【完結】追放令嬢は海賊生活を謳歌する

当麻リコ

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6.漆黒の船

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強引に手漕ぎボートに乗せられ、すぐに海に出た。
縛られなかっただけマシかもしれないが、二の腕を掴む手の力は強く、生半可な抵抗では抜け出すことも出来そうにない。
今すぐ殺される心配はなさそうだが、だからと言って良い未来も想像できず、最悪の事態にそなえてこっそり身構える。

それにしてもこの二人は本当に海賊なのだろうか。
少なくとも、まっとうな人間ではありえない。

今乗せられている小舟は港からは見えない位置に泊めてあり、どう見ても密航者の振る舞いだ。
そのうえ私は拉致されていて、現在進行形で犯罪が行われている。

だというのに月夜の船上にはなんとも間延びした空気が流れていて、警戒心を保つのが難しい。

なんだこれ。なんだこの状況。

ぎーこぎーこと呑気に響くオールの音に危機感は徐々に薄れ、肩の力を抜いてそっとため息をついた。
子分はなんの目印もない夜の海を、迷いもなく進めていく。
たまに自称海賊の方を振り返っては「手伝わないんかい」と責める目をしているが、自称海賊は素知らぬ顔だ。
それを見て、子分は明らかにイラついた表情をしている。彼は口数は多くないが、表情にすべて出るタイプらしい。

「……あの、どこへ向かっているんですか」

恐る恐る問いかける。
私はこれからどこで何をされるのだろう。
その辺も含めてきちんと説明して欲しい。

「うん? うーん」

自称海賊はもったいぶるように考え込んで、にやりと笑った。
この男には妙な迫力と、仄見える獰猛さはある。

「いいところ」

含むように言って、それ以上は教えてくれなかった。

しばらく沈黙が続く。
目的地へ着くまでに、逃げ出すチャンスはあるだろうか。
現世では泳いだことはないが、前世の魂が泳ぎ方を覚えているかもしれない。

「見えてきたな」

どう対処すべきか思い悩んでいると、どこか一点を見つめて海賊がボソッと呟いた。
つられるように視線の先を追う。

遥か前方に船影が見えた。

あれがこの男たちの海賊船か。
ごくりと喉が鳴る。

ある程度の予測は出来ていたが、いざそれを目の前にすると身体が竦んだ。
徐々に近付いていく。

派手な装飾は何もない。
全体的に黒く、月が隠れれば闇夜に紛れてしまいそうだ。
船首には、映画や漫画で見たような象徴的な像はなかった。
帆は畳まれていて見えないが、あれを広げたらドクロのマークが出てくるのだろうか。

太陽の下で見たらまた違って見えるのかもしれないが、どうやら海賊船と言う単語から連想される船とはやや趣が違うようだ。
だが、一般的な漁船や客船とは明らかに雰囲気が異なる。
砲門らしきものも見える。
余計な装飾がないということは、それらは不要で他の物に特化しているということだ。

色々なものが削ぎ落されたその船は、どこか洗練された美しさのようなものを感じた。

「……あれが、あなたたちの、」
「そう。俺達の船だ」

どこか陶然とした私の問いかけに、男が誇らしげに応える。
船頭を務める男の唇にも、微かに笑みが浮かんでいた。
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