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77.病院の一室にて
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ゆっくりと意識が浮上して、薄く目を開ける。
頭が上手く働かない。余程深く眠っていたようだ。
ふと、天井に見覚えがないことに気付く。
ここはどこだろう。
「……また死んだ?」
「またってなんだよ」
すぐ横から声がして、何故か身体は動かなかったから首だけ動かす。
視線の先にウィルがいた。
「……実は前に一度死んだことがあるの」
まだウィルを同じ世界に生きていることにホッとして、ぼんやりした頭で返す。
ウィルは変な顔をして、くるっと後ろに首をめぐらせ「おい、薬足りてねーんじゃねぇか」と誰かに向けて言った。
変な奴だと思われたことに笑いそうになるが、どうしてだか上手く笑えなくて顔を顰める。
「……なんか、どこかわからないけどどこかがすごく痛いんですけど」
下を見て自分の身体の状態を確認したくても、ロクに視線を向けることもできない。
「そりゃおまえ死にかけたからな」
「ええ……?」
よく分からないことを言われて、何があったんだっけと考え込む。
それにしてもなんだかさっきからウィルがずっと不機嫌だ。
「船長、もっとちゃんと説明しないと。起き抜けで記憶が混濁しているのでしょう」
「あれ……ワイアット……?」
ほぼ固定された視界にワイアットが入り込んで、呆れたようにウィルに言った。
ということはここは船の医務室だろうか。にしてはやけに広い気がするが。
「レーナ。キミは一度死にかけた。身体中が痛いのはそのせいだろう」
「死にかけたって、そんな大げさな」
「大袈裟じゃない。結構ギリギリだったんだよ」
柔らかく言うワイアットの笑みに顔が引き攣る。
なんだかよくわからないが、目が笑っていない。
ウィルもだけど、ワイアットもなんだか怒っているらしい。
そういえば海軍が来て、銃で撃たれたような?
じわじわと思い出して半笑いになる。
「え、でもほら、こうしてすぐに意識戻ったわけだし」
「すぐだぁ?」
地響きのようなウィルの声に、身を竦めたくてもうまくいかない。
身体中の力が萎えていて、瞬きひとつすら億劫だ。
「おまえのすぐは一週間のことを言うのか」
「はぇ?」
「意識を失う前のことを覚えているか? あのあとすぐ陸に上がってね。ちゃんとした医者に診せたんだ。ここはその病院」
ワイアットが説明してくれる。
船内かと思ったが違ったらしい。
部屋を見回すことも出来ないから、病院だと言われてもよくわからない。
そういえばベッドが揺れていない。
「それで一週間意識が戻らなくて、みんな心配してる」
「あらまぁ……」
「あらまぁじゃねぇ!」
「いだっ」
バチンと容赦のないでこぴんを食らって呻く。
痛む額を押さえたかったが、腕は上がらなかった。
「重症患者になんてことを!」
「元気じゃねぇか」
やっぱりなんかすごい怒ってる。声も顔も怖い。
なんで九死に一生を得たっぽいのにこんなにキレられてるの。
「許してやるといい。船長が一番心配してたんだから」
「え」
「うるせぇ適当言うな」
「本当のことでしょう。ほらレーナ、そこにベッドがあるだろ」
「ごめん見れない」
「余計なことしゃべんなっつの」
「病室内に泊まり禁止って言われてるのにお金積んで無理言って、」
「黙れ殴るぞ」
蹴倒すように椅子から立ち上がって、ワイアットの胸倉を掴んで凄むが、ワイアットにこたえた様子は無い。
むしろ薄く笑って余裕さえ見せている。
「色街にも行かずずっとここに」
静止が無駄だと悟ったのか、引き摺るようにワイアットを抱えてウィルが強制的に部屋から閉め出した。
ワイアットは再入室を諦めたのか、足音が遠ざかっていくのが聞こえた。
ドアを閉め、こちらに背を向けたまましばしの沈黙が訪れた。
頭が上手く働かない。余程深く眠っていたようだ。
ふと、天井に見覚えがないことに気付く。
ここはどこだろう。
「……また死んだ?」
「またってなんだよ」
すぐ横から声がして、何故か身体は動かなかったから首だけ動かす。
視線の先にウィルがいた。
「……実は前に一度死んだことがあるの」
まだウィルを同じ世界に生きていることにホッとして、ぼんやりした頭で返す。
ウィルは変な顔をして、くるっと後ろに首をめぐらせ「おい、薬足りてねーんじゃねぇか」と誰かに向けて言った。
変な奴だと思われたことに笑いそうになるが、どうしてだか上手く笑えなくて顔を顰める。
「……なんか、どこかわからないけどどこかがすごく痛いんですけど」
下を見て自分の身体の状態を確認したくても、ロクに視線を向けることもできない。
「そりゃおまえ死にかけたからな」
「ええ……?」
よく分からないことを言われて、何があったんだっけと考え込む。
それにしてもなんだかさっきからウィルがずっと不機嫌だ。
「船長、もっとちゃんと説明しないと。起き抜けで記憶が混濁しているのでしょう」
「あれ……ワイアット……?」
ほぼ固定された視界にワイアットが入り込んで、呆れたようにウィルに言った。
ということはここは船の医務室だろうか。にしてはやけに広い気がするが。
「レーナ。キミは一度死にかけた。身体中が痛いのはそのせいだろう」
「死にかけたって、そんな大げさな」
「大袈裟じゃない。結構ギリギリだったんだよ」
柔らかく言うワイアットの笑みに顔が引き攣る。
なんだかよくわからないが、目が笑っていない。
ウィルもだけど、ワイアットもなんだか怒っているらしい。
そういえば海軍が来て、銃で撃たれたような?
じわじわと思い出して半笑いになる。
「え、でもほら、こうしてすぐに意識戻ったわけだし」
「すぐだぁ?」
地響きのようなウィルの声に、身を竦めたくてもうまくいかない。
身体中の力が萎えていて、瞬きひとつすら億劫だ。
「おまえのすぐは一週間のことを言うのか」
「はぇ?」
「意識を失う前のことを覚えているか? あのあとすぐ陸に上がってね。ちゃんとした医者に診せたんだ。ここはその病院」
ワイアットが説明してくれる。
船内かと思ったが違ったらしい。
部屋を見回すことも出来ないから、病院だと言われてもよくわからない。
そういえばベッドが揺れていない。
「それで一週間意識が戻らなくて、みんな心配してる」
「あらまぁ……」
「あらまぁじゃねぇ!」
「いだっ」
バチンと容赦のないでこぴんを食らって呻く。
痛む額を押さえたかったが、腕は上がらなかった。
「重症患者になんてことを!」
「元気じゃねぇか」
やっぱりなんかすごい怒ってる。声も顔も怖い。
なんで九死に一生を得たっぽいのにこんなにキレられてるの。
「許してやるといい。船長が一番心配してたんだから」
「え」
「うるせぇ適当言うな」
「本当のことでしょう。ほらレーナ、そこにベッドがあるだろ」
「ごめん見れない」
「余計なことしゃべんなっつの」
「病室内に泊まり禁止って言われてるのにお金積んで無理言って、」
「黙れ殴るぞ」
蹴倒すように椅子から立ち上がって、ワイアットの胸倉を掴んで凄むが、ワイアットにこたえた様子は無い。
むしろ薄く笑って余裕さえ見せている。
「色街にも行かずずっとここに」
静止が無駄だと悟ったのか、引き摺るようにワイアットを抱えてウィルが強制的に部屋から閉め出した。
ワイアットは再入室を諦めたのか、足音が遠ざかっていくのが聞こえた。
ドアを閉め、こちらに背を向けたまましばしの沈黙が訪れた。
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