【完結】婚約破棄された上に妹の身代わりで後宮入りしたけど、王様が塩対応でムカつくので骨抜きにしてやろうと思う

当麻リコ

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13.

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「……来てしまったのだが」
「ええと、ああ、はい」
「社交辞令だというのがよく分かった」
「あちょっ、まっ、」

歓迎されていないと気付いたのか、しょんぼりした様子で引き返そうとするのを咄嗟に止める。
どうやら珍妙な顔をしてしまっていたようだ。

「ままま、遠いところお疲れでしょう。どうぞどうぞ」

袖を掴んで無理やり部屋に引き入れる。
まさか本当に昼寝をしにくるとは思わなかっただけで、迷惑というわけではない。
だいたいそんな死にそうな顔で助けを求めに来た人を、無碍にできるほどひどい人間ではないつもりだ。

「ほらほら寝てください。今日も三十分でよろしいですか?」
「いいのか……?」
「ええ別に。暇ですし。協力するって約束したでしょう」

半ば強引に押し倒すようにベッドに押し込む。

「夜は良く眠れてますか?」
「いやそれが……」
「まさかまだ睡眠時間削ってるんですか!?」
「いや、そうではなく……言われた通りきちんと床についてはいるのだが、上手く寝付けないのだ」

腰に跨りながらため息をつく。
前回いろいろ言ってからまだ一週間だ。
最初のうちはまぁ仕方ないとは思っていた。

「なら大丈夫です。そのうち習慣づいて、ちゃんと眠れるようになります」
「そんな日が来るだろうか……不安と心配事が山積みなんだ」
「睡眠不足が不安のもとです。健康ならば不安や心配より『やってやろう!』という気力がみなぎるはず」

もちろん性格的なものもあるけれど、睡眠不足が解消されればそれだけで片付く問題も多いはずだ。

「適度な食事と睡眠、それから適度な運動も。これ大事ですよ」

グイグイとツボを全力で押しつつ、上機嫌で再び講釈を垂れる。
カダが私の言ったことをちゃんと聞いてくれているのがわかって嬉しかった。

それに寝つきが良くないとは言うが、多少なりとも顔色は改善されている。
元が悪すぎるだけに変化がわかりやすいのだ。

「国を良くするには健康第一。それにはまず睡眠です。良く寝れば食欲も湧くし運動する気力も出てきます。そしたら不安なんて吹っ飛んで頭の中がクリアになるから心配事の解消に繋がるわけです」
「ああそれは確かに。思考がクリアになってきているという実感がある」
「でしょ?!」

得意げに胸を張ると、カダが眠そうな声で笑った。
気になって顔を覗き込めば、口許が緩んでいた。
心なしか、前より少し表情も出てきたように思う。
私が慣れて、僅かな変化を見分けられるようになっただけかもしれないけれど。

「そうだ、夜どうしても眠れないというなら、今夜ここに来た時に泊っていきますか?」
「……ここに?」
「はい。決めた睡眠時間のちょっと前に来ていただいて。じっくりマッサージしてさしあげます。そしたらイチコロでしょ」

実際今もすでに眠りの世界に片足を突っ込んでいる。
ひとりの昼寝が上手くいかないからここに来たはずだ。なのに私の手にかかれば、赤子の手をひねるよりも容易いのだ。

「それは……助かるが……」
「じゃ決まり。セックスはします? ちょっとした運動で気晴らしになるっていうなら付き合いますけど」
「うーん……つかれる……から……」

口調がふにゃふにゃしているのに頑張って会話を続けようとするのが、小さい子供のようで微笑ましい。
どうせ今夜またここに来るのだ、予定の確認は置いといてとりあえず今は寝かせてあげよう。
そう思って口を閉じた。

一応ここに私がいる理由は、カダとの子作りがメインなのだがもはや完全にオマケだ。
今は元気になることが先決。気力体力共に充実した状態で、この国を惨状から立ち直らせてもらわなくては。

早速眠りについたカダが、安らかな寝息を立てている。

打倒すべき貴族の娘の言うことを素直に聞いて、国のために身を削って無茶をしている変な王様。

レゾナント家を潰す潰さないに関わらず、応援したくなってしまう。
先王も、その前の王も大嫌いだったから新しい王様には何も期待していなかったけれど、そういう色眼鏡を外してしまえば、カダという人間は好きだと思えた。

また深く刻まれている眉間のシワを苦笑しながら揉みほぐして、それからなんとなくそうしたくなって、頭を撫でた。

髪が傷んでいるなと、それだけを思った。
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