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憂鬱なパーティー
4.歓迎
しおりを挟む来客を告げるベルの音が鳴りました。普段のクロエお嬢様はとても社交的なお方です。ベルが鳴れば、私の後をついて来客者をきちんともてなします。
けれど今日は違います。だって、これから開かれるパーティに参加する人物の内の誰かだと分かっているから。
約束の時間の五分前。一体どなたでしょう。
「アメリア、見てきてちょうだい」
クロエお嬢様は露骨に嫌な顔をしています。あれほど憂鬱にしていらしたのだから仕方ないでしょう。
「ええ、今すぐに」
慌てて階段を降りていくと、ガラス越しに二人の男女が見えました。招待したお客様は三人のはず。
私は胸騒ぎを覚えました。長く侍女として働いていると、荒れるパーティーというのを肌で感じるものです。私の直感はなかなか鋭いと思っています。
「こんにちは、アメリア」
「フレデリック様、お待ちしておりました」
驚きました。外にいたのはフレデリック•マーティン様でした。ブラウンのスーツがよくお似合いです。お父様が銀行家でいらっしゃるフレデリック様は、持ち物もとても洗練されています。クロエお嬢様は彼のことを"鼻持ちならない奴"だと思っているようです。
フレデリック様はお顔も整っていてとても紳士的です。他所の家の使用人も雑に扱わないので、使用人同士の間では人気があります。私の好みではありませんが。
「こちらジジ•ウォーカー。僕の恋人なんだ」
「はじめまして、急にお邪魔してごめんなさい」
初めて見る顔でした。おそらくこのご近所にはいない顔です。ぱっちりと大きな瞳、口を大きく開けてハキハキとお話しされる方です。鮮やかなイエローのドレスは袖は大きなフリルが何重にも付いているのに、体にピッタリと沿うような変わったデザインです。フレデリック様が用意したのでしょうか。
「歓迎するわ」
クロエお嬢様の声は弾んでいました。新しいメンバーが増えたことで、息苦しさが軽くなると思ったのでしょう。
ジジ様は歓迎されたことに、ひどく安心されたようでした。胸を撫で下ろすような仕草をしてクロエお嬢様にご挨拶されていまいした。
「ジジ•ウォーカーよ。ええと、レディ•フェリシア……」
「クロエでいいわ。良かったらジジと呼んでも?」
「ええ、喜んで。嬉しいわ、クロエ」
「ねえ、フレデリックとの馴れ初めを教えてよ」
お二人はすっかり肩を寄せ合っていました。憂鬱そうに暗い表情を浮かべていたクロエお嬢様のご機嫌が良くなったので私も安心です。
「アメリア、突然すまなかったね。どうしても付いていくと聞かなくて……」
フレデリック様はほとほと困り果てているようでした。気の強そうな彼女を持つと苦労しそうです。"ご近所同士"なんて、狭い世界、どんなことがあるかわかりませんものね。心配されるのも分かります。
ジジ様は、ご自身をさっぱりとした性格に見せたいように思えますが、心の内は嫉妬の炎が渦巻いているのかもしれません。
貴方が思う通りここは愛憎渦巻く場所、彼女に耐えられるのでしょうか。
「大丈夫です。クロエお嬢様も新しいお友達ができて嬉しいと思いますよ」
フレデリック様は一瞬苦い表情をされました。私はピンと来たしまいました。この二人はおそらく長くは続かないでしょう。だってフレデリック様は、クロエお嬢様のような方がお好きなのです。
「ありがとう。ところでエミリアたちは? 」
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