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42.陸上生活最終日
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三日目は昨日までの買い出しで足りないものの買い足して、それが終われば自由に観光していいことになった。
あちこちの店や見どころをエミリオが案内してくれて、アランやテオ達といろんなところを見て回る。
どさくさに紛れていかがわしいところに行こうとするたびにエミリオはお目付け役のワイアットに叱られて、それでも懲りずに変なところに行こうとする。
たぶん、ワイアットを怒らせるのが楽しいのだろう。
ワイアットを前にすると子供っぽさを増すエミリオに呆れつつ、物珍しさにあちこち目移りさせながら観光を楽しむ。
「キョロキョロしてっとはぐれるぞ」
後ろから頭を固定するようにガシッと掴んでウィルが言う。
恨みがましい目で睨むと、にやりと笑われた。
昨夜の変な空気なんてなかったみたいにいつも通りだ。
今日の髪もテオがやってくれたし、髪飾りもつけている。
ピアスだってもちろんアルからもらったものをつけている。
にも関わらずウィルは何もしない。
本当に、なんなのだこの勝手な男は。
「はぐれません」
「どうだか。ガキはすぐ迷子になる」
「じゃあウィルが見ててよ」
「あ?」
「私がはぐれないように。ずっと見てれば」
昨夜の仕返しのつもりで、無茶なことを言う。
どうせそんなことしてくれないでしょ、と鼻で笑いながら言えば、案の定少し考えるような顔をしたあとで「めんどくせ」と軽い調子で言った。
「俺もいろいろ見てーんだよ」
「あっそ」
「だから適当に服でも掴んでろ」
「え?」
「ほら。このへん」
言って服の裾を引っ張って私の手元に寄越す。
「ここ掴まってりゃさすがにはぐれねぇだろ」
「……完全に子供じゃない」
「子供だろうが」
ニヤニヤ笑いながら、小馬鹿にしたように言う。
腹が立ったのでバシッと裾を引っ張る手を叩いた。
「あ、てめ」
「きゃっ」
「あっぶね」
ウィルが仕返しをしようとした瞬間、団体の観光客に押しのけられてよろめいた。
同時に、腕を掴まれウィルの胸元に抱き寄せられる。
ドッと心臓が不穏な音を立て始めた。
人並みが途切れるまでの辛抱だと、ぎゅっと目を閉じて耐える。
しばらくしてようやくウィルの身体が離れて、そっと目を開けた。
「……まずい」
「へ?」
至近距離で見上げたウィルが、複雑な顔で進行方向を見ている。
何かあったのだろうかと首を傾げると、ウィルの視線がこちらを向いた。
「はぐれた」
「え⁉」
慌てて前方を見ると、人ごみの中にエミリオ達の姿は見えなくなっていた。
「ど、どうしよう⁉」
「だから言ったじゃねぇか、はぐれんなって」
「ウィルもはぐれてるじゃない!」
「うるせぇ俺のは不可抗力だ」
「私だって!」
慌てる私に対して、ウィルは冷静だ。この辺の地理を知っているからこその余裕だろうか。
焦る私を見て楽しそうですらある。
「ま、しょうがねぇ。探す時間ももったいねぇし、こっちはこっちで適当に見て回るか」
「ええ? みんな心配しないかな」
「大丈夫だろ。俺がレーナの近くにいるの、テオが見てたしな」
「そうなの? じゃあ向こうも気にせず楽しんでるかな……」
「だろ。ほれ、わかったら行くぞ」
言って手を差し出してくる。
なんだろこの手、と首を傾げてウィルを見ると、有無を言わさず手を繋がれた。
また心臓が変な音を立てる。
「さすがにおまえ一人はぐれたら探し回るハメになるからな」
大きな手が私の手を包む。
私の返事を待たずに、ウィルが歩き出した。
そうしてくれるのがありがたかった。
だって今、私の顔はたぶん真っ赤だ。
免疫がないからとか、そんな単純な理由ではないのは明らかだった。
だって、昨日もテオと手を繋いだ。
最後には緊張もせずにいられた。
むしろ安心して誘導を任せてさえいられた。
なのに。
心臓の音は大きいままで、全身が熱くて、とても平常心ではいられない。
動揺で上手く歩くことさえ出来ないのだ。
どうしてこんな。
なんで恥ずかしいの。
ただ手と手が触れあっているだけなのに。
ウィルは少し後ろを歩く私を振り返らない。
手が繋がっているのだから、迷子を心配する必要がないからだろう。
ずっとこのまま私を見ないでいてほしい。
それで気付かないでいてくれればいい。
そっと手を握り返す私の、はっきりと形になってしまった感情に。
あちこちの店や見どころをエミリオが案内してくれて、アランやテオ達といろんなところを見て回る。
どさくさに紛れていかがわしいところに行こうとするたびにエミリオはお目付け役のワイアットに叱られて、それでも懲りずに変なところに行こうとする。
たぶん、ワイアットを怒らせるのが楽しいのだろう。
ワイアットを前にすると子供っぽさを増すエミリオに呆れつつ、物珍しさにあちこち目移りさせながら観光を楽しむ。
「キョロキョロしてっとはぐれるぞ」
後ろから頭を固定するようにガシッと掴んでウィルが言う。
恨みがましい目で睨むと、にやりと笑われた。
昨夜の変な空気なんてなかったみたいにいつも通りだ。
今日の髪もテオがやってくれたし、髪飾りもつけている。
ピアスだってもちろんアルからもらったものをつけている。
にも関わらずウィルは何もしない。
本当に、なんなのだこの勝手な男は。
「はぐれません」
「どうだか。ガキはすぐ迷子になる」
「じゃあウィルが見ててよ」
「あ?」
「私がはぐれないように。ずっと見てれば」
昨夜の仕返しのつもりで、無茶なことを言う。
どうせそんなことしてくれないでしょ、と鼻で笑いながら言えば、案の定少し考えるような顔をしたあとで「めんどくせ」と軽い調子で言った。
「俺もいろいろ見てーんだよ」
「あっそ」
「だから適当に服でも掴んでろ」
「え?」
「ほら。このへん」
言って服の裾を引っ張って私の手元に寄越す。
「ここ掴まってりゃさすがにはぐれねぇだろ」
「……完全に子供じゃない」
「子供だろうが」
ニヤニヤ笑いながら、小馬鹿にしたように言う。
腹が立ったのでバシッと裾を引っ張る手を叩いた。
「あ、てめ」
「きゃっ」
「あっぶね」
ウィルが仕返しをしようとした瞬間、団体の観光客に押しのけられてよろめいた。
同時に、腕を掴まれウィルの胸元に抱き寄せられる。
ドッと心臓が不穏な音を立て始めた。
人並みが途切れるまでの辛抱だと、ぎゅっと目を閉じて耐える。
しばらくしてようやくウィルの身体が離れて、そっと目を開けた。
「……まずい」
「へ?」
至近距離で見上げたウィルが、複雑な顔で進行方向を見ている。
何かあったのだろうかと首を傾げると、ウィルの視線がこちらを向いた。
「はぐれた」
「え⁉」
慌てて前方を見ると、人ごみの中にエミリオ達の姿は見えなくなっていた。
「ど、どうしよう⁉」
「だから言ったじゃねぇか、はぐれんなって」
「ウィルもはぐれてるじゃない!」
「うるせぇ俺のは不可抗力だ」
「私だって!」
慌てる私に対して、ウィルは冷静だ。この辺の地理を知っているからこその余裕だろうか。
焦る私を見て楽しそうですらある。
「ま、しょうがねぇ。探す時間ももったいねぇし、こっちはこっちで適当に見て回るか」
「ええ? みんな心配しないかな」
「大丈夫だろ。俺がレーナの近くにいるの、テオが見てたしな」
「そうなの? じゃあ向こうも気にせず楽しんでるかな……」
「だろ。ほれ、わかったら行くぞ」
言って手を差し出してくる。
なんだろこの手、と首を傾げてウィルを見ると、有無を言わさず手を繋がれた。
また心臓が変な音を立てる。
「さすがにおまえ一人はぐれたら探し回るハメになるからな」
大きな手が私の手を包む。
私の返事を待たずに、ウィルが歩き出した。
そうしてくれるのがありがたかった。
だって今、私の顔はたぶん真っ赤だ。
免疫がないからとか、そんな単純な理由ではないのは明らかだった。
だって、昨日もテオと手を繋いだ。
最後には緊張もせずにいられた。
むしろ安心して誘導を任せてさえいられた。
なのに。
心臓の音は大きいままで、全身が熱くて、とても平常心ではいられない。
動揺で上手く歩くことさえ出来ないのだ。
どうしてこんな。
なんで恥ずかしいの。
ただ手と手が触れあっているだけなのに。
ウィルは少し後ろを歩く私を振り返らない。
手が繋がっているのだから、迷子を心配する必要がないからだろう。
ずっとこのまま私を見ないでいてほしい。
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