11 / 27
11.
しおりを挟む
「ではとりあえず横になってください」
「だがまず責務を果たさねば」
「そんなうっすい水みたいな精子じゃヤってもヤらなくても大差ないですって。無駄撃ちやめましょ」
「無駄撃ち……」
呆れながら言えば、カダが言葉に詰まる。
デリカシーゼロだが仕方ない。事実だ。
睡眠不足に疲労困憊。見た目に如実に現れるくらいに不健康では、排卵日にヤったところで子は授かれないだろう。
「だいたいそんなまともに寝てないと、体調崩して子をなす前に死んでしまいますよ」
顔色だけではない。全体的にくたびれた印象は初対面から変わらないし、むしろ酷くなっている。
目の下の隈はこびりつくように黒く、目が落ちくぼんで見える。
老けて見える原因のほとんどがそれだろう。
「それは確かに……しかしどうしても時間が足りないのだ。長時間寝ている場合ではない」
「何にどれだけ時間を使っているのかわかりませんけど寝ない方がずっとやばいですって」
「だが、」
「睡眠が足りていないと集中力が落ちて生産性が下がります。起きている時間が長ければいいわけではありません。最低でも六時間は寝てください」
「六時間も……」
「もちろん徹夜明けの朝から六時間とかは駄目ですよ!? ちゃんと夜に寝て朝起きる生活に戻してください」
「その日のうちにすべきことが終わらない場合は?」
「そんなの明日のご自分にぶん投げてください。どうせ国中ぐちゃぐちゃなんですもん。数時間遅れたところで一緒です」
「くっ……」
私の言うことが的を射たのだろう、言い返せないのが悔しいのか、カダが歯噛みした。
表情の動きは少ないが案外感情表現は豊からしい。
「ほらほらいいからとっとと寝てください」
「……扱いがぞんざい過ぎやしないか」
せめてもの反抗なのか、今更なことを言ってくる。
そんなのここに来た初日からずっとで、なんならお互い様だ。
「それでは国王陛下、うつぶせにおなりあそばしやがりください」
うるせー早くしろという気持ちを隠しもせずに、晴れやかな笑顔で言う。
カダは呆気にとられたように口を開けたあとで、小さく笑いを漏らした。
「では、おおせのままに」
観念したように言ってようやく寝そべる。
すかさず遠慮の欠片もなくどすんとカダの腰に乗った。
思い切り呻いた気がするけど気にしない。
「三十分だけでも休息を取ればそれだけ頭がすっきりして思考力が高まるので、少しでも寝た方が捗ります。今日はそれで目をつぶりますけど、明日からはきちんと決まった時間に寝起きしてください」
「そうなのか……だが仮眠をとってもここでのようにはいかなかった」
「そりゃ私がマッサージをしましたので」
「マッサージ」
まるで初めて聞いた言葉みたいにオウム返しされてちょっと引く。
まさか経験がないとでも言うのか。
王様権限を使ってもう少しくらいは良い思いをしてもいいのではないか。
寝ることも休憩することも出来ず、労わってももらえないなんて。
さすがに少し不憫になってくる。
「……ちょっと失礼しますね」
「ああ。頼む」
同情心を抱きつつ背中に触れる。
前回も思ったけれどバッキバキだ。
どこもかしこも凝り固まって、長時間机に貼りついているだろうことが容易に窺えた。
頭皮もカチカチだし腰も腕もパンパンでやばい。
頭痛がひどいと言っていたから、まずは頭のツボと首筋にかけてを入念にほぐしてあげよう。
そう決めて重点的に攻める。
慢性的に睡眠不足なカダは案の定すぐに眠りに落ちて、仮眠についてのレクチャーをする事も出来なかった。
しょうがない、起きてから少し時間を作ってもらおう。
そう諦めて、マッサージを続けることにした。
「だがまず責務を果たさねば」
「そんなうっすい水みたいな精子じゃヤってもヤらなくても大差ないですって。無駄撃ちやめましょ」
「無駄撃ち……」
呆れながら言えば、カダが言葉に詰まる。
デリカシーゼロだが仕方ない。事実だ。
睡眠不足に疲労困憊。見た目に如実に現れるくらいに不健康では、排卵日にヤったところで子は授かれないだろう。
「だいたいそんなまともに寝てないと、体調崩して子をなす前に死んでしまいますよ」
顔色だけではない。全体的にくたびれた印象は初対面から変わらないし、むしろ酷くなっている。
目の下の隈はこびりつくように黒く、目が落ちくぼんで見える。
老けて見える原因のほとんどがそれだろう。
「それは確かに……しかしどうしても時間が足りないのだ。長時間寝ている場合ではない」
「何にどれだけ時間を使っているのかわかりませんけど寝ない方がずっとやばいですって」
「だが、」
「睡眠が足りていないと集中力が落ちて生産性が下がります。起きている時間が長ければいいわけではありません。最低でも六時間は寝てください」
「六時間も……」
「もちろん徹夜明けの朝から六時間とかは駄目ですよ!? ちゃんと夜に寝て朝起きる生活に戻してください」
「その日のうちにすべきことが終わらない場合は?」
「そんなの明日のご自分にぶん投げてください。どうせ国中ぐちゃぐちゃなんですもん。数時間遅れたところで一緒です」
「くっ……」
私の言うことが的を射たのだろう、言い返せないのが悔しいのか、カダが歯噛みした。
表情の動きは少ないが案外感情表現は豊からしい。
「ほらほらいいからとっとと寝てください」
「……扱いがぞんざい過ぎやしないか」
せめてもの反抗なのか、今更なことを言ってくる。
そんなのここに来た初日からずっとで、なんならお互い様だ。
「それでは国王陛下、うつぶせにおなりあそばしやがりください」
うるせー早くしろという気持ちを隠しもせずに、晴れやかな笑顔で言う。
カダは呆気にとられたように口を開けたあとで、小さく笑いを漏らした。
「では、おおせのままに」
観念したように言ってようやく寝そべる。
すかさず遠慮の欠片もなくどすんとカダの腰に乗った。
思い切り呻いた気がするけど気にしない。
「三十分だけでも休息を取ればそれだけ頭がすっきりして思考力が高まるので、少しでも寝た方が捗ります。今日はそれで目をつぶりますけど、明日からはきちんと決まった時間に寝起きしてください」
「そうなのか……だが仮眠をとってもここでのようにはいかなかった」
「そりゃ私がマッサージをしましたので」
「マッサージ」
まるで初めて聞いた言葉みたいにオウム返しされてちょっと引く。
まさか経験がないとでも言うのか。
王様権限を使ってもう少しくらいは良い思いをしてもいいのではないか。
寝ることも休憩することも出来ず、労わってももらえないなんて。
さすがに少し不憫になってくる。
「……ちょっと失礼しますね」
「ああ。頼む」
同情心を抱きつつ背中に触れる。
前回も思ったけれどバッキバキだ。
どこもかしこも凝り固まって、長時間机に貼りついているだろうことが容易に窺えた。
頭皮もカチカチだし腰も腕もパンパンでやばい。
頭痛がひどいと言っていたから、まずは頭のツボと首筋にかけてを入念にほぐしてあげよう。
そう決めて重点的に攻める。
慢性的に睡眠不足なカダは案の定すぐに眠りに落ちて、仮眠についてのレクチャーをする事も出来なかった。
しょうがない、起きてから少し時間を作ってもらおう。
そう諦めて、マッサージを続けることにした。
66
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので
鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど?
――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」
自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。
ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。
ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、
「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。
むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが……
いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、
彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、
しまいには婚約が白紙になってしまって――!?
けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。
自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、
さあ、思い切り自由に愛されましょう!
……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか?
自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、
“白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。
勝手にしろと言ったのに、流刑地で愛人と子供たちと幸せスローライフを送ることに、なにか問題が?
赤羽夕夜
恋愛
アエノール・リンダークネッシュは新婚一日目にして、夫のエリオット・リンダークネッシュにより、リンダークネッシュ家の領地であり、滞在人の流刑地である孤島に送られることになる。
その理由が、平民の愛人であるエディットと真実の愛に満ちた生活を送る為。アエノールは二人の体裁を守る為に嫁に迎えられた駒に過ぎなかった。
――それから10年後。アエノールのことも忘れ、愛人との幸せな日々を過ごしていたエリオットの元に、アエノールによる離婚状と慰謝料の請求の紙が送られてくる。
王室と裁判所が正式に受理したことを示す紋章。事態を把握するために、アエノールが暮らしている流刑地に向かうと。
絶海孤島だった流刑地は、ひとつの島として栄えていた。10年以上前は、たしかになにもない島だったはずなのに、いつの間にか一つの町を形成していて領主屋敷と呼ばれる建物も建てられていた。
エリオットが尋ねると、その庭園部分では、十年前、追い出したはずのアエノールと、愛する人と一緒になる為に婚約者を晒し者にして国王の怒りを買って流刑地に送られた悪役王子――エドが幼い子を抱いて幸せに笑い合う姿が――。
※気が向いたら物語の補填となるような短めなお話を追加していこうかなと思うので、気長にお待ちいただければ幸いです。
【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。
凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」
リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。
その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。
当然、注目は私達に向く。
ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた──
「私はシファナと共にありたい。」
「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」
(私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。)
妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。
しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。
そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。
それとは逆に、妹は──
※全11話構成です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。
『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』
鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」
その一言で、私は婚約を破棄されました。
理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。
……ええ、どうぞご自由に。
私は泣きません。縋りません。
なぜなら——王家は、私を手放せないから。
婚約は解消。
けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。
失ったのは殿下の隣の席だけ。
代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。
最初は誰もが疑いました。
若い、女だ、感情的だ、と。
ならば証明しましょう。
怒らず、怯えず、排除せず。
反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。
派手な革命は起こしません。
大逆転も叫びません。
ただ、静かに積み上げます。
そして気づけば——
“殿下の元婚約者”ではなく、
“揺れない王”と呼ばれるようになるのです。
これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。
王冠の重みを受け入れた一人の女性が、
国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。
【完結】何でも奪っていく妹が、どこまで奪っていくのか実験してみた
東堂大稀(旧:To-do)
恋愛
「リシェンヌとの婚約は破棄だ!」
その言葉が響いた瞬間、公爵令嬢リシェンヌと第三王子ヴィクトルとの十年続いた婚約が終わりを告げた。
「新たな婚約者は貴様の妹のロレッタだ!良いな!」
リシェンヌがめまいを覚える中、第三王子はさらに宣言する。
宣言する彼の横には、リシェンヌの二歳下の妹であるロレッタの嬉しそうな姿があった。
「お姉さま。私、ヴィクトル様のことが好きになってしまったの。ごめんなさいね」
まったく悪びれもしないロレッタの声がリシェンヌには呪いのように聞こえた。実の姉の婚約者を奪ったにもかかわらず、歪んだ喜びの表情を隠そうとしない。
その醜い笑みを、リシェンヌは呆然と見つめていた。
まただ……。
リシェンヌは絶望の中で思う。
彼女は妹が生まれた瞬間から、妹に奪われ続けてきたのだった……。
※全八話 一週間ほどで完結します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる