恋とかできるわけがない 〜ヲタクがJC拾ってもなにもできない件

茉莉 佳

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2nd stage

美少女の舐めたアイスはもらえない

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「たっ、ただいまぁ~」

小声で呟きながら、恐る恐るあたりを見回す。
部屋の中は、明かりが点いていなかった。
人の気配もなく、いつものバイト帰りみたいな、無機質な空虚感が、ぼくを迎えてくれた。
奥のベランダに続く窓の、カーテン越しに見えるビルからは、色とりどりの光が部屋の中に入り込み、ゆらゆらと漂っているだけだった。

『いない…』

いっぺんに気が抜けてしまったぼくは、脱力してフラフラと部屋に上がると、明かりをともし、アイスを冷蔵庫に入れ、キッチンに座り込む。が、思い出した様に、パソコンデスクの横に無造作に放り出していた、コミケの売り上げが入った鞄を確認した。
中に入れてあった分厚い財布は、そのままだった。

『盗られてなかった… よかった』

あんなに可愛い少女が盗みを働くとか、そんなのやっぱりありえない。
少し安心して、とりあえずパソコンのスイッチを入れようとした時、ふわりと生暖かい風が頬を撫でた。
窓の方に視線をやると、カーテンが揺れて掃き出し窓が半分開いてて、ベランダでぼんやりとした青白い光が、フワフワと漂ってる。
ぼくは窓から顔を出し、外を覗いた。

いた!

少女はベランダの隅っこで膝を抱えてうずくまったまま、右手にスマホを持ち、親指をせわしなく動かしてた。
液晶の冷たい光が無表情な彼女の顔を照らし、幽霊の様に浮かんで見える。

「い、いたんだ」
「…」

ぼくの声が聞こえないかの様に、彼女は視線をスマホの画面に落としたまま、メールかなにかを打ち続けている。それ以上話しかけられなくて、ぼくはじっと彼女の横顔を見ていた。

ふっ… ふつくしい、、、

絵師としての性《さが》だろう。
少女の肢体の細部ディテールを、ぼくは本能的に脳内スケブにデッサンしていた。
その端正な横顔は、まだ幼さを残してるけど、伏せ目にしている睫毛が長くて魅力的だ。
唇はふっくらと盛り上がってめくれ、かすかに夜の明かりを照り返している。
肩にかかるサラサラのストレートヘアが、時々彼女の頬を撫でるのが、なんだか色っぽい。
だけど、小さな顔から続く細いうなじや華奢な肩、角張った鎖骨。膨らみを感じない胸と、大きなTシャツから出た皮下脂肪の少ない手足は、まだまだ女になりきってない『少女』のものだった。

「ふぅ…」

彼女は大きくため息ついて、パタンとスマホカバーを閉じ、こちらを向く。
黒目がちの大きな瞳が印象的だ。

「アイス。買ってきてくれた?」
「あ? ああ…」
「じゃ、持ってきてよ」

こいつ、、、 結構ワガママかもしれない。
そう思いつつも、ぼくは彼女の言葉に素直に従い、冷蔵庫から『ガリガリくんソーダ味』を取り出し、彼女に差し出す。

「え~~? ガリガリくん~? なんか子供っぽい。サイアク」

そう言いながらも彼女はアイスを包んでたビニールを無造作に破り、ベランダからポイと放り出す。
青い蝶の様にひらひらと、アイスの袋は夜空に消えていった。

「あの、えっと… 君の名…」
佐倉栞里さくらしおり

最後まで聞かず、少女、、、栞里ちゃんはアイスをペロペロと舐めながら、ぶっきらぼうに答える。
「あ。そ、そう… ぼくは、大竹稔。よ、よろしく」

真っ青なアイスをチロチロと舐め上げる、彼女の舌。
つやつやと濡れて鈍い光を反射する栞里ちゃんのピンクの舌と唇。
アイスに美少女唾液がべったりとついて、いやらし気な糸を引く、、、
その光景がなんだかエロ過ぎて思わず見とれてしまい、返事もしどろもどろになってしまう。


ダメじゃん自分!
14歳の少女相手に、こんな想像するなんて。
でも…
昨夜はこの子… こんな可愛い子と、、、 エッチしたんだよな?!
全然実感はないんだけど…

「佐倉さんはどうして、家に帰らないの?」

『家出少女なんじゃないか?』
という、ヨシキの言葉を思い出しながら、ぼくは訊いた。

「…」

少女は黙ったまま、アイスを舐める。

「さっ、佐倉さん…?」
「栞里でいい」
「え?」
「お兄ちゃんは、アイス食べないの?」
「あ、ああ。ぼくの分は、買ってきてないから…」

そう答えると、少女… 栞里ちゃんは、持ってたアイスを差し出した。

「あげる」
「え? いいの?」
「もういらない」

えっ??!
ほっ、ほんとにぼくなんかが、、、
貰っていいんだろうか?

栞里ちゃんの食べかけアイス。

美少女が口をつけた部分がトロリと溶けて、唾液と混ざってつやつやと光っている。
こっ、これは、、、

間接キス以上の美味しい展開!!

「いらないの? じゃ、いいや」

突然の出来事に感動して、食べかけアイスを受け取れずにまごまごしていると、栞里ちゃんはそれをベランダから、ポイと投げ捨てた。
数秒後に“ペシャ”と、アイスが地上でへしゃげる音が聞こえてくる。

「ダっ、ダメじゃん、こんな所から捨てたら。ここ8階だよ。下は歩道なんだよ。誰かに当たったらどうするんだよ!」
「…」

あああ~~~!
なんというもったいないことを!
美少女の食べかけアイスが、、、

興奮していさめたぼくをチラっと一瞥いちべつして、彼女はうつむいた。
が、ポツリとひとこと漏らす。

「8階か、、、 ここから飛び降りたら、死ぬかなぁ」

つづく
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