私、家から”追い出される”のではなくて自らの意思で”出ていく”んですのでそこのところわきまえてくださいね?

真城詩

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3.得と得と得

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 蒸気魔法機関車に乗って私は見たこともない風景を駆け抜ける。列車の窓を開ければびゅうと風が吹き抜けて、爽快だと思った瞬間に佐治様に注意された。

「おりん、他の乗客の迷惑にならないよう窓は閉めておきなさい」
「はっ、はい!」

 さっき、父さんと母さんと三つ子たちとお別れして黒々とした車体の蒸気魔法機関車に乗り込んだところだというのに。学校に通えるということや、宝石、お人形に異国の名産物があるという佐治様の家に行けることに緊張したり、そわそわが止まらない。その矢先に注意されてしまって私の気分は少し悲観的な方に振れる。もし私が佐治様に見限られてしまったら。もし私がそそっかしくて落ち着きのない、奉公人として使えない人間と思われてしまったらせっかく学校へ行けるようになるのも、父さんたちが許可してくれたのも全部駄目になってしまう。そんな私の考えていることは顔に出ていたのだろうか。佐治様が窓から視線を外して私を見つめる。

「おりん、少し話を聞いてもらいたいんだがいいかな?」
「ひゃいっ! もちろんです!」
「うん、まずは落ち着こうか?」

 うむ……これは初っ端からよろしくないイメージなのでは? 深呼吸をして佐治様のお言葉通り落ち着こうとする。吸って、吐いてを繰り返す私に佐治様は語りかける。

「おりん、虫のいい話だと思わないかい? 地主が村の娘を奉公に取るだけならまだしも、学校にまで通わせると言う。話だけ聞いたらいくら君の魔力量が尋常でないとはいえ、明らかにおかしい。君のお父さんがなかなか奉公にいい顔をしなかったのもそれが原因だろう。君もそのうち落ち着いたら美味しすぎる話ということに気付くと思う。そのために、僕は今から何故君を学校に行かせようと思ったか教えようと思う」

 佐治様が言うことは確かに正しい。地主が、しかも貿易商が私みたいな娘風情を引き取って学校に通わせるなんて出来すぎた話だ。
「そうだな、どこから話せばいいか……おりん、僕が君を引き取るのは僕のためなんだ。君のためにという気持ちも勿論あるけれど、大部分は自分のためなんだよ。いいかい? この国に限らず、世界では魔力量が多く魔術に長けている者が社会的に小数で、身分が高い傾向にある。例えば天皇はこの日本で最上級の魔力量を誇る。よその国とて同じだ。国の最高位やそれに次ぐ者たちは一般市民に比べて話にならないほどの魔力量を持つ。このことはしっていたかい?」
「はい、この間私が奉公に出させて頂けると決まった時に聞きました。」
「うん、それは僕の利益に繋がるんだ。何故か分かるかい?」

 私は今のお話と佐治様の利益を必死に繋げようとする。が、いくら考えても答えは出てこない。

「……わかりません」
「うん、正直に答えられるところは君のいいところだね。答えはね、華族や貴族が世襲制でその家を継ぐとは限らないところにあるんだ。つまり、君は貴族や華族に気に入られる可能性があるということだ。それか大金持ちの商人の家とかね。もし貴族様やそういった億万長者が君の才能を見てその家に引き取りたいと僕に言ってきた時に、僕は君を交渉材料に商売をする。君を奉公人として手元に置いておくことは正直給金を払っても利益が溢れ出るほどに僕にとって有利という事なんだよ」

 わかったような、わからないような。つまり私は貴族様の家なんかに引き取られる可能性があるということ? それだけはわかった気がする。それで、その時佐治様はその貴族様相手に商売をもちかけられるということか。確かにそれは佐治様に有利な商売になるだろう。それなら佐治様が私を奉公に取るというのも納得がいく。人は皆自分の損得を考えて生きるものだから、今の話は佐治様にとって得な話だ。それでもって私は働く代わりに魔術師学校に通わせてもらえる、父さんと母さんは働き手は一人失うけれど定期的にお給金という形で収入がある。皆に得な話だ。佐治様はこの話を父さんたちにしたのだろうか。尋ねてみるとその通りだとの返事がきた。
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