甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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つい昨日までは翔子の周りにいた。
それが今は見向きもしない。

少し視線を動かす。
美成実を見る真優。
苦笑いしながら彼らの対応をしている。

良かった。
これならば彼女が自由になるのはまだ先のことだろう。


「翔子さん……。」
翔子の座る席へ向かう真優。
そして、未だ帰り支度をしている彼女を、小さな声で呼んだ。

「あっ、ま、真優ちゃん……。」

「か、帰りましょうか……。」

「う、うん……そうだね。」

卯佐子が間にいたことで、多少は会話が出来ていたのかもしれない。
しかし、彼女がいなくなった今、翔子と真優は初めて話した時とさほど変わらないぎこちないものになってしまっていた。


「あっ……。」
彼女らの背中。
それを見て、声が出る美成実。

「どうしたの、弓浜さん。」

「翔子ちゃん達、気になる?」

「仕方ないよー、翔子ちゃんも真優ちゃんも可愛いもん、見蕩れちゃうのも無理はないよ。」

「……え?」
翔子ちゃん?
可愛い?
彼女らの言葉に戸惑う美成実。

中学生時代。
その時も、翔子は人気だった。
しかし、それは異質なものであった。

作り上げられたカリスマ性。
アイドル性。

今の扱いは、その真逆だ。
まるでゆるキャラのような扱いであるのだ。

なぜそうなった?
なぜ受け入れられた?
なにがあった?

美成実が知らない間に、翔子を取り巻く環境は劇的に変化していた。
なぜそうなったのか。
彼女はその答えを知りたかった。

彼女に聞く必要がある。
そう思った美成実。

「……?どうしたの、弓浜さん?」

「あっ、いや……その……。」

席から立ち上がり、彼女を追おうとする。
しかし、周囲が邪魔で動くことが出来なかった。

上手く言えれば良かった。
翔子とは、同じ中学校出身だ。
彼女とは親友だった。
そう言えれば、きっと道を開けてくれただろう。
しかし、言えなかった。

後ろめたい。
端的に言えば、そんな気持ちがあったのだ。

故意ではない。
しかし、彼女が虐められる理由を作ってしまったのは美成実自身だ。
そんな美成実が、翔子と今さら仲良くなれるわけがない。


彼女がいる、この瀬部高等学校に来たのはたまたまだ。
全く想像してなかったものだ。
偶然だ。
それだからこそ、運命だと思った。

神が与えてくれたチャンス。
翔子ともう一度仲良くなれる機会。
そう思っていたのだ。
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