178 / 259
level 19
「日に日に大きくなっていく時限爆弾のようです」
しおりを挟む
はじめてのモデルの仕事は、成功だった。
額に汗を滲ませながら、気迫たっぷりになぎなたを振ってるドラッグ撲滅啓蒙のCMやポスターは、代理店の方にもクライアントさんにもとても評判がよく、視聴者にも好評だということだった。
さっそく、続編を作ろうという話や、全国キャンペーンに拡大して、わたしになぎなたの演武をやってもらおうという話まで持ち上がってきた。
それ以外にも、CMを見た別の会社からの問い合わせやオファーもいろいろ舞い込んできて、わたしのまわりは一気に活気づいてきた。
もちろん、それは嬉しいことだし、光栄なこと。
だけどわたしには、ずっと心に引っかかってることがあった。
わたしは、親を騙してる。
最初は小さな言い訳だった。
みっこさんからモデルレッスンを受けるとき、『課外授業で遅くなるから』と、嘘をついたのがはじまり。
そのあとも、一度ついた嘘の整合性をとるために、嘘を重ね、モデル事務所に所属するという話も、それまでに積み重ねてきた嘘がバレないようにするために、やはり、親を欺いてしまったのだ。
みっこさんからは、あらかじめ念を押されていた。
事務所に所属するためには、肖像権や著作権についての契約書と、まだ未成年だということで、親の同意書などの書類を、提出しなきゃいけないということを。
だけどわたしは、親にはいっさい、モデルの話をしていなかった。
『これからは、わたしには嘘をつかないでちょうだい。これ以上わたしを悲しませないで』
ヨシキさんとの泊まり旅行がバレたとき、母からはそう釘をさされてはいた。
だけど、正直に話したところで、どうせ反対されるに決まってる。
モデルなんて不安定な仕事、許してもらえるはずがない。
華やかだけど浮き沈みが激しく、弱肉強食のイメージの強いモデルの世界なんて、教師みたいなお固い仕事をしてるわたしの両親に、理解してもらえるわけがない。
それなら、説得に無駄なエネルギーと時間を費やすより、内緒にしてた方がいい。
どうせうちの親は、年中仕事と研究に明け暮れてて、ほとんど子どもに構わないし、テレビだってろくに見ないくらいの世間知らずなんだから、バレっこない。
モデルの話は実績作ったあと、なし崩し的に認めてもらえばいい。
そう思って、わたしは親のタンスからこっそり印鑑を持ち出し、サインは親の筆跡を真似て自分で書いて、諸々の書類を事務所に提出したのだ。
…今になって、それが心に重くのしかかってくる。
テレビでCMを目にするたび、仕事の話がやってくるたびに、その重しがズシンと心を塞いでくる。
長期戦で、少しづつ認めてもらう作戦が、こんなにいきなりメディアに露出するようになるなんて。
こんなことなら、最初から正直に話しておけばよかった。
そうすれば、こんなにモヤモヤした鬱な気持ちを溜め込まずにすんだのに…
後悔してももう遅い。
わたしがモデルをしてることが親にバレたら、きっとひどく叱られるだろう。
みっこさんや事務所の方々にも、迷惑をかけ、場合によっては無理やりやめさせられるかもしれない。
、、、絶対に言えない。
だけど、秘密にしてても、いずれバレるに決まってる。
それなら少しでも早い段階で、打ち明けた方がいい。
だけどやっぱり、話すのは怖い。
そうやってズルズルと日一日、告白するのが延びていくと、その分、わたしのプレッシャーも溜まり、親の怒りもきっと増していく。
まるで、日に日に大きくなっていく、時限爆弾。
そしてそれは、最悪のタイミングで爆発するのだった。
つづく
額に汗を滲ませながら、気迫たっぷりになぎなたを振ってるドラッグ撲滅啓蒙のCMやポスターは、代理店の方にもクライアントさんにもとても評判がよく、視聴者にも好評だということだった。
さっそく、続編を作ろうという話や、全国キャンペーンに拡大して、わたしになぎなたの演武をやってもらおうという話まで持ち上がってきた。
それ以外にも、CMを見た別の会社からの問い合わせやオファーもいろいろ舞い込んできて、わたしのまわりは一気に活気づいてきた。
もちろん、それは嬉しいことだし、光栄なこと。
だけどわたしには、ずっと心に引っかかってることがあった。
わたしは、親を騙してる。
最初は小さな言い訳だった。
みっこさんからモデルレッスンを受けるとき、『課外授業で遅くなるから』と、嘘をついたのがはじまり。
そのあとも、一度ついた嘘の整合性をとるために、嘘を重ね、モデル事務所に所属するという話も、それまでに積み重ねてきた嘘がバレないようにするために、やはり、親を欺いてしまったのだ。
みっこさんからは、あらかじめ念を押されていた。
事務所に所属するためには、肖像権や著作権についての契約書と、まだ未成年だということで、親の同意書などの書類を、提出しなきゃいけないということを。
だけどわたしは、親にはいっさい、モデルの話をしていなかった。
『これからは、わたしには嘘をつかないでちょうだい。これ以上わたしを悲しませないで』
ヨシキさんとの泊まり旅行がバレたとき、母からはそう釘をさされてはいた。
だけど、正直に話したところで、どうせ反対されるに決まってる。
モデルなんて不安定な仕事、許してもらえるはずがない。
華やかだけど浮き沈みが激しく、弱肉強食のイメージの強いモデルの世界なんて、教師みたいなお固い仕事をしてるわたしの両親に、理解してもらえるわけがない。
それなら、説得に無駄なエネルギーと時間を費やすより、内緒にしてた方がいい。
どうせうちの親は、年中仕事と研究に明け暮れてて、ほとんど子どもに構わないし、テレビだってろくに見ないくらいの世間知らずなんだから、バレっこない。
モデルの話は実績作ったあと、なし崩し的に認めてもらえばいい。
そう思って、わたしは親のタンスからこっそり印鑑を持ち出し、サインは親の筆跡を真似て自分で書いて、諸々の書類を事務所に提出したのだ。
…今になって、それが心に重くのしかかってくる。
テレビでCMを目にするたび、仕事の話がやってくるたびに、その重しがズシンと心を塞いでくる。
長期戦で、少しづつ認めてもらう作戦が、こんなにいきなりメディアに露出するようになるなんて。
こんなことなら、最初から正直に話しておけばよかった。
そうすれば、こんなにモヤモヤした鬱な気持ちを溜め込まずにすんだのに…
後悔してももう遅い。
わたしがモデルをしてることが親にバレたら、きっとひどく叱られるだろう。
みっこさんや事務所の方々にも、迷惑をかけ、場合によっては無理やりやめさせられるかもしれない。
、、、絶対に言えない。
だけど、秘密にしてても、いずれバレるに決まってる。
それなら少しでも早い段階で、打ち明けた方がいい。
だけどやっぱり、話すのは怖い。
そうやってズルズルと日一日、告白するのが延びていくと、その分、わたしのプレッシャーも溜まり、親の怒りもきっと増していく。
まるで、日に日に大きくなっていく、時限爆弾。
そしてそれは、最悪のタイミングで爆発するのだった。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる