『婚約破棄はご自由に。──では、あなた方の“嘘”をすべて暴くまで、私は学園で優雅に過ごさせていただきます』

佐伯かなた

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プロローグ

一話

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「フォーリア・レーズワースッ! 今、この時をもって……お前との婚約を破棄するッ!」

 ──ああ、こうなることは分かっていました。

 私は瞼を閉じ、内心でそう呟いた。

「先日、ここにいるリリシア嬢を『旧西校舎の階段から突き飛ばす』などと……悪辣極まりない行為を働いた者が居るという話が俺の耳に入った」

 そう、まるで怒りに声を震わせる──演技・・をしながら、彼は白い手袋を付けたままの指で私を差す。

「レーズワース、お前のことだッ!」

 『王立魔導学園中等部』の三年生が卒業式を終えて暫くして、エルモード侯爵との繋がりが太い家のみが招待を受けることのできるパーティーが開催された。ここには、婚約者である……いや、婚約者であった私を含めた数々の、所謂大貴族と呼ばれる者達が集まっている。

「まるで身に覚えがありませんが、そのような戯言を私に吐くなど……アイン様は一体誰の世迷言に耳を傾けていらっしゃったのですか?」

 アイン様……エルモード侯爵令息の傍らで佇むリリシアという伯爵令嬢は、彼から貰ったであろう特有の紋章が縫われた黒のシュシュで金色の長髪を纏めている。この状況で私の視線に気を向けることなく無表情でいられるとは、よほど面の皮が厚いのだろう。

「ふん……お前が何と言おうと、事実は変えられない」

「そうですね、それがアイン様の言う通り事実であるならば……ですが」

「いいかレーズワース……いや、フォーリア」

 蒼玉の瞳が私に近づいてくる。私に言い聞かせるような口調で、そうニヤリと口角を上げると──

「──これは、事実・・だ」

 彼はこれが──覆らない、変えることのできない決定であるということを突きつけてきた。

 一瞬、動揺から後退りをしそうになってしまったが、気圧されないように睨み返す。私はついでに群衆を一瞥してみる。

 ──なるほど。

 会場に響き渡るほどの声で婚約破棄が言い渡されたのにも関わらず、やけに静かだった事に違和感を覚えていたのだが……これで・・・納得した。
 まるで驚いてすらいない彼等は……アイン様によって招待され、アイン様から全てを聞かされ、アイン様と同じように演じていたのだろう。

 これは茶番だった、初めから何もかもが決まっていたのだ。
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