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「『カタチ』として、確認しておきたかったのです」
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イベント会場近くのいつものファミレスに移動したのは、わたしとヨシキさんを含めて15人。
かなりの大人数になった。
ヨシキさんの相方のミノルさんも参加しているが、男性陣はそのふたりだけで、残りはみんな女性レイヤー。あの夏コミ前の、『ヨシキさんアフター伝説』の再現といった感じだ。
魔夢さんや百合花さんをはじめ、ヨシキさんの取り巻きレイヤーはほとんど参加していた。恋子さんの姿もあったし、遠慮がちにしていた桃李さんも、無理矢理引っ張ってきた。
「お客様15人で~す!」
応対に出たウエイトレスが、人数の多さにびっくりしながらそう告げると、店内のホールスタッフが集まってきて、奥のロングソファのテーブルをテキパキと並べ替えていった。ファミレスのスタッフも、この時間になるとイベント帰りのレイヤーが大勢アフターしに来るということを、ようやく学習したみたい。
「ちょっとすみません。お化粧直ししてきますので」
席に案内される前に、わたしはそう言って化粧室に入り、鏡に映る自分の姿をチェックし、わざとみんなから少し遅れて席に赴いた。
他の人たちはもう、それぞれの席についている。
わたしはどこに座ればいいんだろうか?
「美月ちゃん、こっちこっち」
そう言って手招きしてるのは、ヨシキさんだった。
ソファの真ん中に陣取ったヨシキさんは、やっぱりみんなの中心にいる。
そして、ヨシキさんのとなりのスペースが、わたしのために空けられていた。
「すみません。ちょっと通して下さい」
そう断りながら、わたしはロングソファの端に座っていたレイヤーの前を横切り、百合花さんと魔夢さんをも通り越して、ヨシキさんの横に腰を下ろした。
百合花さんはなにも言わない。
跨いでいくわたしを一瞬、魔夢さんは嫌そうな顔をして見たが、それでも彼女の目の前を横切っていくわたしのお尻を、黙って見てるだけだった。
もちろん他のだれも、当たり前のようにその光景を見ていた。
『ふふ… ここが、今のわたしのポジションか』
思い思いにメニューを見たり、雑談してる女レイヤーたちをゆっくりと見渡し、わたしはある種の満足感に浸っていた。
ヨシキさんをめぐるレイヤーたちは、みんな、好き勝手に座ってるようで、この席順には暗黙の法則… ヒエラルキーがある。
それをわたしは、以前のアフターのときに観察していた。
レイヤーとしての実力や人気が高いほど。
ヨシキさんと親しいほど。
より真ん中の、ヨシキさんに近い席に座ることを認められるのだ。
コスプレをはじめたばかりで、まだ底辺レイヤーの頃に参加したアフターでは、わたしと桃李さんは肩身の狭い思いをしながら、隅っこの席に座っていた。
だけど今は違う。
わたしは、『ヨシキさんの一番お気に入りのモデル』であり、『森田美湖の秘蔵っ子』と呼ばれ、『プロのモデル』としてテレビや雑誌などで活躍し、コスプレ雑誌のグラビアページも飾ったことのある、『大物レイヤー』なのだ。
こんなに肩書きが揃ったわたしに、みんなが上位の席を譲るのは、理不尽でもなんでもない。
もちろん、わたしとヨシキさんの関係を知ってる人は、この中にはいないはず。
だけど、ふたりの仲はネットで散々邪推されてて、『枕営業で狂夜はモデルになった』とか、『カレカノ』とかの噂も流れてる。(相変わらず口にするのも憚られるくらい、酷い中傷言葉ではあるが)
ヨシキさんのサイトの『weekly gallery』でも、今はわたしがいちばん登場頻度が高く、力も入っていて、作品としての完成度も高いので、今さらわたしとヨシキさんのなかに割って入ろうという猛者は、ここにはいない。
そんなわたしが、ヨシキさんのとなりの席を空けてもらえるのは、いたって自然なこと。
わたしはそれを『カタチ』として、確認しておきたかったのだ。
『レイヤー』として、『モデル』として、みんなに認められてるということを。
ふん。
ようやくリベンジを果たしてやったわ。
気持ちいい!
つづく
かなりの大人数になった。
ヨシキさんの相方のミノルさんも参加しているが、男性陣はそのふたりだけで、残りはみんな女性レイヤー。あの夏コミ前の、『ヨシキさんアフター伝説』の再現といった感じだ。
魔夢さんや百合花さんをはじめ、ヨシキさんの取り巻きレイヤーはほとんど参加していた。恋子さんの姿もあったし、遠慮がちにしていた桃李さんも、無理矢理引っ張ってきた。
「お客様15人で~す!」
応対に出たウエイトレスが、人数の多さにびっくりしながらそう告げると、店内のホールスタッフが集まってきて、奥のロングソファのテーブルをテキパキと並べ替えていった。ファミレスのスタッフも、この時間になるとイベント帰りのレイヤーが大勢アフターしに来るということを、ようやく学習したみたい。
「ちょっとすみません。お化粧直ししてきますので」
席に案内される前に、わたしはそう言って化粧室に入り、鏡に映る自分の姿をチェックし、わざとみんなから少し遅れて席に赴いた。
他の人たちはもう、それぞれの席についている。
わたしはどこに座ればいいんだろうか?
「美月ちゃん、こっちこっち」
そう言って手招きしてるのは、ヨシキさんだった。
ソファの真ん中に陣取ったヨシキさんは、やっぱりみんなの中心にいる。
そして、ヨシキさんのとなりのスペースが、わたしのために空けられていた。
「すみません。ちょっと通して下さい」
そう断りながら、わたしはロングソファの端に座っていたレイヤーの前を横切り、百合花さんと魔夢さんをも通り越して、ヨシキさんの横に腰を下ろした。
百合花さんはなにも言わない。
跨いでいくわたしを一瞬、魔夢さんは嫌そうな顔をして見たが、それでも彼女の目の前を横切っていくわたしのお尻を、黙って見てるだけだった。
もちろん他のだれも、当たり前のようにその光景を見ていた。
『ふふ… ここが、今のわたしのポジションか』
思い思いにメニューを見たり、雑談してる女レイヤーたちをゆっくりと見渡し、わたしはある種の満足感に浸っていた。
ヨシキさんをめぐるレイヤーたちは、みんな、好き勝手に座ってるようで、この席順には暗黙の法則… ヒエラルキーがある。
それをわたしは、以前のアフターのときに観察していた。
レイヤーとしての実力や人気が高いほど。
ヨシキさんと親しいほど。
より真ん中の、ヨシキさんに近い席に座ることを認められるのだ。
コスプレをはじめたばかりで、まだ底辺レイヤーの頃に参加したアフターでは、わたしと桃李さんは肩身の狭い思いをしながら、隅っこの席に座っていた。
だけど今は違う。
わたしは、『ヨシキさんの一番お気に入りのモデル』であり、『森田美湖の秘蔵っ子』と呼ばれ、『プロのモデル』としてテレビや雑誌などで活躍し、コスプレ雑誌のグラビアページも飾ったことのある、『大物レイヤー』なのだ。
こんなに肩書きが揃ったわたしに、みんなが上位の席を譲るのは、理不尽でもなんでもない。
もちろん、わたしとヨシキさんの関係を知ってる人は、この中にはいないはず。
だけど、ふたりの仲はネットで散々邪推されてて、『枕営業で狂夜はモデルになった』とか、『カレカノ』とかの噂も流れてる。(相変わらず口にするのも憚られるくらい、酷い中傷言葉ではあるが)
ヨシキさんのサイトの『weekly gallery』でも、今はわたしがいちばん登場頻度が高く、力も入っていて、作品としての完成度も高いので、今さらわたしとヨシキさんのなかに割って入ろうという猛者は、ここにはいない。
そんなわたしが、ヨシキさんのとなりの席を空けてもらえるのは、いたって自然なこと。
わたしはそれを『カタチ』として、確認しておきたかったのだ。
『レイヤー』として、『モデル』として、みんなに認められてるということを。
ふん。
ようやくリベンジを果たしてやったわ。
気持ちいい!
つづく
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