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80.海賊団の素性
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「アルはあなたの部下だと言っていたわ。一緒に逃げてきたの?」
「ああ。海賊団のほとんどは元海軍だ」
「そうなの⁉」
「シャルロは俺の副官だったしテオやワイアット達も俺の元部下だ。俺の処遇に納得がいかず、上層部に逆らった。不正の事実は知らせてなかったからな。そのせいでひどい扱いを受けたらしい。それに目を付けた狸がそそのかして、任務中に行方不明になったり死んだことにして俺のもとに送り込んだ。再会したときは愕然としてたよ。死んだと思ってた上官がピンピンしてんだもんな。みんなそんな反応してくるからめちゃくちゃ笑ったわ」
ウィルは思い出してケラケラ笑うが、テオ達に同情してしまう。
信頼してついていった上官が謂れのない罪で処刑されたのだ。上層部は取り合ってくれず、不遇な扱いに甘んじるしかなかったのに実は上官は生きていて感動の再開を果たしたのに爆笑されて。
「みんなあなたの部下だったの?」
「ミゲルは俺の元上官だな。唯一信頼できる人だった。だから死刑が決まった後で不正の証拠を託してしまった。それでまだ小さかったアランごと巻き込んじまった」
一番の悪手だった、と悔しそうな顔で言う。
握りつぶされないように必死だったとはいえ、巻き込んでしまったことを後悔しているのだろう。
「あとは海軍時代は直接かかわったことないやつもいる。俺がいなくなったあとで同じく不正に気付いたやつとかな。海賊島で拾ったやつもいる。みんないいやつばっかだ。ほとんど狸爺の策略通りなのが癪だがな」
皮肉に唇を歪めながら、それでもそう悪くはなさそうに目を細める。
食えない人だとは思っていても、その狸と称される人物を嫌いではないのだろう。
海軍の上層部をさりげなく誘導して、彼らの手持ちの海賊たちにウィルの船を襲わせ、返り討ちにすることで戦力を削いでいく。
貴族の所得隠しに、財産の一部を乗せ商船に偽装した船の情報をウィルに流して財力を削いでいく。
そうやって今まで上手くやってきたのだとウィルが笑う。
今までの出来事がようやく繋がって、すっきりした気持ちになってきた。
「あなたを撃とうとした人は何者なの」
「おまえを殺しかけたクソ野郎か。あいつは何者でもない。俺の同期だったが嫉妬に狂って悪事に手を染めたつまらない男だ」
ウィルを殺すことに執念を燃やしていた男。神経質そうな顔に憎悪の表情を浮かべていた。
確かにこんな人が同期にいては、自分の立場と比較して腐ってしまうのはわかる。
海軍が腐敗していなければ真っ直ぐに競うことも出来たのだろうが、嫉妬から楽な道に流れて堕落してしまったのだろう。
「そういえば海軍はどうしたの⁉ 撃退できたの?」
今更ながらに思い至ってにわかに慌てる。
しゃべっているうちにだいぶ頭がはっきりしてきていたが、まだきちんと働いてはいないらしい。
よく見ればウィルの顔色が悪い。
頬もこけてやつれているし、目の下に濃い隈が出来ている。
まさかウィルも大怪我を負っているのではないか。
ワイアットは元気そうだったが、ほかの船員たちはどうなのだろう。
「落ち着け。みんな生きてる。海軍はクソ野郎も含めて皆殺しにしてやった」
冷徹な声でウィルが言う。
私が退場した時点で、まだそれなりに戦力差はあったはずだ。
それを覆すほどの体力はもう残っていなかったように思えるのに。
「おまえが殺されたと思ったからな。頭のネジがぶっ飛んだ。俺だけじゃなく全員がな」
まるで生きていることを確かめるみたいにウィルが私の首筋に触れる。
一週間も寝たきりだったせいか、話しているだけですでに疲労が蓄積されて呼吸が浅くなっていた。
未だ自覚は薄いが、死にかけたことは事実らしい。
「……おまえを失うかと思った」
優しく私の頬を撫でて静かに言う。
思いつめたような、くたびれた声だ。
「だから、もうやめる」
「……なにを?」
「諦めるのを」
そう言って、力なくベッドに投げ出されたままの私の手を取った。
「ああ。海賊団のほとんどは元海軍だ」
「そうなの⁉」
「シャルロは俺の副官だったしテオやワイアット達も俺の元部下だ。俺の処遇に納得がいかず、上層部に逆らった。不正の事実は知らせてなかったからな。そのせいでひどい扱いを受けたらしい。それに目を付けた狸がそそのかして、任務中に行方不明になったり死んだことにして俺のもとに送り込んだ。再会したときは愕然としてたよ。死んだと思ってた上官がピンピンしてんだもんな。みんなそんな反応してくるからめちゃくちゃ笑ったわ」
ウィルは思い出してケラケラ笑うが、テオ達に同情してしまう。
信頼してついていった上官が謂れのない罪で処刑されたのだ。上層部は取り合ってくれず、不遇な扱いに甘んじるしかなかったのに実は上官は生きていて感動の再開を果たしたのに爆笑されて。
「みんなあなたの部下だったの?」
「ミゲルは俺の元上官だな。唯一信頼できる人だった。だから死刑が決まった後で不正の証拠を託してしまった。それでまだ小さかったアランごと巻き込んじまった」
一番の悪手だった、と悔しそうな顔で言う。
握りつぶされないように必死だったとはいえ、巻き込んでしまったことを後悔しているのだろう。
「あとは海軍時代は直接かかわったことないやつもいる。俺がいなくなったあとで同じく不正に気付いたやつとかな。海賊島で拾ったやつもいる。みんないいやつばっかだ。ほとんど狸爺の策略通りなのが癪だがな」
皮肉に唇を歪めながら、それでもそう悪くはなさそうに目を細める。
食えない人だとは思っていても、その狸と称される人物を嫌いではないのだろう。
海軍の上層部をさりげなく誘導して、彼らの手持ちの海賊たちにウィルの船を襲わせ、返り討ちにすることで戦力を削いでいく。
貴族の所得隠しに、財産の一部を乗せ商船に偽装した船の情報をウィルに流して財力を削いでいく。
そうやって今まで上手くやってきたのだとウィルが笑う。
今までの出来事がようやく繋がって、すっきりした気持ちになってきた。
「あなたを撃とうとした人は何者なの」
「おまえを殺しかけたクソ野郎か。あいつは何者でもない。俺の同期だったが嫉妬に狂って悪事に手を染めたつまらない男だ」
ウィルを殺すことに執念を燃やしていた男。神経質そうな顔に憎悪の表情を浮かべていた。
確かにこんな人が同期にいては、自分の立場と比較して腐ってしまうのはわかる。
海軍が腐敗していなければ真っ直ぐに競うことも出来たのだろうが、嫉妬から楽な道に流れて堕落してしまったのだろう。
「そういえば海軍はどうしたの⁉ 撃退できたの?」
今更ながらに思い至ってにわかに慌てる。
しゃべっているうちにだいぶ頭がはっきりしてきていたが、まだきちんと働いてはいないらしい。
よく見ればウィルの顔色が悪い。
頬もこけてやつれているし、目の下に濃い隈が出来ている。
まさかウィルも大怪我を負っているのではないか。
ワイアットは元気そうだったが、ほかの船員たちはどうなのだろう。
「落ち着け。みんな生きてる。海軍はクソ野郎も含めて皆殺しにしてやった」
冷徹な声でウィルが言う。
私が退場した時点で、まだそれなりに戦力差はあったはずだ。
それを覆すほどの体力はもう残っていなかったように思えるのに。
「おまえが殺されたと思ったからな。頭のネジがぶっ飛んだ。俺だけじゃなく全員がな」
まるで生きていることを確かめるみたいにウィルが私の首筋に触れる。
一週間も寝たきりだったせいか、話しているだけですでに疲労が蓄積されて呼吸が浅くなっていた。
未だ自覚は薄いが、死にかけたことは事実らしい。
「……おまえを失うかと思った」
優しく私の頬を撫でて静かに言う。
思いつめたような、くたびれた声だ。
「だから、もうやめる」
「……なにを?」
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そう言って、力なくベッドに投げ出されたままの私の手を取った。
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