【完結】婚約破棄された上に妹の身代わりで後宮入りしたけど、王様が塩対応でムカつくので骨抜きにしてやろうと思う

当麻リコ

文字の大きさ
24 / 27

24.

しおりを挟む
「シア。私は君を守りたい。ほんの少しだって危険な目に遭わせたくないんだ」
「だけど、」
「国を良くするために必要なことだ。これからさらに大きな改革が起こるだろう。シアには安全なところにいてほしい。粛清前にレゾナント家には私から話しておこう。シアと養父殿を解放するようにと。元の生活に戻るが良い」
「待ってよ! じゃあカダ様は? あなたは誰が守ってくれるの?」

泣きそうになりながら問うと、カダが情けない顔で笑った。

「命を惜しんではいられない。ずっとその覚悟でやってきた。ただ、」

カダが私を抱き寄せる。息が詰まるほどの強さだった。

「大切なんだ。わかってくれ」

そんな言い方はズルい。
私だってカダが大切なのに。

「離れるのはつらいが仕方ない。シアの今後の生活のためにも頑張るから応援していてくれ」

ゆっくり離れながらカダが笑う。
その曇りない笑みに不安が募っていく。

「父は民衆にとって暴君だった。だから私は貴族に対しての暴君になろうと思う」


カダの決意は固い。
正妃でもなんでもない私が、これ以上王様が決めたことに口を挟めるわけもない。

きっと私と出会うずっと前から推し進めていたことなのだろう。

自分が彼を支える立場になれるわけもなく、この先一緒にいるという未来は最初からありえなかったのだ。

「出会えて良かった。シアのおかげで今の私がある」

吹っ切れたような明るい笑顔に、涙がぼたりと落ちた。
カダが困ったように笑って、指先で涙を拭ってくれた。

「愛してるよ、シア」

強く私を抱きしめて、熱を帯びた声が言う。

「私も、愛してる」

泣き声は震えて、それだけ言うのが精一杯だった。



後宮を出るまでの準備期間はほんの一週間しかなかった。
ここで暮らす女たちにとってはずいぶん急な話だっただろう。
リーシャは終始文句を言っては取り巻きたちに宥められていた。
彼女と会うことももうないのかと思うと少し寂しかった。

その間カダは毎晩私のもとへ訪れた。
これが最後なのだと思うと愛しさが増して、朝が来るのが恨めしかった。
後宮を去る日、カダは見送りには来なかった。
忙しいのだろう。
きっとカダが来たらみっともなく取り乱して縋りついただろうから、居なくて良かったとホッとした。

豪勢な馬車が私を出迎え、レゾナント家への帰路を急いだ。
窓の外を過ぎ去る景色をぼんやり眺める。
現実感を失ったまま、言葉もなく無為な時間を過ごした。

カダからどんな話がいったのかは知らないが、父も母も私と目も合わせずに「早く出ていけ、二度と関わるな」と言葉少なに告げた。
こっちのセリフだと思ったけれど、言い返す気力も湧かず、養父を軟禁しているという部屋へ急ぐ。

「シア!」
「じいちゃん!」

駆け寄ってきた養父と硬く抱き合って泣き崩れる。
ようやく無事を確認できた安堵から、じわじわと日常への帰還を感じ始めていた。

ここまで送り届けてくれた馬車は屋敷の門前で待っていてくれて、再び私と養父を乗せて走り出した。
正確な所在地を教えたわけでもないのに、御者は迷いもなく養父の店へ真っ直ぐに向かっている。貴族連中やその領地の調査をしていたというから、ついでにその場所を調べていてくれたのかもしれない。
カダの配慮に感謝しながら、町の少し手前で馬車を止めてもらい、久しぶりの貧民街へと足を踏み入れた。

懐かしい我が家だ。
レゾナント家の屋敷に戻った時よりも強くそう感じる。

煌びやかな生活とは無縁の、ボロくて質素な住まい。
養父と再び抱き合って、ホッと息を吐く。

私の住む世界はここなのだと、心から思えた。


後宮でのことは夢だと思おう。
そうするのが一番良い。
カダとは二度と会えない。あの日々はもう帰ってこない。
幸福な夢だった。
その夢だけできっとこの先も生きていける。

そう思った。
しおりを挟む
感想 82

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので

鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど? ――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」 自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。 ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。 ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、 「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。 むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが…… いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、 彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、 しまいには婚約が白紙になってしまって――!? けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。 自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、 さあ、思い切り自由に愛されましょう! ……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか? 自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、 “白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。

勝手にしろと言ったのに、流刑地で愛人と子供たちと幸せスローライフを送ることに、なにか問題が?

赤羽夕夜
恋愛
アエノール・リンダークネッシュは新婚一日目にして、夫のエリオット・リンダークネッシュにより、リンダークネッシュ家の領地であり、滞在人の流刑地である孤島に送られることになる。 その理由が、平民の愛人であるエディットと真実の愛に満ちた生活を送る為。アエノールは二人の体裁を守る為に嫁に迎えられた駒に過ぎなかった。 ――それから10年後。アエノールのことも忘れ、愛人との幸せな日々を過ごしていたエリオットの元に、アエノールによる離婚状と慰謝料の請求の紙が送られてくる。 王室と裁判所が正式に受理したことを示す紋章。事態を把握するために、アエノールが暮らしている流刑地に向かうと。 絶海孤島だった流刑地は、ひとつの島として栄えていた。10年以上前は、たしかになにもない島だったはずなのに、いつの間にか一つの町を形成していて領主屋敷と呼ばれる建物も建てられていた。 エリオットが尋ねると、その庭園部分では、十年前、追い出したはずのアエノールと、愛する人と一緒になる為に婚約者を晒し者にして国王の怒りを買って流刑地に送られた悪役王子――エドが幼い子を抱いて幸せに笑い合う姿が――。 ※気が向いたら物語の補填となるような短めなお話を追加していこうかなと思うので、気長にお待ちいただければ幸いです。

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた── 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は── ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』

鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」 その一言で、私は婚約を破棄されました。 理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。 ……ええ、どうぞご自由に。 私は泣きません。縋りません。 なぜなら——王家は、私を手放せないから。 婚約は解消。 けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。 失ったのは殿下の隣の席だけ。 代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。 最初は誰もが疑いました。 若い、女だ、感情的だ、と。 ならば証明しましょう。 怒らず、怯えず、排除せず。 反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。 派手な革命は起こしません。 大逆転も叫びません。 ただ、静かに積み上げます。 そして気づけば—— “殿下の元婚約者”ではなく、 “揺れない王”と呼ばれるようになるのです。 これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。 王冠の重みを受け入れた一人の女性が、 国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。

婚約者の姉に薬品をかけられた聖女は婚約破棄されました。戻る訳ないでしょー。

十条沙良
恋愛
いくら謝っても無理です。

【完結】何でも奪っていく妹が、どこまで奪っていくのか実験してみた

東堂大稀(旧:To-do)
恋愛
 「リシェンヌとの婚約は破棄だ!」  その言葉が響いた瞬間、公爵令嬢リシェンヌと第三王子ヴィクトルとの十年続いた婚約が終わりを告げた。    「新たな婚約者は貴様の妹のロレッタだ!良いな!」  リシェンヌがめまいを覚える中、第三王子はさらに宣言する。  宣言する彼の横には、リシェンヌの二歳下の妹であるロレッタの嬉しそうな姿があった。  「お姉さま。私、ヴィクトル様のことが好きになってしまったの。ごめんなさいね」  まったく悪びれもしないロレッタの声がリシェンヌには呪いのように聞こえた。実の姉の婚約者を奪ったにもかかわらず、歪んだ喜びの表情を隠そうとしない。  その醜い笑みを、リシェンヌは呆然と見つめていた。  まただ……。  リシェンヌは絶望の中で思う。  彼女は妹が生まれた瞬間から、妹に奪われ続けてきたのだった……。 ※全八話 一週間ほどで完結します。

処理中です...