はりぼてスケバン弐

あさまる

文字の大きさ
上 下
71 / 118
6

2

しおりを挟む
「……っ!お前ーっ!」
見事に乗る。
頭に血が昇り、ただ我武者羅に走り出す。

滅茶苦茶なフォームだ。
今にも転んでしまいそうなそれは、華子にとって、避けるのは容易かった。
そして、それと同時に今の華子には足を引っ掛けて転ばせることも可能であった。

派手に、そして無様に転ぶ三花。
誰も彼女のことを心配していない。
別のところに気持ちが行ってしまっていたのだ。

なぜ華子はこれほど動けるのか。
亥玄や、他の生徒達なら納得出来る。
しかし、不良などとは無縁だったはずの彼女だ。

きっと喧嘩などしてこなかったはずだ。
だからこそ、疑問だったのだ。

「……は?え?何……が……。」
ワンテンポ遅れてのリアクション。
地面に伏しながら出る三花の声は、なんとも情けないものであった。

「ねぇ、あんた、私が何も準備してなかったと思ってたの?……呆れた。」
心底見下した目。
そんなものを彼女へ向ける華子。

「……っ!」
見たことのない鋭いそれに、言葉がでない。
視線を逸らしてしまった。

敗北。
彼女には勝てない。
その屈辱を、三花は受け入れざるを得なかった。


なぜ華子がこれほどの実力を持っているのか。
その秘密。
それは、彼女の現在の交流関係にヒントが隠されていた。

黒龍高校。
そして、白辰高校。
両校の同盟が結ばれてからしばらく経過した。
その間、彼女も秘密裏に動いていたのだ。


時は戻り、数週間前。
ある日の黒龍高校の校庭。
華子はとある白辰高校の生徒と会っていた。

「じゃあ、今日からよろしくお願いしますっ!」
学校指定の体操着。
そんなものに身を包む華子。
その姿、そして態度はやる気に満ち溢れている。

「……うん、よろしく……は、華子……さん。」
未だに彼女の名前を呼ぶことに抵抗があるのか。
蝶華の言葉はぎこちない。

「もう!いい加減慣れてほしいな……。よしっ!全力で行くからね、蝶華ちゃん!」
そう言うと、華子は全速力で目の前の人物へ走り出した。

彼女が会っていた人物。
それは、蝶華であった。

同盟が結ばれた当日。
彼女と連絡先を交換していた。
その後、何回か会っていたのだ。


「……え、えっと……。」

「あ、あはは……大丈夫。大丈夫だから……!その……大丈夫と思わないかもしれないけど、大丈夫だからっ……!」
慌てて華子がフォローのつもりの言葉を言う。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

わたし

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

異世界に跳べない俺は今日も近所の居酒屋でアルバイトをする。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

社会の落ちこぼれから最強パーティーのリーダーになるお話

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:8

処理中です...