はりぼてスケバン

あさまる

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これからの話は、一人でも多くの生徒達に聞いてもらわなければならないはずだ。
しかし、上手く声が出ない華子。

「……あいつらは帰るのか……。なら、俺達も帰るか。」
そう言ったのは、亥玄であった。
その言葉は、華子達へ向けられたものだ。

「うーん……生徒会長さんの話って多分大事なことだと思うんすけど……皆帰るなら俺らも帰るっすか?」

「ちょ、ちょっと待って、もう少し、もう少しだけ待って!その……とにかくもう少し!」
慌てて二人を静止する華子。

「……鼬原?」

「姐さん?本当にどうしたんっすか?さっきからおかしいっすよ?」

彼女の慌てように、亥玄だけでなく、丸雄も反応する。
それほどに、彼女の様子はおかしかったのだ。

華子の予想が合っていれば、少しでも多くの生徒達に聞いてもらわねばならないだろう。
全員からの同意が得られるかどうかは分からない。
しかし、それでも話さなければならない。
そうとなれば、しなければならないことは決まっている。

「い、今は私のことを信じて。二人も他の人達が帰るの止めて……ほしい……。」

無根拠。
そして、説明もない。
ただ信じてほしいと言うしか出来ない。
恐らく、華子自身が彼らの立場ならこんな要求を飲めないだろう。
それほどに、この言い草は無理難題であると、彼女自身も分かっていた。

「……あぁ、分かった。他の奴らを止めれば良いんだな。」

「なるほど、よく分からないけど了解っす!」

「……え?え?」
駄目で元々。
そのはずであった。
しかし、彼らのまさかの反応に、困惑する華子。

「ボサッとするな、言い出したお前がそんなことでどうする?手伝うが、お前もやれよ?」

「そうっすよ!姐さんも動いて下さい!」

「あ、う、うん、分かった!二人とも……本当にありがとう……!」

三人は各々動き出した。
この教室だけではない。
他の教室や、上級生の教室まで可能な限り留まるようにと伝えて回った。


結果。
結局、何人かは帰ってしまった。
しかし、それでも残っている者達はいた。

生徒達は体育館へと向かっていた。
華子達も彼らとともに向かうのだった。


「……でも、どうして二人は協力してくれたの?」

「いや、姐さんがあいつらを止めてほしいって言ったからじゃないですか。」

「まぁ……俺も似たようなものだな……。お前は他のやつらとは違うから。」
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