誤解で始まった婚約破棄が、本当の恋に変わるまで

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翌日から、私たちは密かに会合を重ねるようになった。
場所は人目につかない図書館の個室。時間は深夜。
二人で「婚約破棄劇」の台本を練る。
「まず、私が何か悪いことをしたという設定が必要ですね」
ロザリンドが羽ペンを走らせながら言った。
「舞踏会でワインをこぼす、というのはどうでしょう」
「ありきたりですが、分かりやすい」
私は頷いた。
彼女は本当に冒険小説が好きらしく、様々な筋書きを提案してくる。
「それから、冷たい言葉の応酬。『貴女のような方とは、もはや共に歩めません』とか」
「それは......少し芝居がかりすぎませんか?」
「貴族社会はドラマを求めるものですよ、エドウィン様」
彼女が悪戯っぽく笑う。
その笑顔を見て、私は驚いた。
こんな表情をする人だったのか。
今まで見てきた「完璧な令嬢」の仮面の下に、こんなにも生き生きとした女性がいたなんて。
「エドウィン様? どうかされましたか?」
「いえ......その、貴女が冒険小説を好きだとは知りませんでした」
「ああ」
ロザリンドが少し恥ずかしそうに頬を染めた。
「これは秘密なんです。公爵令嬢が冒険小説だなんて、品がないと思われてしまいますから」
「そんなことはありません。むしろ......意外で、面白い」
私は本音を言った。
彼女の目が、驚いたように見開かれた。
「エドウィン様が、そんな風に言ってくださるなんて......」
「私も、実は古文書を読むのが好きなんです。王子らしくない趣味ですが」
「それも意外です。でも......嬉しい。初めて貴方様の本音を聞けた気がします」
私たちは、初めて本当の意味で会話をした。
政略結婚の婚約者としてではなく、一人の人間として。
それから数日、台本作りは続いた。
細かい演出、セリフ回し、タイミング。すべてを綿密に計画した。
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