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level 1
「そんなに下から撮るとパンツが写りませんか?」
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なんなの? この人。
『餌食にされないようにしろよ』って、その上から目線はなに?
わたしはあなたの彼女でもなんでもない。
しかも人のこと、『バージンっぽい』とか、軽くセクハラじゃない?
見せてもらった写真も、やたら明るくて顔がのっぺりしているし、目が痛くなりそうなくらい画面全体が不自然に鮮やか過ぎて、全然いいとは思えない。
容姿にしても、背が低くておなかが突き出した髪の毛の薄いおじさんのくせに、変に今風の若者っぽいファッションなところが、滑稽で笑える。
人間の価値は容姿だけじゃないけど、こうやって人の悪口を言っている時点で、すでに醜い。
ヨシキさんへのライバル心を剥き出しにしているけど、最初から勝負になっていない。
こうしてたくさんの人が写真を撮ってくれたものの、最初のヨシキさんのインパクトが強烈過ぎて、あとの人の印象が薄い。
それでも、声をかけて写真を撮ってくれる人は、まだいい。
わたしの後ろにこっそりしゃがみ込んで、低いアングルから無断で写真を撮っている人もいた。
そんなに下から撮ったら、パンツが写ってしまうんじゃないの?
もしかして…
『変な写真撮るヤツもいるから』とヨシキさんが言っていたのは、こういうことなのかもしれない。
そちらへ視線を向けると、真っ黒な帽子を被ったそいつは慌てて、足早にどこかへ消えてしまった。
「もうすぐイベント終了です。コスプレイヤーさんは急いで着替えて下さい」
会場内にアナウンスが流れ、写真を撮ったり話したりしていたコスプレイヤーたちがみな、ゾロゾロと更衣室へ戻っていく。
「もう着替えますので、すみません」
今撮っている男の人に、わたしは焦って言った。
ヒョロリと背の高いカマキリみたいなその人は、モタモタと撮影に時間がかかっている。
まだ何人か並んでいるのに、このままでは更衣室に行くのが遅くなってしまう。
彼のうしろで待っている人たちも、同調した。
「そうだ。早くしろよ」
「後ろつかえてんだよ!」
しかしその人は、人の声はまるで無視してダラダラと撮影を続け、あとに譲る気配がない。
痺れを切らしたように、次の人がその横から撮影をはじめた。
それをきっかけに、他の人たちも次々に列を崩し、わたしを取り巻くようにして、カメラをこちらに向けた。
な、なに?
こんなに一度に囲まれると、どこに視線を向ければいいかわからない。
戸惑うわたしにお構いなく、みんな勝手にシャッターを切っている。
稲妻のようなたくさんのストロボ光に目が眩み、シャッター音の洪水に翻弄され、わたしはパニックに陥った。
真ん前に座り込んでローアングルから撮っている人も何人かいたし、さっきの黒い帽子の男もいつの間にか戻ってきていて、地面すれすれにカメラを構えていたけど、それを注意する余裕すらない。
「もう終了で~す。カウントかけま~す! 3、2、1、はいっ。解散で~す!」
スタッフさんが制止してくれて、ようやくわたしはカメラの嵐から解放された。
だけど、ストロボ光の残像で目がチカチカしていて、思考がまとまらない。
いったいなにが起きたの?
混乱した頭のまま、わたしはとにかく更衣室に駆け込んだ。
そしてわたしは、ヨシキさんが忠告してくれたことの意味と、自分の無知さと軽率さを、あとになって思い知ることになったのだ。
つづく
『餌食にされないようにしろよ』って、その上から目線はなに?
わたしはあなたの彼女でもなんでもない。
しかも人のこと、『バージンっぽい』とか、軽くセクハラじゃない?
見せてもらった写真も、やたら明るくて顔がのっぺりしているし、目が痛くなりそうなくらい画面全体が不自然に鮮やか過ぎて、全然いいとは思えない。
容姿にしても、背が低くておなかが突き出した髪の毛の薄いおじさんのくせに、変に今風の若者っぽいファッションなところが、滑稽で笑える。
人間の価値は容姿だけじゃないけど、こうやって人の悪口を言っている時点で、すでに醜い。
ヨシキさんへのライバル心を剥き出しにしているけど、最初から勝負になっていない。
こうしてたくさんの人が写真を撮ってくれたものの、最初のヨシキさんのインパクトが強烈過ぎて、あとの人の印象が薄い。
それでも、声をかけて写真を撮ってくれる人は、まだいい。
わたしの後ろにこっそりしゃがみ込んで、低いアングルから無断で写真を撮っている人もいた。
そんなに下から撮ったら、パンツが写ってしまうんじゃないの?
もしかして…
『変な写真撮るヤツもいるから』とヨシキさんが言っていたのは、こういうことなのかもしれない。
そちらへ視線を向けると、真っ黒な帽子を被ったそいつは慌てて、足早にどこかへ消えてしまった。
「もうすぐイベント終了です。コスプレイヤーさんは急いで着替えて下さい」
会場内にアナウンスが流れ、写真を撮ったり話したりしていたコスプレイヤーたちがみな、ゾロゾロと更衣室へ戻っていく。
「もう着替えますので、すみません」
今撮っている男の人に、わたしは焦って言った。
ヒョロリと背の高いカマキリみたいなその人は、モタモタと撮影に時間がかかっている。
まだ何人か並んでいるのに、このままでは更衣室に行くのが遅くなってしまう。
彼のうしろで待っている人たちも、同調した。
「そうだ。早くしろよ」
「後ろつかえてんだよ!」
しかしその人は、人の声はまるで無視してダラダラと撮影を続け、あとに譲る気配がない。
痺れを切らしたように、次の人がその横から撮影をはじめた。
それをきっかけに、他の人たちも次々に列を崩し、わたしを取り巻くようにして、カメラをこちらに向けた。
な、なに?
こんなに一度に囲まれると、どこに視線を向ければいいかわからない。
戸惑うわたしにお構いなく、みんな勝手にシャッターを切っている。
稲妻のようなたくさんのストロボ光に目が眩み、シャッター音の洪水に翻弄され、わたしはパニックに陥った。
真ん前に座り込んでローアングルから撮っている人も何人かいたし、さっきの黒い帽子の男もいつの間にか戻ってきていて、地面すれすれにカメラを構えていたけど、それを注意する余裕すらない。
「もう終了で~す。カウントかけま~す! 3、2、1、はいっ。解散で~す!」
スタッフさんが制止してくれて、ようやくわたしはカメラの嵐から解放された。
だけど、ストロボ光の残像で目がチカチカしていて、思考がまとまらない。
いったいなにが起きたの?
混乱した頭のまま、わたしはとにかく更衣室に駆け込んだ。
そしてわたしは、ヨシキさんが忠告してくれたことの意味と、自分の無知さと軽率さを、あとになって思い知ることになったのだ。
つづく
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