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63.新しい日常
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「よう」
「おはよう、ウィル」
翌朝、宿の食堂で顔を合わせて挨拶を交わした。
ウィルは予想通り本当にいつも通りにしてくれる。
私も思っていたより努力の必要もなくいつも通りに出来たと思う。
「よく寝れたか」
「おかげさまでぐっすり」
気のせいか、今日は女性の気配がないような気がしなくもない。
気を遣わせちゃったかな、申し訳ないことしたなと思いつつそこはやはりちょっと嬉しかった。
「あ、そこの塩を取ってもらえる」
「はいよ」
パンをくわえながら、長い腕でテーブルの端に置かれた塩の瓶を取ってくれる。
何気ない日常の仕草でさえ格好いいってどういうことだろう。
「ウィル」
「あん?」
「好きよ」
「んぐふっ」
塩を受け取りながら言うと、ウィルがパンを喉に詰まらせむせる。
「おまっ、なに、げほっ」
「私の心身の健康のために心に溜めておくのはやめようと思って」
「はぁ?」
にっこり笑って答えると、ウィルが思い切り顔を顰めた。
その顔も好きよ、と言うのはさすがに控えた。
だって気持ちをぶちまけてしまった以上、もう隠す必要はないのだ。
私がウィルを好きということを忘れないとは言ってくれたが、ウィルはともかく私までこれまで通りに振る舞っていては伝えた意味もない。
だから好きと思った瞬間、かっこいいと思った瞬間は素直に口にすることにした。
けれどしつこくならないように、迷惑にならないように適度にだ。
それと、周囲の空気を乱さない程度に。
幸いみんなは食事と会話に夢中で、ボリュームを抑えた私の声は届いていない。
それに前世では、男性は好き好き言われるとその子のことが気になってしまうというのを聞いたことがある。
あわよくばうっかり食指が動いてくれないだろうか。
そんな小狡い目算もあった。
「ね、早く食べないと冷めちゃうよ?」
「おまえなぁ……」
未だわずかにむせるウィルにシレっとした顔で言うと、ウィルが思い切り渋面を作った。
「この宿、ごはん美味しいよねぇ」
「……そーですね」
反論をしようにも人が多い。
諦めたのか、ウィルがムスッとした顔で食事を再開させた。
「その顔も好き」
ああ、結局言っちゃったな。
うっかり声に出したあとで気付き、反省しながらサラダを口に入れ咀嚼する。
どうやらすっかりタガが外れてしまったらしい。
涼しい顔の私とは対照に、ウィルはなんとも言えない珍妙な顔をしていた。
朝食を終えて真っ先にラナを探しに行く。
午前中は気合いが入らないといって薄化粧のラナは、それでもうっとりするほどの美女だった。
私はうっかり告白したことと振られたことを伝え、彼女に美の教えを請うた。
まかしときな、と力強く請け負ってくれたラナに一日ついて回り、今持てる全ての財力を放出して美容に良さそうなものを買い込んだ。
出航までの残り日数はそんな感じで、引きこもっていた日々を取り戻すかのように海賊島を歩き回ることができた。
その間ウィルは夜の訪問を控えることにしたらしい。
とても残念だったが、至極真っ当な判断だと思われる。
隙あらば好き好き言ってくる女と密室に二人きりなんて、身の危険を感じたのだろう。
言い控えるつもりはなかったが、ほんの少しだけ反省をすることにした。
「おはよう、ウィル」
翌朝、宿の食堂で顔を合わせて挨拶を交わした。
ウィルは予想通り本当にいつも通りにしてくれる。
私も思っていたより努力の必要もなくいつも通りに出来たと思う。
「よく寝れたか」
「おかげさまでぐっすり」
気のせいか、今日は女性の気配がないような気がしなくもない。
気を遣わせちゃったかな、申し訳ないことしたなと思いつつそこはやはりちょっと嬉しかった。
「あ、そこの塩を取ってもらえる」
「はいよ」
パンをくわえながら、長い腕でテーブルの端に置かれた塩の瓶を取ってくれる。
何気ない日常の仕草でさえ格好いいってどういうことだろう。
「ウィル」
「あん?」
「好きよ」
「んぐふっ」
塩を受け取りながら言うと、ウィルがパンを喉に詰まらせむせる。
「おまっ、なに、げほっ」
「私の心身の健康のために心に溜めておくのはやめようと思って」
「はぁ?」
にっこり笑って答えると、ウィルが思い切り顔を顰めた。
その顔も好きよ、と言うのはさすがに控えた。
だって気持ちをぶちまけてしまった以上、もう隠す必要はないのだ。
私がウィルを好きということを忘れないとは言ってくれたが、ウィルはともかく私までこれまで通りに振る舞っていては伝えた意味もない。
だから好きと思った瞬間、かっこいいと思った瞬間は素直に口にすることにした。
けれどしつこくならないように、迷惑にならないように適度にだ。
それと、周囲の空気を乱さない程度に。
幸いみんなは食事と会話に夢中で、ボリュームを抑えた私の声は届いていない。
それに前世では、男性は好き好き言われるとその子のことが気になってしまうというのを聞いたことがある。
あわよくばうっかり食指が動いてくれないだろうか。
そんな小狡い目算もあった。
「ね、早く食べないと冷めちゃうよ?」
「おまえなぁ……」
未だわずかにむせるウィルにシレっとした顔で言うと、ウィルが思い切り渋面を作った。
「この宿、ごはん美味しいよねぇ」
「……そーですね」
反論をしようにも人が多い。
諦めたのか、ウィルがムスッとした顔で食事を再開させた。
「その顔も好き」
ああ、結局言っちゃったな。
うっかり声に出したあとで気付き、反省しながらサラダを口に入れ咀嚼する。
どうやらすっかりタガが外れてしまったらしい。
涼しい顔の私とは対照に、ウィルはなんとも言えない珍妙な顔をしていた。
朝食を終えて真っ先にラナを探しに行く。
午前中は気合いが入らないといって薄化粧のラナは、それでもうっとりするほどの美女だった。
私はうっかり告白したことと振られたことを伝え、彼女に美の教えを請うた。
まかしときな、と力強く請け負ってくれたラナに一日ついて回り、今持てる全ての財力を放出して美容に良さそうなものを買い込んだ。
出航までの残り日数はそんな感じで、引きこもっていた日々を取り戻すかのように海賊島を歩き回ることができた。
その間ウィルは夜の訪問を控えることにしたらしい。
とても残念だったが、至極真っ当な判断だと思われる。
隙あらば好き好き言ってくる女と密室に二人きりなんて、身の危険を感じたのだろう。
言い控えるつもりはなかったが、ほんの少しだけ反省をすることにした。
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