしかいないのに、肌シャツ一枚とかになったりしないのかな? 暑いのに……。
兄さんはしばらくそうやって休んでいたけど、こっちに近づいて……。
「あれ、律……。えっ、何!?」
「お、お帰り」
そうか。冷房つけられないんだったら、涼しくするために窓開けるじゃん! 僕の馬鹿!
カーテンの影に隠れていた僕は、あっさり見つかってしまった。
「何してるんだよ。かくれんぼか? まったく、いつまで経っても律は子供だなあ」
しかもなんだかやたら、嬉しそうだし。
「いや、ちょっと……実はね」
僕は学校でしていた会話を、兄さんに言ってみた。
それを聞いた兄さんは、楽しそうにくすくすと笑った。
「ああ。俺は律の前では理想の兄でいたかったし、何よりうちは父さんも母さんもきちっとしてるだろ?」
「……そういえば」
「俺が家を出てからは、律一人だったけど……律は夏とか、バスタオル一枚で部屋に出たりしたか?」
「よく考えたら、してない。脱衣所で着替えて出るのが当然だと思ってたから……」
「そのあたりは、ある程度は家庭環境になるよなあ」
兄さんはうんうんと頷いてから、僕を見て微かに頬を染めた。
「まあ、俺も、暑くて裸で出てくる律はちょっと見てみたい」
「見る? ただし……兄さんも一緒だけど」
「一緒に入るってこと? マンションの風呂じゃ狭いって」
「いいじゃん。僕、兄さんと一緒にお風呂入ってみたかったんだ」
「子供の頃はいっぱい入ってたし、大人になってからだって……入ったことはあるだろ……」
「それはやる時とか、処理する時だし、湯船には浸かってない」
「でも入ったら……結局はするんだろ」
「じゃあ、入ってくれないの?」
「……入るけど、その、さっき律が言ってた裸で出る……のとは、何か違う気がするなって」
「けど……お風呂でいちゃいちゃしてから、裸のままベッドへっていうコースも、悪くはないと思わない? きっとさっぱり、すっきりするよ」
「じゃ、一緒に汗、流そうか」
「うん!」
兄さんは理想の兄……。だけど、2人の時は、理想の恋人。
だらしない姿はベッドでたっぷり見せてもらうとしようかな。
「最近暑いからさ、うちの兄貴なんて風呂上がり、パンツ一枚で歩くんだぜ、うっとうしいったら。妹もいるのにさ。たまにパンツすら穿いてなくて」
「うちもうちも。なあ、律のとこはどんな感じ?」
「お前んとこの兄貴ならきっと、いつもきちっとしてるんだろ。暑くても涼しげな感じでさ」
「あー……うん。そうだね」
まあ、裸になってる時もあるけど、それは決して友達が言うような場面でじゃないと思う。
何より、兄さんは暑くても友人の言うとおりきちっと着込んでいる。これは実家にいた時から変わりない。
僕の前では常にかっこいい兄でい続けた。
弟にとって理想のお兄ちゃんでいたい、という想いがそうさせたのかはわからないけど、兄さんは僕に関すること以外では本当に理想の兄だった。
僕に関することでは……世間から見てちょっと変態っぽいかなあとは思うけど。
「いいなあ、俺もそんな兄ちゃんほしかったぜー」
「まあ、うちの兄さんは世界一だからね」
「また始まったよ律のブラコンが」
でも……。
でも、僕も……少しだけ、暑くてだらっとしてる、だらしない兄さんが見てみたい、と思ってしまった。
案外僕のいないところではそんな姿でいるのかもしれない。
そう思った僕は家に帰ったあと、今夜は遅くなるとラインして、カーテンの影に隠れた。
準備のために冷房をつけていないから、いっそ僕が裸になりたい勢いで暑い。
「ただいまー。って、律は遅くなるんだっけ……」
独り言、可愛いっ……。今すぐにでも出ていきたい!
ネクタイを緩めて、何かを探す兄さん。
多分冷房のリモコン。今は僕が持っている。部屋が暑くないとこの作戦は意味がないから。
だからもちろん、探しても見つかる訳がなく、兄さんは暑そうにソファへ身をゆだねた。
でも、脱ぎ出す様子はない。
ここには兄さんしかいないのに、肌シャツ一枚とかになったりしないのかな? 暑いのに……。
兄さんはしばらくそうやって休んでいたけど、こっちに近づいて……。
「あれ、律……。えっ、何!?」
「お、お帰り」
そうか。冷房つけられないんだったら、涼しくするために窓開けるじゃん! 僕の馬鹿!
カーテンの影に隠れていた僕は、あっさり見つかってしまった。
「何してるんだよ。かくれんぼか? まったく、いつまで経っても律は子供だなあ」
しかもなんだかやたら、嬉しそうだし。
「いや、ちょっと……実はね」
僕は学校でしていた会話を、兄さんに言ってみた。
それを聞いた兄さんは、楽しそうにくすくすと笑った。
「ああ。俺は律の前では理想の兄でいたかったし、何よりうちは父さんも母さんもきちっとしてるだろ?」
「……そういえば」
「俺が家を出てからは、律一人だったけど……律は夏とか、バスタオル一枚で部屋に出たりしたか?」
「よく考えたら、してない。脱衣所で着替えて出るのが当然だと思ってたから……」
「そのあたりは、ある程度は家庭環境になるよなあ」
兄さんはうんうんと頷いてから、僕を見て微かに頬を染めた。
「まあ、俺も、暑くて裸で出てくる律はちょっと見てみたい」
「見る? ただし……兄さんも一緒だけど」
「一緒に入るってこと? マンションの風呂じゃ狭いって」
「いいじゃん。僕、兄さんと一緒にお風呂入ってみたかったんだ」
「子供の頃はいっぱい入ってたし、大人になってからだって……入ったことはあるだろ……」
「それはやる時とか、処理する時だし、湯船には浸かってない」
「でも入ったら……結局はするんだろ」
「じゃあ、入ってくれないの?」
「……入るけど、その、さっき律が言ってた裸で出る……のとは、何か違う気がするなって」
「けど……お風呂でいちゃいちゃしてから、裸のままベッドへっていうコースも、悪くはないと思わない? きっとさっぱり、すっきりするよ」
「じゃ、一緒に汗、流そうか」
「うん!」
兄さんは理想の兄……。だけど、2人の時は、理想の恋人。
だらしない姿はベッドでたっぷり見せてもらうとしようかな。
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