はりぼてスケバン

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「何してんの、早く来なよ。」
動き出したのは、自分だけ。
三花が苛立ちながら口を開く。

「もうあんたの言うことなんて聞かないから。」

「……は？」

「分かんないの？あんたはもうお払い箱なの。」

「何それ、今まで仲良くして上げてきたのに……。」

「仲良くして上げてきた……？あんたそれ、本気で言ってるの？」
三花へ投げ掛けられた言葉。
そして、周囲の女子生徒がクスクスと笑っている。
皆が彼女を見下しているような視線を送っている。

「何ヘラヘラしてんのよ……。」

「はぁ……こんなに馬鹿だったとはね……。もう良い、皆行こう？」
その言葉を皮切りに、皆三花から離れて行った。

三花の言葉を無視し、館内から出ていこうとしなかった。
しかし、女子生徒達は今度は彼女を置いて出ていってしまった。


「な、何よ……くそっ……！」
一人取り残された三花。
吐き捨てるようにそう言うと、彼女らに一足遅れて館内から出ていくのであった。


「……あっちはあっちで大変そうっすねー……。」
苦笑い。
彼女らのやりとりを途中から見ていた丸雄が呟いた。

三花がこのまま黙っているわけがない。
しかし、今や彼女には力もなければ着いてくるような者もいない。
出来ることなどたかが知れているだろう。

「……藤柴くん？」
彼の異変に華子が気づいた。

「あっ、いや、何でもないっすよ、姐さん。」
下手に三花のことを言えば余計な心配をさせてしまうだろう。
丸雄は微笑んでそう言うのであった。

「そ、そっか……。」

「さ！帰ろうっす！」

「え？あ、うん……。えっと……皆さん、失礼します……。」

かくして、黒龍高校の番長が華子になったと、周知となった。
それはやがて、校内だけでなく、周辺にも知れ渡ることとなる。
つまり、白辰高校にもその話が伝わるということだ。


「……こいつが新しい黒高の頭……？」

「そのよう……です……。」

白辰高校。
その空き教室。

番長の辰美。
そして、蝶華を含めた幹部が集まっている。

数枚の写真。
様々な角度、そしてどれも視線の合っていない。
盗撮であることは明白であった。

「名前は鼬原華子、今年入学した者です……。出身中学は休みがち……理由は病欠、これは嘘ではないようです。」

今年入学した。
つまり、一年生ということだ。
病弱な女子生徒ということもだが、新入生である彼女が番長になったという事実に動揺を隠せずにいた。