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「ふたりいっしょでなら、変われると思います」
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「昨日は本当に嬉しかったです。ヨシキさんとキス… とかできて。
はじめてのことで、怖じ気づいてしまったけど、わたしもう、逃げたりしませんから」
「…」
「だから、『似合わない』なんて、わたしのこと否定するの、やめて下さい」
「…」
「ヨシキさんから否定されるのが、いちばん辛いです」
「…」
「…」
しばしの沈黙。
そのあとヨシキさんは、わたしをまっすぐ見つめ、おもむろに口を開いた。
「凛子ちゃんの言うとおりかもしれない」
「え?」
「やっぱりオレは、卑怯でずるい人間だ」
「どうしたんですか?」
「自分を誤魔化そうとしてた」
「そんな…」
「ほんとのことを話すよ」
そう言ったヨシキさんは、こちらへ体勢を向き直し、まっすぐわたしを見つめて言った。
「昨日の夜は、ほんとに辛かったんだ」
「え?」
「凛子ちゃんと別れた瞬間から、もう君に会いたくて」
「…」
「ひと晩中ずっと、片時も凛子ちゃんのことが頭から離れなくて、眠れなくて。ベッドの上で悶々としてたんだよ」
「…ヨシキさんが、ですか?」
「そうだよ。それくらいいっぱつで、凛子ちゃんの虜になっちまったんだ。こんなの、初めてのことだった」
「…それは、すごく嬉しいですけど。ではどうして、あんなことを」
「怖かったんだよ」
「怖い?」
「他の人間が自分の心のなかに入ってきて、それに支配されるのが」
「え?」
「どうしていいかわからなくなった。
オレ、本気で人を愛したことなんて、今までほとんどなかったから」
「ヨシキさん」
「怖気づいたんだよ。凛子ちゃんにはまり込むことに。
まだ引き返せるうちに、離れた方が、今までのオレでいられるって」
「…」
「『人間関係』とか、『住んでる世界が違う』とか、そんなのただの口実だった。君から逃げるための」
「…」
「ったく、締まらない話だよな。
『変わろうよ。オレなら君を変えられる』って、凛子ちゃんには言っときながら、いざ自分が変えられそうになったら、ビビっちまうなんて。
こんなんじゃ、凛子ちゃんとつきあう資格なんか、ない」
意外だった。
女性慣れしていて、気軽に恋もこなしているように見えるヨシキさんから、こんな言葉を聞くなんて。
それほどまでに、わたしのことを…
そう思い至ったとたん、胸の奥から熱いものが込み上げてきて、つい、そんな言葉が口から溢れ出してきた。
「…ふたりなら。ふたりいっしょでなら、変われると思います」
「凛子ちゃん…」
「わたしだって、昨日は怖気づきました。はじめてのことばかりで、ドンドン別の自分になっていくみたいで。
でも、ヨシキさんもいっしょに変わってくれるというのなら、わたしも勇気が出せると思います」
「…」
「わたしといっしょに、変わってくれませんか」
そう言ったわたしの瞳を、ヨシキさんは長い間、瞬きもせずにのぞきこんでいた。
が、ふっと緊張が切れたかのように表情をゆるめ、念を押すかのようにささやいた。
「…後悔しない?」
「しません。絶対」
「オレも絶対、後悔しないし、させない」
「ヨシキさん」
「オレ、恋人は作らない主義だったんだ。昨日までは」
「…」
「もう恋はしなくていいと思ってた。でも、凛子ちゃんに出会って、その気持ちが揺らいだ」
「…」
「たった今、オレはその主義を棄てる」
「…ヨシキさん」
「オレは凛子ちゃんだけが、好きだ」
「…本当ですか?」
「この言葉を、凛子ちゃんにはずっと覚えておいてほしい」
「え?」
「これから多分、いろんなことがあると思うから」
「いろんなこと?」
「いろんなやつからいろんな話を耳にして、オレのこと、信じられなくなることもあるかもしれない。
だけどそのときは、今言ったことを思い出してくれ。
オレは凛子ちゃんただひとりを、愛しているんだと」
つづく
はじめてのことで、怖じ気づいてしまったけど、わたしもう、逃げたりしませんから」
「…」
「だから、『似合わない』なんて、わたしのこと否定するの、やめて下さい」
「…」
「ヨシキさんから否定されるのが、いちばん辛いです」
「…」
「…」
しばしの沈黙。
そのあとヨシキさんは、わたしをまっすぐ見つめ、おもむろに口を開いた。
「凛子ちゃんの言うとおりかもしれない」
「え?」
「やっぱりオレは、卑怯でずるい人間だ」
「どうしたんですか?」
「自分を誤魔化そうとしてた」
「そんな…」
「ほんとのことを話すよ」
そう言ったヨシキさんは、こちらへ体勢を向き直し、まっすぐわたしを見つめて言った。
「昨日の夜は、ほんとに辛かったんだ」
「え?」
「凛子ちゃんと別れた瞬間から、もう君に会いたくて」
「…」
「ひと晩中ずっと、片時も凛子ちゃんのことが頭から離れなくて、眠れなくて。ベッドの上で悶々としてたんだよ」
「…ヨシキさんが、ですか?」
「そうだよ。それくらいいっぱつで、凛子ちゃんの虜になっちまったんだ。こんなの、初めてのことだった」
「…それは、すごく嬉しいですけど。ではどうして、あんなことを」
「怖かったんだよ」
「怖い?」
「他の人間が自分の心のなかに入ってきて、それに支配されるのが」
「え?」
「どうしていいかわからなくなった。
オレ、本気で人を愛したことなんて、今までほとんどなかったから」
「ヨシキさん」
「怖気づいたんだよ。凛子ちゃんにはまり込むことに。
まだ引き返せるうちに、離れた方が、今までのオレでいられるって」
「…」
「『人間関係』とか、『住んでる世界が違う』とか、そんなのただの口実だった。君から逃げるための」
「…」
「ったく、締まらない話だよな。
『変わろうよ。オレなら君を変えられる』って、凛子ちゃんには言っときながら、いざ自分が変えられそうになったら、ビビっちまうなんて。
こんなんじゃ、凛子ちゃんとつきあう資格なんか、ない」
意外だった。
女性慣れしていて、気軽に恋もこなしているように見えるヨシキさんから、こんな言葉を聞くなんて。
それほどまでに、わたしのことを…
そう思い至ったとたん、胸の奥から熱いものが込み上げてきて、つい、そんな言葉が口から溢れ出してきた。
「…ふたりなら。ふたりいっしょでなら、変われると思います」
「凛子ちゃん…」
「わたしだって、昨日は怖気づきました。はじめてのことばかりで、ドンドン別の自分になっていくみたいで。
でも、ヨシキさんもいっしょに変わってくれるというのなら、わたしも勇気が出せると思います」
「…」
「わたしといっしょに、変わってくれませんか」
そう言ったわたしの瞳を、ヨシキさんは長い間、瞬きもせずにのぞきこんでいた。
が、ふっと緊張が切れたかのように表情をゆるめ、念を押すかのようにささやいた。
「…後悔しない?」
「しません。絶対」
「オレも絶対、後悔しないし、させない」
「ヨシキさん」
「オレ、恋人は作らない主義だったんだ。昨日までは」
「…」
「もう恋はしなくていいと思ってた。でも、凛子ちゃんに出会って、その気持ちが揺らいだ」
「…」
「たった今、オレはその主義を棄てる」
「…ヨシキさん」
「オレは凛子ちゃんだけが、好きだ」
「…本当ですか?」
「この言葉を、凛子ちゃんにはずっと覚えておいてほしい」
「え?」
「これから多分、いろんなことがあると思うから」
「いろんなこと?」
「いろんなやつからいろんな話を耳にして、オレのこと、信じられなくなることもあるかもしれない。
だけどそのときは、今言ったことを思い出してくれ。
オレは凛子ちゃんただひとりを、愛しているんだと」
つづく
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