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「出会えたおかげで世界が変わった一年でした」
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クリスマスが過ぎ、年の瀬までは一週間。
冬休みの間も、わたしは勉強とモデルのレッスンと仕事に明け暮れた。
ヨシキさんとはゆっくり会うこともできないまま、新しい年を迎える。
例年なら、正月はおせちを食べながら家で過ごしたり、鹿児島の親戚たちの家へ年賀の挨拶(という名のお年玉めぐり)に出かけたりするところだが、受験が間近に控えているわたしには、のんびりなんてできない。
それでもなんとか都合をつけて、年越しの夜には家の近くの神社に、ヨシキさんと初詣に出かけることができた。
この日ばかりは、門限は解禁。
『初詣が終わったらすぐに帰る』という条件で、夜中にヨシキさんと会うことを許してもらったのだ。
年が変わる少し前に、神社の鳥居の下でヨシキさんと待ち合わせ。
いつもはだれもいない神社だけど、大晦日の夜は大勢の参拝客でごった返していた。
ゆっくりとした大河のような人の流れに乗って、ヨシキさんといっしょに境内を歩く。
ほんとは手を繋いだりしたいのだが、場所的に近所の知人に遭う確率が高いので、ベタベタするわけにもいかない。
“パンパンパン”
どこかで爆竹の弾けるような音が聞こえ、参拝を待っている行列の向こうから歓声が沸き起こり、人波が大きく揺れた。
どうやら新年を迎えたみたいだ。
顔を見合わせたわたしたちは、軽く会釈して新年の挨拶を交わした。
「凛子ちゃん。あけましておめでとう」
「おめでとうございます」
「今年もよろしくな」
「はい。わたしの方こそ、よろしくお願いします」
「今年は女子大生になって、モデルの仕事もガンガンこなす年になるんだろな」
「ヨシキさんも大学を卒業して、KYスタジオでプロカメラマンになるんですね」
「はは。今もバイトで行ってるから、あまり実感ないけどな」
今年はどんな年になるんだろう。
ヨシキさんの言うように、順風満帆にいけばいいけど。
小一時間ほどで社殿の下に辿り着き、鈴を鳴らして柏手を打って願をかける。
帰りに引いたおみくじは、中吉だった。
「ったく、不謹慎だよな」
おみくじを畳みながら、ヨシキさんは茶化すように小声で耳打ちした。
「なにがですか?」
「オレたちだよ」
「え?」
「ここの神様が見てる前で、エッチしたんだぜ。去年は」
「…」
思わず顔が赤くなる。
そうだった。
薙刀を振り回しながらヨシキさんと大喧嘩をしたり、挙げ句の果てに、この境内でエッチにまで及んでしまったんだった。
去年はいろんなことがあったな。
はじめて経験することばかりで、とっても長い一年に感じる。
「ちょっと。こっちへ」
「え? な、どうしたんですか」
感慨深げに歩いていたわたしの手を、ヨシキさんは突然握った。
帰りの参道であたりに人影が途切れた瞬間、林の陰にわたしを引っ張り込む。
すばやくあたりを見回したヨシキさんは、木の幹にわたしを押しつけ、キスをした。
「ん、、」
わたしもヨシキさんの首に腕を回す。
夜の闇と木の陰に隠れて、わたしたちの姿は参道からは見えないはず。
そう思いつつも、大勢の人たちが通り過ぎる横でキスをするのは、ちょっとしたスリル。
ザワザワとした足音を聞きながら、わたしたちはお互いの唇を貪った。
「もうっ。知ってる人に見られたらどうするんですか?!」
「とか言いつつ、凛子ちゃんも積極的だったぜ」
「ヨシキさんっ」
「はは。とにかくキスはじめができてよかったよ。このまま手も繋がないで別れるかと思った」
「、、そうですね」
「今度はゆっくり、姫はじめやろうな」
「もうっ」
「はは、、、 冗談は置いといて。
去年は凛子ちゃんと巡り逢えて、つきあえるようになって、最高にラッキーでハッピーな年だった。今年はもっといい年にしような」
参拝客の列に戻りったヨシキさんは、軽く笑いながらそう言ってくれた。
本当に、、、
わたしの方こそ、ヨシキさんと出会えたおかげで、世界が変わった一年だった。
今年もどうか、幸せな年になりますように。
つづく
冬休みの間も、わたしは勉強とモデルのレッスンと仕事に明け暮れた。
ヨシキさんとはゆっくり会うこともできないまま、新しい年を迎える。
例年なら、正月はおせちを食べながら家で過ごしたり、鹿児島の親戚たちの家へ年賀の挨拶(という名のお年玉めぐり)に出かけたりするところだが、受験が間近に控えているわたしには、のんびりなんてできない。
それでもなんとか都合をつけて、年越しの夜には家の近くの神社に、ヨシキさんと初詣に出かけることができた。
この日ばかりは、門限は解禁。
『初詣が終わったらすぐに帰る』という条件で、夜中にヨシキさんと会うことを許してもらったのだ。
年が変わる少し前に、神社の鳥居の下でヨシキさんと待ち合わせ。
いつもはだれもいない神社だけど、大晦日の夜は大勢の参拝客でごった返していた。
ゆっくりとした大河のような人の流れに乗って、ヨシキさんといっしょに境内を歩く。
ほんとは手を繋いだりしたいのだが、場所的に近所の知人に遭う確率が高いので、ベタベタするわけにもいかない。
“パンパンパン”
どこかで爆竹の弾けるような音が聞こえ、参拝を待っている行列の向こうから歓声が沸き起こり、人波が大きく揺れた。
どうやら新年を迎えたみたいだ。
顔を見合わせたわたしたちは、軽く会釈して新年の挨拶を交わした。
「凛子ちゃん。あけましておめでとう」
「おめでとうございます」
「今年もよろしくな」
「はい。わたしの方こそ、よろしくお願いします」
「今年は女子大生になって、モデルの仕事もガンガンこなす年になるんだろな」
「ヨシキさんも大学を卒業して、KYスタジオでプロカメラマンになるんですね」
「はは。今もバイトで行ってるから、あまり実感ないけどな」
今年はどんな年になるんだろう。
ヨシキさんの言うように、順風満帆にいけばいいけど。
小一時間ほどで社殿の下に辿り着き、鈴を鳴らして柏手を打って願をかける。
帰りに引いたおみくじは、中吉だった。
「ったく、不謹慎だよな」
おみくじを畳みながら、ヨシキさんは茶化すように小声で耳打ちした。
「なにがですか?」
「オレたちだよ」
「え?」
「ここの神様が見てる前で、エッチしたんだぜ。去年は」
「…」
思わず顔が赤くなる。
そうだった。
薙刀を振り回しながらヨシキさんと大喧嘩をしたり、挙げ句の果てに、この境内でエッチにまで及んでしまったんだった。
去年はいろんなことがあったな。
はじめて経験することばかりで、とっても長い一年に感じる。
「ちょっと。こっちへ」
「え? な、どうしたんですか」
感慨深げに歩いていたわたしの手を、ヨシキさんは突然握った。
帰りの参道であたりに人影が途切れた瞬間、林の陰にわたしを引っ張り込む。
すばやくあたりを見回したヨシキさんは、木の幹にわたしを押しつけ、キスをした。
「ん、、」
わたしもヨシキさんの首に腕を回す。
夜の闇と木の陰に隠れて、わたしたちの姿は参道からは見えないはず。
そう思いつつも、大勢の人たちが通り過ぎる横でキスをするのは、ちょっとしたスリル。
ザワザワとした足音を聞きながら、わたしたちはお互いの唇を貪った。
「もうっ。知ってる人に見られたらどうするんですか?!」
「とか言いつつ、凛子ちゃんも積極的だったぜ」
「ヨシキさんっ」
「はは。とにかくキスはじめができてよかったよ。このまま手も繋がないで別れるかと思った」
「、、そうですね」
「今度はゆっくり、姫はじめやろうな」
「もうっ」
「はは、、、 冗談は置いといて。
去年は凛子ちゃんと巡り逢えて、つきあえるようになって、最高にラッキーでハッピーな年だった。今年はもっといい年にしような」
参拝客の列に戻りったヨシキさんは、軽く笑いながらそう言ってくれた。
本当に、、、
わたしの方こそ、ヨシキさんと出会えたおかげで、世界が変わった一年だった。
今年もどうか、幸せな年になりますように。
つづく
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