はりぼてスケバン弐

あさまる

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電灯が点く。
そこに虫が群がっている。
華子達が気がついた頃には、もうそんな時間になってしまっていた。

華子達三人の前に立ち塞がる者。
それは、彼女らの良く知る者であった。
そして、それと同時に可能な限り会いたくない者でもあった。

華子の腸が煮えくり返る。
丸雄の脳裏に過るトラウマ。
亥玄の緊張感が高まる。
それぞれで違う態度だが、周囲の空気が張り詰めたのは確かであった。


「……まさかと思うが……お前、一人でこの状況をどうこう出来ると思ってないよな?」
最初に口を開いたのは亥玄であった。

黒龍高校の中でも有数の実力者。
そんな彼だから言えることだ。

華子の前には、彼女を庇うような形で前に出る丸雄。
彼の姿が華子の視線の先に入る。
微かに震えている。

そして、その更に前に亥玄がいる。
二人とも、臨戦態勢を取っている。

目の前の存在。
それを、明確に敵と認識したということだ。

「ね、姐さん、いつでも走る準備を……。」
ボソリ。
彼女にだけ聞こえるように小さく呟く丸雄。
その視線は一点を捉えている。

「……二人とも、ありがとう。でも、大丈夫だよ。」
二人を押し退ける形で華子が歩く。
ゆっくり、ゆっくりとしかし確実に目の前の障害へ近寄って行く。

「っ!?姐さん!下がって!」

「お、おい!戻れっ!」

彼女の予想外の行動に、慌てる二人。
しかし、当の本人である華子は依然として立ち止まる様子はない。

「あんたの……あんたのせいで!私はっ!」
華子の前にいる者。
三花だ。
鬼気迫る顔で、声を荒らげている。

「……自業自得だけど……良いよ、おいで。」
ため息。
呆れてこれ以上言葉が出ない。
依然として余裕な華子である。

「黙れっ!この……!」
走り出す。
そんな彼女の手にはナイフ。

明確な敵意。
そして、悪意。
そんなものが一直線に華子へと襲いかかる。

「……なんだ、この程度か。」
先ほどのようなため息。
しかし、そこにはそれまで以上の呆れが含まれていた。

一蹴。
文字通り、足で彼女の手元のナイフを弾く。
宙を舞うそれは、三花から遠くへと飛んで行った。

「ね、姐さん……?」

「……おい。」

華子の予想外に機敏な動きに驚きを隠せない丸雄と亥玄。
しかし、驚いていたのは彼ら二人だけではなかった。

「……ほら、おいでよ。」
挑発。
人差し指をクイッと動かす華子。
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