はりぼてスケバン

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「え？え？え？……えー！？」
それ以外、彼女の口から出せるものはなかった。

華子はその後、教室に戻った。
心司の衝撃的な言葉のせいで、この時の彼女にはあまり記憶がなかった。


「……。」
放心。

「ね、姐さん……？」

「……鼬原？どうしたんだ？」

流石に彼女の異変に気づく。
丸雄と亥玄も、それほど鈍感ではない。
丸雄だけでなく、珍しく亥黒も心配そうな表情を浮かべている。

もうこうなってしまえば言ってしまった方が楽なのだろう。
全てをぶちまけることが出来たら、この胸のつっかえもきっと消えるだろう。
両者を見る華子。

整った顔。
二人のその眉が、垂れている。

不安。
そして、心配。
そのような気持ちが秤知れる。
しかし、そんな彼らにどうすることも出来ない。

「……ごめん、もうすぐ言えると思う……。だから……その……。」
それまで待っていてほしい。
そう言いたかった。
しかし、華子の口は、言葉を紡ぐことは出来なかった。


時は進み、放課後。
いよいよそれは起きた。

暫く使われていないだろう放送室から校舎のありとあらゆる場所へ放送が入る。
放送主は、心司だ。

「あー、テステス……黒校生徒諸君！聞こえてるかなー？まぁ、聞こえてても聞こえてなくともここには返事は届かないんだけどねー。」
スピーカーから聞こえる彼の声は、華子にとっては相変わらずどこか間抜けな印象だ。
しかし、それまで騒々しかった生徒達が静かになり、それを聞き逃すまいとしていた。

「……生徒会長さん、どうしたんっすかね？」

「き、きっと大事な話だよ、このまま聞いてよう？」
心司の出方がまだ分からない。
その為、こちらから何かを言うわけにはいかなかった。

「まぁ、そうっすね。」

「この後の用事、全部キャンセルして体育館に集まってほしいんだよねー。」
心司の言葉がさらに続く。
生徒達の予定など全く気にしていない傍若無人な物言いだ。

「……？どういうことだ？」
ボソリ。
今度は亥玄だった。
自然と漏れた呟きは、華子の耳に届いた。

突然のことで不意を突かれた。
その為、皆それを聞いていた。
しかし、それぞれが自身で考えられるようになっていた。

その結果、どうなったか。
各々、帰宅する準備をし出したのだ。

「あ、あの……。」
このままではまずい。
皆が帰ってしまう。
モゴモゴと、華子が声を出す。