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level 6
「掌の上で転がされてたのかもしれません」
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「凛子ちゃん、もう帰ってる? 気になったから電話しちゃった」
「ついさっき、戻ったところです」
「あれ~。けっこう遅かったのね。ってことは、今日のデート、うまくいったんだ~」
「デートではなくて、個撮ですけど」
「まあ似たようなもんじゃん。で、どうだった?」
今日、ヨシキさんと会うことは言っておいたので、優花さんはそのなりゆきを聞きたいようだった。
順を追って今日のできごとを、わたしはおおまかに話す。
『ふうん』とか『へぇ~』とか相づちを打ちながら、優花さんは興味津々という様子で聞いていた。
さすがにキスをしたことまで話すのは躊躇われたが、優花さんの容赦ない追求にとうとう根負けし、わたしはすべてを打ち明けた。
「ん~。やっぱり。そういうことになるんじゃないかと、思ってたのよね~」
「やっぱりとは?」
「そいつ、かなり手慣れてるよね。
ムード抜群のマジックアワーの海辺で、好きな人に見つめられたら、処女だってキスくらい許しちゃうわよ。それをわかってて仕掛けてる感じ。食事の誘い方にしても、乙女心を突いてるし」
「乙女心を、ですか?」
「先に悪い提案をしておいて、そのあと本題を切り出すところ」
「どういうことですか?」
「『もう帰る?』って訊かれたあと、『それとも食事にでも行く?』って言われたんでしょ?」
「ええ」
「二択で迷ってるとき、最初に『もう帰る?』って悪い方の提案されると、『もう少しくらいならいいかな』って思うものよ。人間の心理として。
凛子ちゃんも、そう思ったんじゃない?」
「ええ… 確かに」
「そのあとすかさず、『それとも食事にでも行く?』って誘えば、ストレートに食事に誘うより、OKもらえる確率は上がるわ。
落とされて上げるっていうのかな。その方が女の子としても嬉しさが増すし、乙女心をつけこむ憎いやり方よね~」
「そんな細かい計算が入っているんですか?」
「計算っていうより、モテ男の本能でやってるんじゃない? 多分」
「本能…」
「スペイン料理ってのも、絶妙なチョイスだしね。
いきなり高級なフレンチに連れていかれても、ふつうの女子高生だったら緊張して気後れするだろうし、かといってファミレスじゃスペシャル感がなくて、テンションも上がらないし。
イタリアンじゃなくてスペインってのも、なんだか洒落てるしね。あ~。わたしもそのレストラン行ってみたい!」
「羨ましいですか? すごく美味しくて、雰囲気もよかったですよ」
「もうっ。煽るんだから~。でもヨシキさんって、凛子ちゃんのそういう性格を読んでて、うまくリードしてるんじゃないの?」
「リード?」
「凛子ちゃんって、かなりの負けず嫌いじゃない。
『無理だよ』とか言われたら、逆に挑戦したくなるタイプでしょ。その性格を上手く利用されてる気がするのよね~。今までもヨシキさんから煽られなかった?」
「それは…」
これまでのことを、わたしは思い返してみた。
そう言われてみれば、はじめてのイベントのときも、『都合悪いなら、無理に誘ったりはしない』と、ヨシキさんはさりげなく、次のイベントにわたしが参加するよう、仕向けてきた気がする。
はじめて個撮に誘われたときも、『イベント2回目でいきなりロケは無理かな』と、わたしの闘争心をかきたててきた。
もしかしてわたし、ヨシキさんの掌の上で転がされていたのかもしれない。
なんだか口惜しい。
いくら好きな人だからとはいえ、このわたしがこんなに簡単に、人のペースに乗せられてしまうなんて…
つづく
「ついさっき、戻ったところです」
「あれ~。けっこう遅かったのね。ってことは、今日のデート、うまくいったんだ~」
「デートではなくて、個撮ですけど」
「まあ似たようなもんじゃん。で、どうだった?」
今日、ヨシキさんと会うことは言っておいたので、優花さんはそのなりゆきを聞きたいようだった。
順を追って今日のできごとを、わたしはおおまかに話す。
『ふうん』とか『へぇ~』とか相づちを打ちながら、優花さんは興味津々という様子で聞いていた。
さすがにキスをしたことまで話すのは躊躇われたが、優花さんの容赦ない追求にとうとう根負けし、わたしはすべてを打ち明けた。
「ん~。やっぱり。そういうことになるんじゃないかと、思ってたのよね~」
「やっぱりとは?」
「そいつ、かなり手慣れてるよね。
ムード抜群のマジックアワーの海辺で、好きな人に見つめられたら、処女だってキスくらい許しちゃうわよ。それをわかってて仕掛けてる感じ。食事の誘い方にしても、乙女心を突いてるし」
「乙女心を、ですか?」
「先に悪い提案をしておいて、そのあと本題を切り出すところ」
「どういうことですか?」
「『もう帰る?』って訊かれたあと、『それとも食事にでも行く?』って言われたんでしょ?」
「ええ」
「二択で迷ってるとき、最初に『もう帰る?』って悪い方の提案されると、『もう少しくらいならいいかな』って思うものよ。人間の心理として。
凛子ちゃんも、そう思ったんじゃない?」
「ええ… 確かに」
「そのあとすかさず、『それとも食事にでも行く?』って誘えば、ストレートに食事に誘うより、OKもらえる確率は上がるわ。
落とされて上げるっていうのかな。その方が女の子としても嬉しさが増すし、乙女心をつけこむ憎いやり方よね~」
「そんな細かい計算が入っているんですか?」
「計算っていうより、モテ男の本能でやってるんじゃない? 多分」
「本能…」
「スペイン料理ってのも、絶妙なチョイスだしね。
いきなり高級なフレンチに連れていかれても、ふつうの女子高生だったら緊張して気後れするだろうし、かといってファミレスじゃスペシャル感がなくて、テンションも上がらないし。
イタリアンじゃなくてスペインってのも、なんだか洒落てるしね。あ~。わたしもそのレストラン行ってみたい!」
「羨ましいですか? すごく美味しくて、雰囲気もよかったですよ」
「もうっ。煽るんだから~。でもヨシキさんって、凛子ちゃんのそういう性格を読んでて、うまくリードしてるんじゃないの?」
「リード?」
「凛子ちゃんって、かなりの負けず嫌いじゃない。
『無理だよ』とか言われたら、逆に挑戦したくなるタイプでしょ。その性格を上手く利用されてる気がするのよね~。今までもヨシキさんから煽られなかった?」
「それは…」
これまでのことを、わたしは思い返してみた。
そう言われてみれば、はじめてのイベントのときも、『都合悪いなら、無理に誘ったりはしない』と、ヨシキさんはさりげなく、次のイベントにわたしが参加するよう、仕向けてきた気がする。
はじめて個撮に誘われたときも、『イベント2回目でいきなりロケは無理かな』と、わたしの闘争心をかきたててきた。
もしかしてわたし、ヨシキさんの掌の上で転がされていたのかもしれない。
なんだか口惜しい。
いくら好きな人だからとはいえ、このわたしがこんなに簡単に、人のペースに乗せられてしまうなんて…
つづく
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