【完結】お嬢様を困らせる様な方はこのアメリアが許しません!〜侍女アメリアの秘密の日記帳〜

桐野湊灯

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憂鬱なパーティー

7.グラスを掲げて

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 途中、料理人のマーサに声を掛けられました。クロエお嬢様が育てていたミントはやはり枯れてしまっていたそうです。クロエお嬢様も最後にミントの世話をしたのかいつだったか忘れないでほしい。いくら放っておいても育つからと言って、数ヶ月そのままで大丈夫だとは思えないわ。
 裏庭から取ってきた量じゃ足りないとマーサが泣くので、クロエお嬢様が育てたミント、という名目があるのだから、終わってしまったと言えば済んでしまうのでは?と冗談で言うと、マーサは嬉し泣きをはじめました。
 マーサはここで働く前、それはもう劣悪な環境だったようです。フェリシア家の皆様はお優しいから平気よ、と何度言い聞かせても、彼女は怯えるばかりです。心の傷はそうそう癒せるものではないものね。

 ミントについてクロエお嬢様に相談したところ、「あら、貴重な私のミントを食べられた方はラッキーね。次回のお楽しみにしてもらうわ」と思った通りあっさり引き下がったそうです。クロエお嬢様は次回、と言ったそうだけど、もうミントの栽培には飽きたようなので次回はないでしょう。

 アップルサイダーも好評で冷やしていたものが終わってしまいそうだというので、格納庫から持ってくることにしました。支度を手伝わされたりですっかり広間に戻るのが遅くなってしまいました。

「アメリア、フレデリックを見なかった?」

 クロエお嬢様はアップルパイを頬張りながら訊ねました。
 
「いいえ、見てませんけど……」

 周囲を見回してみるが、確かにフレデリックの姿が見えない。

「ジジが探してるのよ」

 ジジ様は手にグラスを持ったままきょろきょろとフレデリック様の姿を探していました。

「その内戻ってくるだろう」

 ダン様はいつの間にか下に戻ったようでした。いつもはお二人は仲良く、肩がぴったりとくっつくほど寄り添っていらっしゃいますが、今日は拳三つ分ほど離れています。まだぎくしゃくとしているようでした。距離を埋めるようにダン様がクロエお嬢様の細い腕を掴もうとしました。
 クロエお嬢様はその手を強く振り払いました。

「……そうね。エミリアが心配だから少し見てくるわ」

 クロエお嬢様の様子が少し変だったのが気になりました。

「アメリア、エミリアにグラスを持っていくわ」

 言われた通りクロエお嬢様にグラスをお渡しすると、少し青ざめた顔をして、ありがとうと言いました。

「クロエお嬢様、少し休んではそうですか?」

「いいえ、アメリア。大丈夫よ」

 クロエお嬢様はふらふらと階段を登って行きました。ダン様は俯いたまま、持っていた空いたグラスの底を見つめていました。

 
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