婚約破棄されて男装騎士になったら、私を捨てた王子が溺愛してきます。

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第二話

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自室のベッドに倒れ込んだ私は、顔を枕に埋めて声を殺して泣いた。
涙が止まらない。胸が張り裂けそうだ。
「退屈だ」
レオンハルト様の冷たい声が、何度も何度も頭の中で響く。
あんなに優しかったのに。婚約していた頃は、私を見つめる眼差しも、語りかける声も、全てが温かかった。なのに今日、謁見の間で私を見る目は、まるで価値のないゴミでも見るようで――。
「エリアーナ」
ドアをノックする音。母の声だ。
「入って」
声が震える。返事をするのも精一杯だった。
母セリーナが静かに部屋に入ってきて、私の隣に座った。背中を優しく撫でてくれる。その温もりで、また涙が溢れた。
「泣いていいのよ」
母の声が染みる。
「お母様……私、何が悪かったの? 一体何が……」
「あなたは何も悪くないわ」
母の手が私の髪を撫でる。
「王子殿下の気が変わってしまったのよ。それだけのこと」
それだけのこと。
そう、それだけのことで、私の人生は壊された。
婚約者の気まぐれで、私は社交界の笑い者になった。あの謁見の間にいた貴族たちの冷笑が忘れられない。
「侯爵令嬢なのに」
「殿下に飽きられたなんて」
「きっと何か問題があったのよ」
ひそひそと囁かれる声。刺さるような視線。
くやしい。
くやしくて、くやしくて、たまらない。
「大丈夫。時間が癒してくれるわ」
母は慰めてくれる。でも、私の心は晴れない。この屈辱を、ただ忘れることなんてできない。
涙を拭いて、ゆっくりと起き上がった。窓に歩み寄る。
カーテンを開けると、遠くに王宮が見えた。
夕日に照らされて、白い城壁が赤く染まっている。あの中に、レオンハルト様がいる。私を捨てた人が。
「お母様」
振り返らずに言った。
「私、このまま終わりたくない」
「エリアーナ……」
「必ず見返してやる。殿下を、社交界の連中を、全員」
窓ガラスに手をついた。冷たい感触が、私の決意を固めてくれる。
王宮を見つめたまま、心の中で誓った。
絶対に、屈しない。
絶対に、諦めない。
この屈辱を晴らすためなら私は――。
母は何も言わなかった。ただ、私の背中を見つめている気配がした。
夕日が沈んでいく。王宮のシルエットが闇に溶けていく。
でも私の心に灯った炎は、消えない。
復讐の炎が、静かに、確かに、燃え始めていた。
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