【完結】追放令嬢は海賊生活を謳歌する

当麻リコ

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33.陸上生活②

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アランと別れてウィルと宿に向かう。
この辺に来るときの定宿らしい。

もうふらつきはなくなっていたが、なんとなくそのままウィルの腕にくっついて歩いた。
離れがたいと感じてしまうのはなぜだろう。


目的地に辿り着いて思わず足を止める。
そこは吹けば飛んでしまいそうなほど、ボロい建物だった。

呆然と見上げる私の隣で、ウィルがニヤニヤ笑う気配がする。
私の反応を期待しているのだろう。
箱入りお嬢様はボロ宿に対して果たしてどんな文句を言うのだろう、なんて。

「さ、入りましょうか」

だから何も問題ありませんよ、みたいな澄ました顔で進み出ることにした。

案の定ウィルはつまらなそうに舌打ちをした。
せめてもの抗議に掴んだままの腕をペンッと叩く。すかさず反撃がきた。

宿の受付に着くまで、そのくだらない応酬は無言のまま続いた。


「よう。久しぶりじゃねぇか」

馴染みの店員らしいその人は、ウィルの姿を認めるなり愛想よく笑って言った。
そのあとで私に気付いたらしく、露骨なほどに思い切り顔をしかめた。

「ウィル。この宿じゃ連れ込み禁止っつったろ」
「ばっかちげぇこれはうちの船員だ」

あわてて否定するウィルに、目を丸くした店員が「こりゃ失礼」と言った後、おざなりに私に謝った。

どうやら娼婦と間違えられたらしい。
若い女が腕を絡ませていたら誤解を受けるのも仕方ないかもしれない。
ただ、当然のように娼婦連れと判断されたということは、普段からウィルはそういうのが頻繁ということなのだろう。

するりと腕をほどいて距離を取る。

「……不潔」
「どこがだ馬鹿。若い健全な男なら当然の欲求だろうが」

じとりと睨むように言えば、否定もせずに開き直ってウィルが胸を張った。
冗談交じりの非難だと、正確に理解しているのだろう。

「レディの前でくらい遠慮してくださる?」
「処女の前で、の間違いだろ」

鼻で笑われて足を踏みつける。
即座にスコンと手刀が脳天に落ちた。

「なにやってんだアンタら」

再び始まったくだらないやりとりに、店員が呆れたように肩を竦める。

正直他の船員達と同様、ウィルだって陸に上がればそういう欲求を満たしにいくのを当然だと思っている。
今夜も私を宿に入れたら、そういう相手を探しに行くのだろう。

この男ならばさぞモテることだろう。
精悍な顔立ちもさることながら、あの肉体美だ。
服を着ていても逞しい身体つきというのは想像に難くないほどの体躯だ。
それに加えて、ならず者特有の危険な魅力みたいなものもある。それなのに粗野というわけではなく、どこか洗練された物腰を感じるときもあった。

この男にかかれば、落とせない女などいないに違いない。
探しに行くまでもなく、勝手に寄ってきそうだ。

船員たちもみなそれぞれに魅力ある男性たちばかりだ。
きっと意中の女性を手にして、めくるめく夜を過ごすのだろう。

私には縁遠い話だが、それに対してどうこう言うつもりはない。やっかむ気持ちもない。
むしろみんな頑張れ、楽しい夜を! なんて応援したい気持ちすらある。

なのにどうしてだろう。
ウィルもそうするのだと思うと、少し胸がモヤモヤした。
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