あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

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level 2

「個撮とはそんなにいいものなのですか?」

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「ヨシキぃ~。撮ってぇ~」

そのとき、女の子の甘ったるい声で、わたしははっと我に返った。
声の方向を見ると、ひとりの女性コスプレイヤーが、親しそうにヨシキさんの腕に自分の腕を絡めて、ねだるように甘えているのが目に入った。
露出の多い衣装を着た、ちっちゃくて可愛い、ツインテールの女の子だった。
それにしても、なんて大きな胸なの?
ぴったりとからだに張りついた衣装から突き出した胸は、まるでふたつの果実のように大きく、たわわに実っている。彼女はヨシキさんにからだをすり寄せて、上目遣いで微笑んでいた。
そんなに接近したら、ヨシキさんに胸がくっつくじゃない。

「もうブースに戻る時間なんだよ」
「いいじゃない、ちょっとだけぇ」
「しかたないな~」
「やったぁ!」

あんなに可愛くて魅力的な女の子が絡みついているというのに、ヨシキさんはふだんのままの受け答え。
それでも彼は、熱心にその子を撮りはじめた。

なんだか羨ましい。
ヨシキさんとはかなり親しそうだし、あんなに気軽に話しかけられるなんて。
わたしなんて、せっかく誘われても、戸惑うばかり。
胸だってあんなに大きいし…
少しわけてほしいくらい。

「はぁ…」

そのとき、となりから微かなため息が聞こえてきた。
ふと見ると、肩を落としてうつむき加減の桃李さんが、せつなそうにヨシキさんと巨乳の女の子を見つめている。
寂しげで、憂いを帯びた桃李さんの瞳。
もしかしてこの子(といっても年上だけど)も、ヨシキさんのことが好きなのかな…

「桃李… さん?」
「は、はいっ?!」

わたしの呼びかけに、彼女は不意打ちをくらったようにピクンとからだを震わせ、慌ててこちらを振り向いた。
真剣な表情で、桃李さんはわたしを見ていたが、それはほんの一瞬で、すぐに繕うように満面の笑みを浮かべ、声を弾ませて言った。

「み、美月姫はやっぱりすごいですぅ~! あのヨシキさんに個撮に誘われるなんて ヾ(*´∀`*)ノ
あっ。個撮ってのはですね~、カメコさんとレイヤーさんが、イベント以外の場所で1対1で撮影することなんですよ~」
「イベント以外の場所で? 個人的に、ですか?」
「そうですそうです☆
個撮はいいですよ~ o(*^‐^*)o
イベントでの撮影と違って、小物や衣装とかに制限ないし、ポーズも自由にとれて、レフ版とか使ったりして、写真も綺麗に撮れるしで、納得いくまで作り込めるのが楽しいんですよ~☆
素敵カメコさんと個撮するのって、レイヤーさんにとっても憧れなんです。
なかでもヨシキさんは、神カメコなんですぅ~☆
ヨシキさんに撮られたいレイヤーさんはすっごいたくさんいて、競争率激しいんです;
それにヨシキさんってモデル選びが厳しくって、自分が気に入った人以外とは個撮しないんです。なのに参加2回目にして誘われるなんて、さ~すが美月姫ですぅ (*^▽^*)」
「そんなにいいものなのですか? 個撮って」

ひと息にしゃべる桃李さんに気圧けおされながら、わたしは訊いた。
桃李さんのテンションは、さらにアップする。

「もちろんですよっ (((o≧▽≦)o
いいんですいいんですっっっ キャー━━゚.+:。ヽU゚Д゚Uノ゚.+:。━━!!
個撮やろうって決まったら、まずはカメコさんと綿密な打ち合わせして、どのキャラをどんなコンセプトで、どこでどんな風に撮るかとかを決めていくんです。作品のワンシーンを再現するために、あちこちロケハンしてまわったり、衣装や小物を探したり、自分で作ったり。CGだって駆使するんですよ!
まるで映画でも撮ってるみたいで、準備しながらも気分がウキウキしてきます!!
ロケ場所も、キャラや作品の世界観に合わせて、野外で撮ったりとか廃墟行ったりとか…
この頃はコスプレ専用の素敵なスタジオも増えてきたから、そこで撮ったり… ホテルなんかで撮ることだってあるんですよ~ *゜▽゜)*。_。)」
「ホテルで?!」

つづく
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