甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「あ、お、同じ制服ですね……。あはは……。」

「え?ど、どうも……。そ、そうですね……。」
初対面の者に急に話しかけられたからだろうか。
困惑する少女。

困惑してしまっている。
そんなこと、当たり前だろう。
しまった。
やってしまった。

「……えっと、怪しい者ではないです。その……あなたが後を追っていた子のクラクメイトです。」
苦笑いでそう言う真優。

何を言えば良いのだろうか。
慌ててまう真優。
その結果、彼女自身もよく分からないことを口走ってしまうのであった。

怪しい者ではない。
そんなこと、強いて言えば、彼女が真優に言うべきことだろう。
しかし、逆に真優自身がそう言ってしまったのだ。

「……え?あっ、いや、私こそ、怪しい者では……な、ないよ?」
あはは。
苦笑いをする少女。

その表情は、困っている。
それは真優から見ても明らかであった。

おかしな空気。
それが、二人の間に流れていた。

「あっ、ごめん!海部江さん動き出したからまた今度ね!」

「え?雨枝?……あっ、そっか、海部江さんか……。わ、私も行きます!ちょっと待って下さい!」

こうして二人はそのまま翔子達の後を追い、カラオケ店へ入って行くのであった。


キョロキョロ、キョロキョロ……。
辺りを見渡す真優。

カラオケ店になど、初めて入った。
どんなところなのか、あまりよく分かっていない。
勝手が分からないのだ。

「……ほら、行くよ。」
そんな彼女へ向けられた声。

「……え?」

「早く早く。部屋とったから。」
手招き。
少女が真優を呼んでいた。

「……。」
まごついてしまっている真優。

目の前にいる少女。
彼女は、翔子のストーカーなのかもしれない。
それに、名前すらもしらない。

「もう!あの子のこと心配なんでしょ!?早く!」
しびれを切らした少女。
真優の腕を引っ張り、ずるずると引きずって行くのであった。


密室。
見知らぬ人物と二人きりになってしまった。

どうしよう。
だらだらと汗が流れる真優。

「……名前。」

「え?」
名前?
どういうことだろう?

「名前教えてよ。私は風野。風野卯佐子。二年生だよ。歳上なんだ、意外だなーなんて思わないでね。」

「あ、あぁ……。えっと、雨枝です。雨枝真優。……その、海部江さんのクラスメイトです。」

「そっか。あの子のクラスメイトなんだね。」
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