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「脊髄反射で思わず手が出てしまいました」
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「い… いやっ」
怯んだわたしは、思わずヨシキさんの手をはねのけ、からだを固く縮めた。
「ごめん。でも、すごく可愛かったよ」
髪を撫でながらヨシキさんはやさしくそう言うと、わたしをそっと抱きしめた。
激しい動悸を抑え、ヨシキさんの胸のなかで、わたしは状況を整理していた。
ワンピースの胸元が開いているのに、今さら気がついた。
いつの間にかブラジャーのホックもはずされていて、ふたつのふくらみがあらわになっている。
わたし…
ヨシキさんから胸を触られてたんだ。
わかった瞬間、湯気が出そうなくらい、頬が熱くなった。
カッと頭に血が上り、思わず手に力が入る。
“バシッ”
気がつくと、わたしは思いっきり、ヨシキさんの頬をはたいていた。
「…ごめん」
なにも言い返さず、ヨシキさんはポツリといった。
しまった!
脊髄反射で思わず手が出てしまった。
嫌だったわけじゃないのに。
どうしよう!
「もっ、もう帰ります。門限過ぎちゃってるし」
慌ててブラを直し、ワンピースのボタンを留める。
身づくろいしている間にヨシキさんはクルマを降り、助手席に回ってドアを開けてくれた。
無言でそそくさとクルマを降りるわたしに、ヨシキさんはほんの少し躊躇ったように見えたが、それでもやさしく言った。
「ごめん、ちょっと急ぎ過ぎたみたいで」
「い、いえ」
「凛子ちゃんのことは、本当に好きだから」
「…あ、ありがとうございます」
「今度、連絡して、いい?」
「は、はい」
「明日また、イベントで会えるよな」
「…はい」
「今夜は、最高に幸せだった」
「わたしも、です」
「おやすみ」
「お、おやすみなさい」
“チュ”
まともに顔も見れず、うつむいて答えたわたしの頬に、ヨシキさんは今度は軽いキスをくれた。
動揺を見せないように、わたしは素早く背中を向け、クルマをあとにして脇道を駆け抜け、家へと向かう。
玄関先で気持ちを落ち着かせるようにひとつ深呼吸し、わたしは恐る恐る振り向いてみた。
脇道の角の所で、ヨシキさんはわたしを見送ってくれていた。
振り返ったわたしに気づき、軽く手を振っている。
会釈しながらわたしは扉を開け、家のなかに入った。
ピシャリとうしろ手で引き違い戸を閉め、しばらく玄関の土間で呆然とする。
まだ、ドキドキと心臓が高鳴っているのがわかる。
いろんなことがありすぎて、今はいっぱいいっぱい。
もう一度気持ちを切り替えるように、わたしは目を閉じて大きく息を吸った。
「凛子、帰ったの? 遅いわよ、今何時だと思ってるの?!」
奥の居間から母の声がして、パタパタとこちらへ向かってくる足音が聞こえてくる。
こんな状態で、母と顔を合わせたくない。
勘のいい母なら、わたしが今まで男の人と会っていたのを、すぐに見抜かれるかもしれないし。
「遅くなってごめんなさい。友達と話し込んでしまって…
疲れてるのでもう寝ます。おやすみなさい!」
大声で叫んだわたしは、バタバタと階段を駆け上がり、自分の部屋に飛び込んで、ドアの鍵を閉めた。
まだ、動悸がおさまらない。
混乱している。
わたし、なにをやっているんだろ?
つづく
怯んだわたしは、思わずヨシキさんの手をはねのけ、からだを固く縮めた。
「ごめん。でも、すごく可愛かったよ」
髪を撫でながらヨシキさんはやさしくそう言うと、わたしをそっと抱きしめた。
激しい動悸を抑え、ヨシキさんの胸のなかで、わたしは状況を整理していた。
ワンピースの胸元が開いているのに、今さら気がついた。
いつの間にかブラジャーのホックもはずされていて、ふたつのふくらみがあらわになっている。
わたし…
ヨシキさんから胸を触られてたんだ。
わかった瞬間、湯気が出そうなくらい、頬が熱くなった。
カッと頭に血が上り、思わず手に力が入る。
“バシッ”
気がつくと、わたしは思いっきり、ヨシキさんの頬をはたいていた。
「…ごめん」
なにも言い返さず、ヨシキさんはポツリといった。
しまった!
脊髄反射で思わず手が出てしまった。
嫌だったわけじゃないのに。
どうしよう!
「もっ、もう帰ります。門限過ぎちゃってるし」
慌ててブラを直し、ワンピースのボタンを留める。
身づくろいしている間にヨシキさんはクルマを降り、助手席に回ってドアを開けてくれた。
無言でそそくさとクルマを降りるわたしに、ヨシキさんはほんの少し躊躇ったように見えたが、それでもやさしく言った。
「ごめん、ちょっと急ぎ過ぎたみたいで」
「い、いえ」
「凛子ちゃんのことは、本当に好きだから」
「…あ、ありがとうございます」
「今度、連絡して、いい?」
「は、はい」
「明日また、イベントで会えるよな」
「…はい」
「今夜は、最高に幸せだった」
「わたしも、です」
「おやすみ」
「お、おやすみなさい」
“チュ”
まともに顔も見れず、うつむいて答えたわたしの頬に、ヨシキさんは今度は軽いキスをくれた。
動揺を見せないように、わたしは素早く背中を向け、クルマをあとにして脇道を駆け抜け、家へと向かう。
玄関先で気持ちを落ち着かせるようにひとつ深呼吸し、わたしは恐る恐る振り向いてみた。
脇道の角の所で、ヨシキさんはわたしを見送ってくれていた。
振り返ったわたしに気づき、軽く手を振っている。
会釈しながらわたしは扉を開け、家のなかに入った。
ピシャリとうしろ手で引き違い戸を閉め、しばらく玄関の土間で呆然とする。
まだ、ドキドキと心臓が高鳴っているのがわかる。
いろんなことがありすぎて、今はいっぱいいっぱい。
もう一度気持ちを切り替えるように、わたしは目を閉じて大きく息を吸った。
「凛子、帰ったの? 遅いわよ、今何時だと思ってるの?!」
奥の居間から母の声がして、パタパタとこちらへ向かってくる足音が聞こえてくる。
こんな状態で、母と顔を合わせたくない。
勘のいい母なら、わたしが今まで男の人と会っていたのを、すぐに見抜かれるかもしれないし。
「遅くなってごめんなさい。友達と話し込んでしまって…
疲れてるのでもう寝ます。おやすみなさい!」
大声で叫んだわたしは、バタバタと階段を駆け上がり、自分の部屋に飛び込んで、ドアの鍵を閉めた。
まだ、動悸がおさまらない。
混乱している。
わたし、なにをやっているんだろ?
つづく
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