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第17話 跪く玉座、英雄の血統
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朝靄も晴れてきた 朝。
宿の前に現れたのは、黄金の獅子の紋章が刻まれた、一般人では乗ることも許されない「王家専用馬車」でした。
重厚な車輪の音を響かせ、馬車は王城の深く、威厳に満ちた玉座の間へと滑り込みます。
玉座の間。
そこには、二十歳という若さで即位しながらも、その卓越した指導力で知られる女王エレオノーラが待っていました。
扉が開かれ、ディオンたちが一歩足を踏み入れた瞬間。
信じられない光景が広がりました。
玉座に座る女王以下、居並ぶ王族、騎士団幹部、そして高官たちのすべてが、五人の若者に向かって一斉に跪いたのです。
「英雄たちのご家族に、今は天におられる英雄たちに王家として、国として、心よりの感謝を捧げます」
エレオノーラの鈴を振るような、それでいて芯の通った声が静寂に響きます。
女王が自ら頭を下げるなど、建国以来の異常事態でした。
彼女は顔を上げると、真っ直ぐにディオンを見つめました。
「宿命の真実は、大司教より伺っていました。……ディオン殿、あえてお尋ねします。あなた方は、その過酷な身の上を引き受け、魔王アニマ=ゼロを倒してくれるのでしょうか?」
静寂が場を支配します。
ディオンは一歩前に出ました。
三日前の涙は、もうそこにはありません。
「……父も母も、僕たちを『生かす』ために命を繋いでくれました。僕たちが魔王を討つことは、父さんたちの愛を証明することでもあります。……陛下、僕たちは戦います。僕たちの代で、この呪いを終わらせるために」
その力強い言葉に、女王の瞳が微かに潤み、そして深く頷きました。
「心強い言葉です。我が国も、出来る限りの力を貸し出しましょう」
エレオノーラは立ち上がり、具体的な支援を告げ始めました。
「まず、聖図書館の利用を許可します。この期間、国家を挙げて調べ尽くしましたが、未だ興味深い記述が残っています。現在はヴァルディス大司教が特別対策班を率いて籠もっておりますので、直接指示を仰いでください」
「そして、旅の手段です。皆さんは、飛空艇をご存知ですか?」
それは、魔導推進ルビーを動力源とし、大空を駆ける魔導科学の結晶にして最先端の船。
王都『ルーン・ヴィーク』、蒼海連邦『マリノ・ガルド』、黄金砂国『サハラ・シュタール』を結ぶ、最高クラスの名声を持つ者しか乗れぬ三大国定期連絡航路。
護衛機を含む四隻編成の艦隊は、一ヶ月に一度しか飛ばぬ特別な翼です。
続いて女王は、傍らに控える青年へ視線を送った。
「これよりの支援の差配、我が弟レオンに行わせましょう」
女王の弟、レオン・フォン・ルーン・ヴィークが静かに歩み出た。
彼はエリカと魔導学園の同級生であったが、今は一人の王族として、私情を排した厳格な態度で一行へ礼を尽くす。
「レオン・フォン・ルーン・ヴィークにございます。陛下に代わり、旅の路銀として金貨6,000枚、ならびに飛空艇便の永久通行証をここに」
レオンの手により、全員の衣服に勲章が添えられる。
そして、白亜の壁に封印が施された戦略級魔導武器が運び込まれた。
「この徽章により、定期飛空挺便に乗る権利が永久に与えられます。」
「路銀として金貨6,000枚を。また、王族御用達の武器屋へ向かってください。魔法詠唱に支障をきたさぬよう、魔導職のライナス殿とエリカ殿には、金属を排した最高級の魔導服と杖を揃えさせます」
レオンは傍らの従者に目配せし、白亜の壁に封印が施された武具を台車に乗せて持ってきました。
「これこそ、我が王家に伝わる戦略級魔導武器です。全ては魔王を倒す英雄のために」
世界長老樹の弓
物理的な矢を必要とせず、使い手の魔導力を光の矢として放つ。
ただし、高度な古代魔導エルフ文字の術式を理解せねば弦を引くことすら叶わぬ至高の弓。
聖遺杖アステリア
古代言語で「王たる乙女」の意味
星の輝きを宿す杖。
外からのあらゆる影響から精神の安定を保ち、高度な魔法行使を劇的に補助する。
「ディオン殿、まずはこの『世界長老樹の弓』を。物理的な矢を必要とせず、使い手の魔導力を光の矢として放つ伝説の武具。古代魔導エルフ文字の術式ゆえ習得は困難を極めますが、いつか必ず、あなたの魔王討伐の使命を補完する至高の翼となるでしょう」
淡々と説明を続けていたレオンだったが、『聖遺杖アステリア』に視線をうつしたとき、レオンの言葉は止まった。
レオンは一瞬、言葉を呑んだ。 王族としての義務、周囲の視線。
それらすべてを置き去りにするように、彼はエリカの瞳を真っ直ぐに見つめた。
その眼差しには、学園の廊下で彼女を密かに守ろうとしていた、あの日の少年の面影が宿っていた。
「……そして、エリカ殿。この杖を」
レオンの声が、わずかに、しかし熱く震えた。
「学園で共に学んでいたあの日、君がどれほどの痛みと闇に耐えていたか……私は知っている。君を襲うあの呪いを、私はただ隣で見守ることしかできなかった。……エリカ、このアステリアは君の心を凪へと導く。君の中にいる魔王を少しでも抑え、少しでも君が君らしくあるための静寂を、私から君に贈らせてほしい」
淡い初恋の残り火と、かつての無力さへの悔恨。
それらすべてを込めた言葉に、玉座の間は一瞬、儀礼を超えた静謐な空気に包まれた。
レオンは言葉を続けます。
「金属防具に関しては、後に向かわれる『サハラ・シュタール』こそが至高。まずは我が国で、その身を護る刃と翼を手に入れるのです」
そして、レオンが一礼をして下がると同時に女王が続けました。
「残り二大国をまわりなさい。常人には渡せない武具の支援を約束しましょう。その代わりと言っては何ですが、それぞれの国で大きな厄災を抱えています。それを出来る限りで良いので助けてください。」
「そして弓に関しては謝罪します。大いなる神の弓ですが、古代魔導エルフ文字という難解な言語の習得には膨大な時間を必要とするでしょう。古代魔導エルフ文字は伝承が途絶えて久しい特殊なもの。既存の魔導言語より魔力が高いのですが、世界に何人といない『古代魔導エルフ言語』の魔導言語学者から習得するしかありません。世界中のエルフの森を巡ると良いでしょう」
宿の前に現れたのは、黄金の獅子の紋章が刻まれた、一般人では乗ることも許されない「王家専用馬車」でした。
重厚な車輪の音を響かせ、馬車は王城の深く、威厳に満ちた玉座の間へと滑り込みます。
玉座の間。
そこには、二十歳という若さで即位しながらも、その卓越した指導力で知られる女王エレオノーラが待っていました。
扉が開かれ、ディオンたちが一歩足を踏み入れた瞬間。
信じられない光景が広がりました。
玉座に座る女王以下、居並ぶ王族、騎士団幹部、そして高官たちのすべてが、五人の若者に向かって一斉に跪いたのです。
「英雄たちのご家族に、今は天におられる英雄たちに王家として、国として、心よりの感謝を捧げます」
エレオノーラの鈴を振るような、それでいて芯の通った声が静寂に響きます。
女王が自ら頭を下げるなど、建国以来の異常事態でした。
彼女は顔を上げると、真っ直ぐにディオンを見つめました。
「宿命の真実は、大司教より伺っていました。……ディオン殿、あえてお尋ねします。あなた方は、その過酷な身の上を引き受け、魔王アニマ=ゼロを倒してくれるのでしょうか?」
静寂が場を支配します。
ディオンは一歩前に出ました。
三日前の涙は、もうそこにはありません。
「……父も母も、僕たちを『生かす』ために命を繋いでくれました。僕たちが魔王を討つことは、父さんたちの愛を証明することでもあります。……陛下、僕たちは戦います。僕たちの代で、この呪いを終わらせるために」
その力強い言葉に、女王の瞳が微かに潤み、そして深く頷きました。
「心強い言葉です。我が国も、出来る限りの力を貸し出しましょう」
エレオノーラは立ち上がり、具体的な支援を告げ始めました。
「まず、聖図書館の利用を許可します。この期間、国家を挙げて調べ尽くしましたが、未だ興味深い記述が残っています。現在はヴァルディス大司教が特別対策班を率いて籠もっておりますので、直接指示を仰いでください」
「そして、旅の手段です。皆さんは、飛空艇をご存知ですか?」
それは、魔導推進ルビーを動力源とし、大空を駆ける魔導科学の結晶にして最先端の船。
王都『ルーン・ヴィーク』、蒼海連邦『マリノ・ガルド』、黄金砂国『サハラ・シュタール』を結ぶ、最高クラスの名声を持つ者しか乗れぬ三大国定期連絡航路。
護衛機を含む四隻編成の艦隊は、一ヶ月に一度しか飛ばぬ特別な翼です。
続いて女王は、傍らに控える青年へ視線を送った。
「これよりの支援の差配、我が弟レオンに行わせましょう」
女王の弟、レオン・フォン・ルーン・ヴィークが静かに歩み出た。
彼はエリカと魔導学園の同級生であったが、今は一人の王族として、私情を排した厳格な態度で一行へ礼を尽くす。
「レオン・フォン・ルーン・ヴィークにございます。陛下に代わり、旅の路銀として金貨6,000枚、ならびに飛空艇便の永久通行証をここに」
レオンの手により、全員の衣服に勲章が添えられる。
そして、白亜の壁に封印が施された戦略級魔導武器が運び込まれた。
「この徽章により、定期飛空挺便に乗る権利が永久に与えられます。」
「路銀として金貨6,000枚を。また、王族御用達の武器屋へ向かってください。魔法詠唱に支障をきたさぬよう、魔導職のライナス殿とエリカ殿には、金属を排した最高級の魔導服と杖を揃えさせます」
レオンは傍らの従者に目配せし、白亜の壁に封印が施された武具を台車に乗せて持ってきました。
「これこそ、我が王家に伝わる戦略級魔導武器です。全ては魔王を倒す英雄のために」
世界長老樹の弓
物理的な矢を必要とせず、使い手の魔導力を光の矢として放つ。
ただし、高度な古代魔導エルフ文字の術式を理解せねば弦を引くことすら叶わぬ至高の弓。
聖遺杖アステリア
古代言語で「王たる乙女」の意味
星の輝きを宿す杖。
外からのあらゆる影響から精神の安定を保ち、高度な魔法行使を劇的に補助する。
「ディオン殿、まずはこの『世界長老樹の弓』を。物理的な矢を必要とせず、使い手の魔導力を光の矢として放つ伝説の武具。古代魔導エルフ文字の術式ゆえ習得は困難を極めますが、いつか必ず、あなたの魔王討伐の使命を補完する至高の翼となるでしょう」
淡々と説明を続けていたレオンだったが、『聖遺杖アステリア』に視線をうつしたとき、レオンの言葉は止まった。
レオンは一瞬、言葉を呑んだ。 王族としての義務、周囲の視線。
それらすべてを置き去りにするように、彼はエリカの瞳を真っ直ぐに見つめた。
その眼差しには、学園の廊下で彼女を密かに守ろうとしていた、あの日の少年の面影が宿っていた。
「……そして、エリカ殿。この杖を」
レオンの声が、わずかに、しかし熱く震えた。
「学園で共に学んでいたあの日、君がどれほどの痛みと闇に耐えていたか……私は知っている。君を襲うあの呪いを、私はただ隣で見守ることしかできなかった。……エリカ、このアステリアは君の心を凪へと導く。君の中にいる魔王を少しでも抑え、少しでも君が君らしくあるための静寂を、私から君に贈らせてほしい」
淡い初恋の残り火と、かつての無力さへの悔恨。
それらすべてを込めた言葉に、玉座の間は一瞬、儀礼を超えた静謐な空気に包まれた。
レオンは言葉を続けます。
「金属防具に関しては、後に向かわれる『サハラ・シュタール』こそが至高。まずは我が国で、その身を護る刃と翼を手に入れるのです」
そして、レオンが一礼をして下がると同時に女王が続けました。
「残り二大国をまわりなさい。常人には渡せない武具の支援を約束しましょう。その代わりと言っては何ですが、それぞれの国で大きな厄災を抱えています。それを出来る限りで良いので助けてください。」
「そして弓に関しては謝罪します。大いなる神の弓ですが、古代魔導エルフ文字という難解な言語の習得には膨大な時間を必要とするでしょう。古代魔導エルフ文字は伝承が途絶えて久しい特殊なもの。既存の魔導言語より魔力が高いのですが、世界に何人といない『古代魔導エルフ言語』の魔導言語学者から習得するしかありません。世界中のエルフの森を巡ると良いでしょう」
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