はりぼてスケバン弐

あさまる

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数に物を言わせればどうとでもなると考えていた。
そのはずであった。

楽して稼げる。
簡単で、高額なバイト。
一石二鳥。

その程度の認識であった。
しかし、現実は違った。

あまりにも強過ぎる。
黒龍高校は亥玄を、白辰高校は辰美と蝶華を注意していれば良い。
それだけで良かったはずだ。
しかし、結果は惨敗。

あまりにも実力に差があり過ぎる。
話が違う。
こんなことになるなど知らなかった。
こんなことになるならそもそも引き受けることはなかった。

後悔先に立たず。
しかし、これ以上奴らに付き合う必要はない。
これ以上黒龍高校、そして白辰高校の生徒達と関わることは得策ではない。

撤退。
それ以外に選択肢はない。
しかし、それだけでは駄目だ。
この苛立ちだけはどこかで解消しなくてはならない。

どうすれば良いか。
そんなもの、簡単だ。

「一言言ってやらないとな……。」
ニヤリ。
思い付いた。

取り出したのは、自身の携帯電話。
通話。
相手は三花だ。

雇い主である彼女への電話。
何度かのコール。

「……何?」
露骨に機嫌の悪そうな声。
その態度が更に苛立たせる。

「話が違う、俺らは抜けさせてもらう。」

「……はぁ?あんたらまでそんなこと言うの?」
その言葉に、三花の機嫌が更に悪くなる。

あんたら。
つまり、他の者達も撤退していっているのだろう。

無理もない。
ただの高校生を少し痛い目に逢わせる。
その程度の内容が、この有り様だ。
返り討ちだ。

あんなもの、関わらない方が良いに決まっている。
どんな馬鹿でも分かる。

「当たり前だ馬鹿。」
吐き捨てるような言い方。

「……あ、あっそ。」
三花も負けていない。
気だるそうな声。
しかし、そこに余裕はない。

「お前のこと、奴らに言ってやったからな。」

「……は?あ、あんた何を……!?」

彼女の言葉を最後まで聞かずに強制的に通話終了。
一矢報いることが出来た。
後は彼女の電話番号を着信拒否にするだけだ。

「勝手にやってろ馬鹿が……。」
ボソリ。
そう呟くと、彼は街中へと消えて行った。


「どいつもこいつも使えないっ!ふざけるなっ!」
ところ変わり、そう怒鳴るのは三花であった。
先ほど通話が終了してからずっとこの調子だ。

こんなはずではなかった。
こんなことになるはずではなかったのだ。
全てが思い通りにいかない。
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