はりぼてスケバン弐

あさまる

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黒龍高校へ進学した華子。
彼女は今までも、これからも、自分よりも下の存在であると思っていた。
しかし、いつの間にか亥玄のような者とも仲良くなっていた。
そして、今では彼女の通う高校の評判は良くなっていっているのだ。

不愉快かどうか。
そう聞かれると、彼女の気持ちは決まっていた。

「……ふふふ、もう答えなくて良いよ、分かったから。」
微笑みながら言う巳白。
彼女の気持ちは彼にはお見通しであった。

「……あ。」
そうか。
彼と自分は一緒なんだ。
秋姫は、目の前にいる巳白と自身を重ねてしまった。

「実は今、考えていることがあるんだ。協力、してくれるよね?」

「……。」
彼の言葉に拒否することなど出来なかった。
秋姫は、無言のままであったが、首を縦に振るのであった。

その小さく不穏な渦は、少しずつ大きくなっていくだろう。
しかし、この時にはまだ誰も気づくことは出来なかった。
華子に至っては、このような企みなど夢にも思わなかった。


数日後。
町外れにあるとある廃墟。

こんなところに用事があるような者などそうはいないだろう。
しかし、そんな場所であるここに、多くの者が集まっていた。
その中には、巳白と秋姫もいた。

他にも数名の白百合高校の生徒達がいた。
しかし、それだけではない。
彼ら以外にいる者達。
それは、白辰高校の生徒達と、黒龍高校の生徒達であった。

白百合高校と、その両校の生徒達が同じ場所に集まっている。
本来なら、あり得ない光景だ。

華子の活躍。
彼女のそれによる良いこともあれば、悪いこともある。
その悪いことが、これだ。

「金はいくらでも出す。滅茶苦茶にしろ。」
巳白が全体へ向けて言う。
非常に端的なものだ。

「黒高の頭はともかく、うちの頭と鯉崎はどうしようもないぞ?」
白辰高校の生徒の一人が彼へ言う。

はなから華子など眼中にない。
辰美、そして亥玄の名前だけ。
つまり、その二人以外は問題がないということだ。
それほどに、ここにいる者達の実力と頭数があるということであった。

ため息。
そんなことも分からないのか。
そう言いたげな巳白。
そして、言葉を発する。
「だから、金なら出すと言っただろ。それを使うなりすれば良いだろ。」

「……。」
巳白の言い方が気に食わなかったのだろう。
無言で彼に詰め寄る。
しかし、双方睨み合いになるだけであった。
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