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「負けを認めて、一歩引いてみるんですか」
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「あたしの場合は、『やっぱりモデルがしたい』、、、だったかな」
「…モデルが、したい」
「その頃のあたしはとにかく、親や元カレに意地張ってて、『前に進もう』『自分を変えよう』って必死になってあがいてた。
だけど、それじゃダメだった。
強引に前に進んでも、余計に迷い道に入り込むだけだった。
ハンドルのないクルマのアクセルを踏み込んでる、っていうのかな。
自分の行き先がわからなかったのよ」
「あっ。それ、わかります。
わたしも同じような感覚だったから」
思わず膝を打つ。
わたしも、まったく同じことを思っていたから。
やわらかく微笑んで、みっこさんは言う。
「ふふ。やっぱりあたしたち、似たもの同志なのね」
「そうかもしれません! あ、すみません。わたし、興奮しちゃって。
それで、みっこさんはそのあと、どうしたんですか?」
「幸いなことに、あたしにはチャンスが巡ってきたのよ」
「チャンス?」
「あたしの誕生日の夜に、元カレと福岡のディスコで再会したのよ。偶然」
「ええっ? そんな偶然って、あるんですか?!」
「ううん。ある意味、必然的な再会だったのかも。
そのちょうど一年前の誕生日、あたしたちは同じ場所で別れたんだから」
「別れた日に別れた場所で再会するなんて。お互いまだ未練があって、引き寄せられたんでしょうか?」
「そうかもね。
確かに、あたしはまだ未練あったんだけど、元カレの方は、新しい彼女連れてたのよね」
「ええっ。新しい彼女と、昔の恋人との思い出の場所に行くんですか? なんか、信じられない」
「まぁね。男の人の方が思い出を引きずるっていうしね。新しい彼女と思い出の上書きでもしたかったのかもしれないけど、失礼な話よね。
だけど、こっちはひとりで悶々と悩んでるってのに、向こうはちゃっかり新しい彼女作ってて。なんかショックで、みじめだったわ。それで、あたしひとりで喚いて悪態ついて、みっともなかった。
だけど、それがきっかけで、あたしは自分の弱いとこを、人に見せられるようになったの」
「弱いところ…」
「弱みを見せて、負けを認めてみると、心が軽くなるのよね。
それまでは強がって、がむしゃらに前に進むことしか考えてなかったけど、負けを認めて一歩引いてみることで、逆に、新しい世界が見えてくるようになったの」
「負けを認めて、一歩引いてみる、、」
「今の凛子ちゃんも、そんな感じなんじゃないかな?
桃李さんとヨシキくんのことでショック受けて、でも、そのおかげで、自分を見つめ直すことができて」
「わたし、まだそんな余裕なくて。。。 今はそこまで達観できません」
「そっか… そうよね。
自分ひとりで思い詰めてるだけじゃ、なかなか袋小路からは抜け出せないわよね。
あたしの場合も、それに気づかせてくれたのは、その大学で生まれてはじめてできた親友だったのよ。
その親友がいたおかげで、あたしは自分を見つめ直すことができた」
「生まれてはじめての親友。ですか?」
「あたし、小さい頃から、モデルレッスンとピアノやバレエのお稽古ごとばかりさせられてて、友達とふつうに遊ぶことさえできなかったの。そんなとこも、凛子ちゃんと似てると思わない?」
「確かに。似てます」
「同級生の女の子からは『とっつきにくいお嬢様』だとか、『お高く止まった女』みたいに思われてて、親しい友達なんかできなかったし、だれにも心を開かなかった。他人に弱みを見せるのがイヤだった」
「そうなんです! まるっきり、わたしと同じです!」
「ふふ。そうね。
だけど、福岡の大学で知り合った彼女… 『さつき』っていいうんだけどね。さつきは、すごく気さくな子で、なんでも話せるようになったの。
そのときはじめて、あたしは『ふつうの青春』を経験できたと思うわ」
「ふつうの青春、ですか」
つづく
「…モデルが、したい」
「その頃のあたしはとにかく、親や元カレに意地張ってて、『前に進もう』『自分を変えよう』って必死になってあがいてた。
だけど、それじゃダメだった。
強引に前に進んでも、余計に迷い道に入り込むだけだった。
ハンドルのないクルマのアクセルを踏み込んでる、っていうのかな。
自分の行き先がわからなかったのよ」
「あっ。それ、わかります。
わたしも同じような感覚だったから」
思わず膝を打つ。
わたしも、まったく同じことを思っていたから。
やわらかく微笑んで、みっこさんは言う。
「ふふ。やっぱりあたしたち、似たもの同志なのね」
「そうかもしれません! あ、すみません。わたし、興奮しちゃって。
それで、みっこさんはそのあと、どうしたんですか?」
「幸いなことに、あたしにはチャンスが巡ってきたのよ」
「チャンス?」
「あたしの誕生日の夜に、元カレと福岡のディスコで再会したのよ。偶然」
「ええっ? そんな偶然って、あるんですか?!」
「ううん。ある意味、必然的な再会だったのかも。
そのちょうど一年前の誕生日、あたしたちは同じ場所で別れたんだから」
「別れた日に別れた場所で再会するなんて。お互いまだ未練があって、引き寄せられたんでしょうか?」
「そうかもね。
確かに、あたしはまだ未練あったんだけど、元カレの方は、新しい彼女連れてたのよね」
「ええっ。新しい彼女と、昔の恋人との思い出の場所に行くんですか? なんか、信じられない」
「まぁね。男の人の方が思い出を引きずるっていうしね。新しい彼女と思い出の上書きでもしたかったのかもしれないけど、失礼な話よね。
だけど、こっちはひとりで悶々と悩んでるってのに、向こうはちゃっかり新しい彼女作ってて。なんかショックで、みじめだったわ。それで、あたしひとりで喚いて悪態ついて、みっともなかった。
だけど、それがきっかけで、あたしは自分の弱いとこを、人に見せられるようになったの」
「弱いところ…」
「弱みを見せて、負けを認めてみると、心が軽くなるのよね。
それまでは強がって、がむしゃらに前に進むことしか考えてなかったけど、負けを認めて一歩引いてみることで、逆に、新しい世界が見えてくるようになったの」
「負けを認めて、一歩引いてみる、、」
「今の凛子ちゃんも、そんな感じなんじゃないかな?
桃李さんとヨシキくんのことでショック受けて、でも、そのおかげで、自分を見つめ直すことができて」
「わたし、まだそんな余裕なくて。。。 今はそこまで達観できません」
「そっか… そうよね。
自分ひとりで思い詰めてるだけじゃ、なかなか袋小路からは抜け出せないわよね。
あたしの場合も、それに気づかせてくれたのは、その大学で生まれてはじめてできた親友だったのよ。
その親友がいたおかげで、あたしは自分を見つめ直すことができた」
「生まれてはじめての親友。ですか?」
「あたし、小さい頃から、モデルレッスンとピアノやバレエのお稽古ごとばかりさせられてて、友達とふつうに遊ぶことさえできなかったの。そんなとこも、凛子ちゃんと似てると思わない?」
「確かに。似てます」
「同級生の女の子からは『とっつきにくいお嬢様』だとか、『お高く止まった女』みたいに思われてて、親しい友達なんかできなかったし、だれにも心を開かなかった。他人に弱みを見せるのがイヤだった」
「そうなんです! まるっきり、わたしと同じです!」
「ふふ。そうね。
だけど、福岡の大学で知り合った彼女… 『さつき』っていいうんだけどね。さつきは、すごく気さくな子で、なんでも話せるようになったの。
そのときはじめて、あたしは『ふつうの青春』を経験できたと思うわ」
「ふつうの青春、ですか」
つづく
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