あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

文字の大きさ
201 / 259
level 22

「これ以上していたら勉強する意志がくじけます」

しおりを挟む
「じゃあ、ふたりのクリスマスに乾杯」

ヨシキさんの掲げたシャンパングラスに、わたしも軽くグラスを重ねる。
と言っても、ふたりとも今日はノンアルコールのドリンク。
ヨシキさんはこのあとの運転もあるし、わたしは未成年の高校生モデルなので、もしだれかに、お酒を飲んでいるところを見られたりしたら、大変だからだ。
アルコール抜きの食事はちょっぴり物足りなかったけど、次々と運ばれてくる料理は、期待にたがわず美味しいものだった。

やっぱりヨシキさんに任せておけば、間違いない。
前菜の生ハムもサラミも、噛むほどに味が染み渡ってきて美味しいし、緑のクリスマスリースが描かれたミネストローネは、トマトの酸味がやわらかく舌を包み込み、ハーブの香りも上品。
お魚料理は豪華に伊勢海老。メインディッシュのチキンのローストも、皮はパリパリで身はジューシー。申し分ない美味しさだった。

以前、ノマドさんと食べた『有名レストラン』のイタリアンも美味しかったけど、目の前にいるのがノマドさんじゃ、申し訳ないけどどきめかない。
雰囲気も味のうちなんだと、ヨシキさん以外の人と食事をして、初めて気がついた。
『他の男を知ったら、オレのよさがわかる』なんてことを言っていたヨシキさんだけど、まんざら驕りでもなかった。
やっぱり、ヨシキさんと食べるごはんが、いちばん美味しい。


 食事を終えてレストランを出たのは、まだ日の高い2時頃。
駐車場に停めていた黒の『TOYOTA bB』の助手席のドアを、ヨシキさんはさりげなく開けてくれる。

「ありがとうございます」

ひとことお礼を言って、わたしはクルマに乗り込む。
最初の頃は戸惑っていたこの『お姫様乗車』にも、すっかり慣れてきた。

「今日はありがとうございました。ご馳走さまでした」

ヨシキさんが運転席に座ったタイミングを見計らって、わたしは食事のお礼を告げた。

「どういたしまして。美味しかった?」
「はい。とっても」
「よかった。凛子ちゃんが喜ぶ顔を見れて、オレも満足だよ」
「ありがとうございます」
「凛子ちゃん…」

ひとことささやいたヨシキさんは、わたしのあごに指をかけるとクイっと自分の方に持ち上げ、キスをしてきた。

「ん、、、」

ヨシキさんの肩にわたしも腕を回し、受け入れる。
最初は挨拶程度の軽いキスだったものが、少しずつ熱を帯びてくる。
わたしの舌に自分の舌を絡め、ヨシキさんは官能をくすぐってきた。


「だっ、ダメです。もう」

快感に引きずり込まれそうになったわたしは、あわててヨシキさんを押し返した。
これ以上していたら、早く帰って勉強するって意志が、くじけてしまいそう。

「いいだろ。もっと凛子ちゃんがほしい」
「ダメ、、、 早く帰って、勉強しないと」
「勉強ね。クリスマスイブくらい特別だろ」
「それに、だれか見てるかもしれません」
「いいじゃん。見せつけてやろうぜ」
「ダメです! わたしはモデルです。そんなスキャンダルは困ります!」

からだをよじってヨシキさんを突き放しながら、わたしは強い口調で言った。

「クルマ出して! もう帰ります!」
「…」

『しまった』と後悔したけど、もう遅い。
勢いに任せて、感情的になってしまった。
こういう言葉こそ、喧嘩の元になってしまうのに、、

案の定、一瞬冷ややかにわたしを見返したヨシキさんは、『はぁ』とひとつ、ため息をつくと、運転席に座り直してシートベルトを締めた。
なにも言わないまま、イグニションキーを回してエンジンをかける。
クルマの流れが途切れない車道に、『TOYOTA bB』は無理やり割り込んでいき、急加速をした。

「…」
「…」

無言ドライブが続く。
さっきまでの楽しい食事が嘘のように、雲行きが怪しくなってきた。

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...