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「わたしの『なにか』を引っ張り出してほしいです」
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「ってことで美月姫。今度はアップで撮らせてもらっていい? 綺麗に撮るよ」
桃李さんの真似をしておどけながら、ヨシキさんがカメラを構える。
うなずいて呼吸を整えてレンズを見つめたわたしに、タイミングよくシャッターを切る。
“カシャカシャ”と軽快な金属音が響く。
その音が心地よい。
『ヨシキさんに撮られたレイヤーさんは、もう他のカメコさんじゃ満足できないからだになってしまうんですぅ』
って桃李さんの言葉も、案外的を射ているかもしれないな。
ファインダー越しに、ヨシキさんがわたしを見つめる。
その視線を受けて、からだの芯がジンと熱くなるのを感じる。
もっとわたしを、見つめてほしい。
わたしのなかに眠っている『なにか』を、ヨシキさんの手で、引っ張り出してほしい。
そんな欲望が湧き上がってくる。
やっぱりわたしは、この人のことが好きみたい。
ヨシキさんのこと、もっと知りたいって思うし、わたしのことも、知ってほしい。
「はい。これ、約束の写真とデータ」
撮影後、みんなで撮った画像を確認したあと、ヨシキさんはそう言ってわたしの方を振り向くと、小さな紙袋を差し出した。
中にはミニアルバムと、CDのようなディスクが入っている。
「あ、ありがとうございます」
「メールとかあれば、データを送ってあげられるんだけどね」
「あ」
わたしもバッグから名刺を取り出し、ヨシキさんに渡す。
「メールアドレスが書いてあるので、そちらに送って下されば」
「名刺、作ったんだ」
「はい。ヨシキさんのホームページも拝見しました」
「ほんとに?」
「すごかったです! どの画像も綺麗で素敵で! コスプレの写真も素晴らしかったけど、私服もみんな素敵で、雰囲気あって。感動しました!」
「ありがとう~。そんなに褒めてもらえると、なんだか照れるな」
そう言いながら、ヨシキさんはわたしの顔をしげしげと見つめた。
え?
なにかおかしいかな? わたしの顔。
「美月ちゃん、メイク変えた?」
「え?」
「なんか雰囲気が、前回のイベントのときと違うから」
「あ、はい。少し」
「こないだよりよくなったね。綺麗になったよ」
「あ… ありがとうございます」
思いがけない言葉にドキリとして、顔が熱くなってくる。
自分の些細な変化に気づいてもらえるなんて、とっても嬉しい。
それに『綺麗になった』だなんて…
お世辞だとしても嬉しい。
今のわたし、ほんのり入れているチークより、頬が赤く染まっている気がする。
そんなわたしを見つめたまま、ヨシキさんは言った。
「今度、ロケで個撮しようか?」
「え?」
「美月ちゃん見てるとイメージ湧いてくるんだ。シックなドレスかワンピとかを着た美月ちゃんが、古ぼけた図書館で本を読んでる所とか。洋館で紅茶飲んでる所とかもいいし…
レトロな街並を散歩してるのも似合いそう」
「…」
「まあ、イベント2回目でいきなりロケ撮は無理かな。そのうちよろしくな。じゃあオレ、そろそろブースに戻らないといけないから。また次のイベントで会えるといいね」
わたしが困惑していると見たのか、ヨシキさんはあっさり引き下がると軽く手を掲げ、背中を向けて歩いていった。
えっ?
なんなの、それ?
ロケって、コスプレ初心者には、そんなに難しいものなのだろうか?
そうだとしてもヨシキさん、あまりにも簡単に引きすぎない?
確かにわたしは、『ロケ』も『個撮』も、どういうものか知らないし、不安はある。
だけど、『無理かな』なんて言われると、まるで見くびられたようで、逆にムラムラと挑戦してみたい気持ちが湧き上がってくる。
やっぱりわたしは、負けず嫌いなのかもしれない。
つづく
桃李さんの真似をしておどけながら、ヨシキさんがカメラを構える。
うなずいて呼吸を整えてレンズを見つめたわたしに、タイミングよくシャッターを切る。
“カシャカシャ”と軽快な金属音が響く。
その音が心地よい。
『ヨシキさんに撮られたレイヤーさんは、もう他のカメコさんじゃ満足できないからだになってしまうんですぅ』
って桃李さんの言葉も、案外的を射ているかもしれないな。
ファインダー越しに、ヨシキさんがわたしを見つめる。
その視線を受けて、からだの芯がジンと熱くなるのを感じる。
もっとわたしを、見つめてほしい。
わたしのなかに眠っている『なにか』を、ヨシキさんの手で、引っ張り出してほしい。
そんな欲望が湧き上がってくる。
やっぱりわたしは、この人のことが好きみたい。
ヨシキさんのこと、もっと知りたいって思うし、わたしのことも、知ってほしい。
「はい。これ、約束の写真とデータ」
撮影後、みんなで撮った画像を確認したあと、ヨシキさんはそう言ってわたしの方を振り向くと、小さな紙袋を差し出した。
中にはミニアルバムと、CDのようなディスクが入っている。
「あ、ありがとうございます」
「メールとかあれば、データを送ってあげられるんだけどね」
「あ」
わたしもバッグから名刺を取り出し、ヨシキさんに渡す。
「メールアドレスが書いてあるので、そちらに送って下されば」
「名刺、作ったんだ」
「はい。ヨシキさんのホームページも拝見しました」
「ほんとに?」
「すごかったです! どの画像も綺麗で素敵で! コスプレの写真も素晴らしかったけど、私服もみんな素敵で、雰囲気あって。感動しました!」
「ありがとう~。そんなに褒めてもらえると、なんだか照れるな」
そう言いながら、ヨシキさんはわたしの顔をしげしげと見つめた。
え?
なにかおかしいかな? わたしの顔。
「美月ちゃん、メイク変えた?」
「え?」
「なんか雰囲気が、前回のイベントのときと違うから」
「あ、はい。少し」
「こないだよりよくなったね。綺麗になったよ」
「あ… ありがとうございます」
思いがけない言葉にドキリとして、顔が熱くなってくる。
自分の些細な変化に気づいてもらえるなんて、とっても嬉しい。
それに『綺麗になった』だなんて…
お世辞だとしても嬉しい。
今のわたし、ほんのり入れているチークより、頬が赤く染まっている気がする。
そんなわたしを見つめたまま、ヨシキさんは言った。
「今度、ロケで個撮しようか?」
「え?」
「美月ちゃん見てるとイメージ湧いてくるんだ。シックなドレスかワンピとかを着た美月ちゃんが、古ぼけた図書館で本を読んでる所とか。洋館で紅茶飲んでる所とかもいいし…
レトロな街並を散歩してるのも似合いそう」
「…」
「まあ、イベント2回目でいきなりロケ撮は無理かな。そのうちよろしくな。じゃあオレ、そろそろブースに戻らないといけないから。また次のイベントで会えるといいね」
わたしが困惑していると見たのか、ヨシキさんはあっさり引き下がると軽く手を掲げ、背中を向けて歩いていった。
えっ?
なんなの、それ?
ロケって、コスプレ初心者には、そんなに難しいものなのだろうか?
そうだとしてもヨシキさん、あまりにも簡単に引きすぎない?
確かにわたしは、『ロケ』も『個撮』も、どういうものか知らないし、不安はある。
だけど、『無理かな』なんて言われると、まるで見くびられたようで、逆にムラムラと挑戦してみたい気持ちが湧き上がってくる。
やっぱりわたしは、負けず嫌いなのかもしれない。
つづく
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