あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

文字の大きさ
202 / 259
level 22

「そんなセリフは負けを認めるみたいで言えません」

しおりを挟む
まるでサーキットでも走ってるみたいに、車線変更を繰り返して前のクルマを追い越していったり、赤に変わりそうな信号も、スピードをあげて無理に渡ったり、ヨシキさんの運転はいつになく荒く、苛立っているのが丸わかり。
少し気分が悪くなってきて、イラついた口調でわたしはヨシキさんに文句を言った。

「もう少し安全運転してください。危ないですから」
「早く帰らないといけないんだろ。だから急いでるんだけど」
「なにそれ。当てつけですか?」
「別に」
「ちょっとキスを拒否したからって、ヨシキさん、大人げないです」

そうなじると、ヨシキさんも少し、クルマのスピードを緩めた。
が、しばらく黙りこくったあと、唐突に言い放った。

「可愛げないよな、凛子ちゃんって」
「可愛げない?」
「そうだろ。拒否るにしても、もっと言い方があるだろ。相手の神経を逆撫でしないような」
「わたしが無神経だとでも言いたいんですか?!」
「そうじゃなくって。もっと男心をわかってほしいってこと」
「わたしこそ、もっとこっちの気持ちもわかってほしいです。
もうすぐ受験で余裕ないのに。
クリスマスイブだからといって、のんびりしてられる身じゃないんですから」
「はぁ、、、」

わたしの言葉に大きくため息をついたヨシキさんは、冷たく言い放った。

「じゃあ、おとなしく家で勉強してればよかったじゃん。フレンチなんかにノコノコ出てこないで」
「ヨシキさんが誘ったんでしょ」
「別の子、誘えばよかった」
「はあ? なんですか? それ」
「こんなことになるんだったら、別のを食事に誘えばよかったって、言ったんだよ。クリスマスイブなのに」
「なにそれ。信じられない!」
「ここ最近、休みの日でも他のカメコと撮影ばかりしてて、デートできなかったろ。
凛子ちゃんはオレとちゃんとつきあう気あるのか?」
「ヨシキさんが言ったんじゃないですか。『他のカメコと個撮してみる?』って!」
「限度ってもんがあるだろ。オレと会う時間を犠牲にしてまで、やってほしくないんだよ」
「それって、やきもち焼いてるんですか?」
「はぁ? オレがその辺のくだらないカメコにやきもちなんか焼くわけないだろ」
「素直じゃないですね。わたしだって、、、
ヨシキさんにそそのかされなかったら、こんなにムキになって撮影なんてしないです」
「なに? オレが悪いわけ?」
「、、もうっ、いいです!」

そう言って、わたしはそっぽを向く。
そのセリフを最後に、ふたりともまた、黙りこくってしまった。

、、、つくづく。わたしの方こそ、素直じゃない。

『「やきもちだよ。凛子はオレのものだ」って、ヨシキさんに言ってもらえたら、他のカメコと撮影なんてしません』

って、ほんとは言いたかったのに。
なのにそんなセリフ、負けを認めるみたいで、言えない。

こういう、負けん気が強すぎる、つい相手と張り合ってしまうところが、可愛げないんだろうな。
これじゃ、いつかヨシキさんとも決定的なケンカをして、別れなきゃいけなくなる日がくるかもしれない。
そうなる前に、わたしももっと、素直で可愛い女の子に変わらなきゃいけないのかな。
でもそれも、自分を殺して相手の好みに合わせてるみたいで、なんだかイヤ。
他の女の子って、こういいうとき、どうしてるんだろ?
彼氏好みの女の子になるように努力するのが、ふつうなんだろうか?
わたしだってそうしたい気はあるけど、負けん気の強さが邪魔をする。
でもそれじゃあ、いつかヨシキさんに嫌われる日がくるかも、、、

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...