あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

文字の大きさ
253 / 259
level 27

「別れたあとでも友達でいられるのかもしれません」

しおりを挟む
ええっ?!

それはヨシキさんだった。
白いレンズのついた大きな一眼レフを、肩から二台ぶらさげている。

「わぁ。来てくださってありがとう。今日はよろしくお願いします♪」

ヨシキさんの方を笑顔で振り向いた優花さんは、ペロリと舌を出した。

「あは。サプライズだった? 凛子ちゃんには」
「えっ、ええ」
「ゴメンね黙ってて。
結局ヨシキさんにカメラマン頼んじゃったのよ。やっぱ一世一代の晴れ舞台の写真を残すには、最高のカメラマンでなくっちゃと思って」
「おっ。光栄だな。オレの全身全霊でソリン、、 いや、優花さんのウエディングフォト撮り尽くしてやるぜ。期待してろよ」
「ヨシキさんよろしくね。あたしたちも可愛く撮ってね」
「あ、あの、、 ヨシキさん。わたしもよろしく、お願いします、です((((*´・ω・。)」
「…」

挨拶を交わす恋子さんと桃李さんだったが、突然のことにわたしはびっくりして、言葉が出ない。
まさか、こんなところで、ヨシキさんと再会するなんて。。。

「ふたりともよろしくな。
お! 凛子ちゃん、その白のドレスも可愛いじゃない。いつもよりいっそう清楚に見えるぜ。よろしくな」

動揺していたわたしに、ヨシキさんはつきあってたことなんてすっかり忘れたみたいに、ふつうに接してきた。
そんなところはちょっと口惜しかったけど、そういうヨシキさんの性格だから、他の元カノたちとも、別れたあとでも友達でいられるのかもしれない。


 ヨシキさんの登場には戸惑ったものの、桃李さんや恋子さんといっしょに、優花さんの花嫁支度を手伝うのは、受験の気分転換にもなって、楽しかった。
なにより、一時はぎくしゃくしたみんなとの関係が、ひとつの目的に向かって、多くの困難を乗り越えながら、お互いに協力することで、修復されていく気がする。
まるで、コスプレをやっていた頃の、合わせの企画撮影みたい。
キャラの分担をしたり、ロケ場所を決めたり、撮影に合わせて衣装や小物を準備したり。
あの頃の、みんなでワイワイ騒ぎながら、なにかを作り上げようとしていた日々が、こうして優花さんの式の手伝いをしていると、自然とオーバーラップしてくる。
やっぱりいいな。
こういうのって。


優花さんの前撮りは3着。
真っ白なウェディングドレスとお色直しのカラードレス。
あと、本番では着ないけど、白無垢姿も写真で残しておくことになったらしい。
『結婚は家と家の結びつき』というが、うちは庶家とはいえ、島津家のはしくれ。
うちの両親は神前結婚式を強く望んでいたらしく、すったもんだの挙句、和装も着ることになったらしい。
兄の着る、丸に十文字の紋付羽織袴は、我が家に代々伝わるものらしい。ふだんは意識してないけど、『家』の重みは、こういうときに思い知らされる。

「優花さん、白無垢姿もすっごく似合ってますよ」

日本髪に角隠しをかぶり、鶴の刺繍をあつらえて金の扇子を持った白無垢姿の優花さんの艶姿に、わたしは感動して言った。

「そうでしょ。あんまり乗り気じゃなかったんだけど、和装も着るとテンション上がってきてさ。
やっぱ日本人の血かなぁ」
「そうですそうです (/д\*))((*/Д\)キャッ 
なんてったって、島津家と大友家っていう、九州で覇を競ってきた、由緒ある名家同士の結びつきですよ °˖✧◝(・∀・)◜✧˖
昔年の怨讐おんしゅうを乗り越えて、今ここに、戦国時代から果たせなかった両家の和合が成し遂げられたのではないでしょうか!
千秋万歳せんしゅうばんぜい! おめでたい限りですぅ☆(。・ω・。)ィェィ♪」
「あははは。確かに凛子ちゃんは名家の流れを汲んでるけど、うちは違うから。桃李さん妄想しすぎ」
「てへっ。歴女の性ですぅ(*`・ωW)b」

いつもの桃李さんぶしも戻ってきて、前撮りは順調に進んでいった。
両家の両親を目の前にしても、ヨシキさんは臆するところもなく、テキパキと並び方やポーズの指示をして、着物の裾も整えていく。やっぱりこの人、写真を撮っているときがいちばんカッコいいかもしれない。

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...