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9.食事
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「待たせたな」
声の主はフィンだった。小さな配膳台に料理を乗せて持ってきてくれたのだ。ロイドは彼を部屋の中に招くと、料理を並べるのを手伝った。慌てて、私も手伝おうとすると、フィンがにっこりと笑い、その手を制した。
「ジゼル様、ありがとうございます。ここは、私が」
野菜スープと、ローストされた肉を切り分けたものと、魚のフライが皿に乗せられていた。それから、大きなパイの切れ端で作られたミートパイ。ケーキとプティングまである。
「少し冷めてしまいましたが……こちらは絶対に安全ですので」
「手間を掛けて悪いな」
「お前の言い出しそうなことは分かるから大丈夫だ……こちらは、毒味を済ませてから私たち使用人の分として配分されたものです。念の為、先に私も食べたので大丈夫。ご安心を」
「まあ……そんなことまで」
「こういった場で最も危険なのは正賓室ですからね……」
かといって、各自で食事を取った場合、万が一の際に異変にも気付けない。身を守るためには、自分の用意した食事だけを自分の部屋で取ることだ。
「おいしい~!」
あまりの美味しさに、思わず涙が溢れそうになる。さすが一流の料理人を従えているだけあるわ。
「うちの料理人が喜びます」
フィンが嬉しそうに目を細めて笑った。
「よかった、こんなガツガツ食われちゃ"病弱"も何もないよな……」
「……あ」
そうだ、私は"病弱"キャラだった。ロイドは呆れたように笑った。
「いいんだよ、美味いもの食えて良かった。あんな泣きそうな顔でチキンのパイを見られちゃ申し訳なくて……フィン、ありがとう」
「本当にありがとう」
フィンは少し照れたように俯いて、小さな手帳を取り出した。
「……それで、何かいい情報はあります?」
ああ、そうだ。私は適度に引っ掻き回して、彼らの目にならなくてはいけないのよね……。
「そうね……」
「まあ、まだ到着したばかりですし」
大して収穫もないのに、フィンはまた穏やかに笑って許してくれる。
「お前は?」
ミートパイを頬張るロイドは、少し考えるように目を閉じてながら答えた。
「メリル・スプリングはどうなる?」
「ああ、メリル様」
フィンは困ったように笑って、髪をかき上げた。
「どうしようかと思ったさ……場合によっては反逆罪にもなってしまうからな。彼女は害が無さそうだし、大袈裟にはせずに様子見かな。もう新しい候補を探している場合でもないし」
「えっ、彼女は"退場"じゃないの……?」
「ええ、他のご令嬢も気にしていないようなので、しばらくは騙された振りをしていようかと……」
てっきり、彼女を追い出してもらえると思っていたのに。
「ところで、ロイド。彼女は信頼出来るご令嬢だと言っていたが……」
フィンは唐突に姿勢を正して、ロイドに向き合った。
「お前ともあろう奴が、どうしてこんな素敵なご令嬢と繋がっている?」
もしかして、フィンはこれまでの経緯を知らないの……?
フィンがどこまでこちらの情報を持っているのか、そういえばまだしっかりと聞かされていなかった。
ともすれば、メリルと面識があることは黙っていた方が良さそうだ。
「……秘密」
ロイドは勿体つけて笑った。
メリルのことは自分でなんとかするしかない。ミートパイをもう一つだけ頬張る。スパイスが効いていて本当に美味しい。
「セレスティ・ウィンターは?」
「美人だ」
「そうじゃなくて、だな……」
「美人だよな? あのドレスも彼女によく似合って……話、聞いてるか?」
「聞いてるわよ、ロイド。ああいうツンケンした子が好きだものね」
ロイドは、自分の分のケーキを私にくれようとした手を引っ込めた。好みのタイプを"ツンケン"と称されたのが気に食わないらしい。
「ああ、そうだな」
フィンはロイドと話すときだけ、上品な仮面が剥がれて少年みたいに笑う。そのギャップがまた可愛らしい。
ロイドの分のケーキは、砂糖漬けのフルーツがたくさん入っていてとても美味しかった。少しずつ大事に食べよう。
「じゃあ、ケイティ・オータム」
「彼女は可愛い」
「……そればっかりだな。あまり役に立たないようだから、お前への報酬を減らすぞ」
「俺もまだ到着したばかりだ、大目に見てくれ」
当然ともいうようにロイドが言い返す。
「いいだろう。それでは、しっかり頼むぞ。そろそろ少しずつ"課題"を出すつもりだから」
手に持っていた小さな手帳をパタンと閉じた。
「……それでは、ジゼル様。しっかりお休みください。ロイド、ジゼル様に手を出すなよ」
声の主はフィンだった。小さな配膳台に料理を乗せて持ってきてくれたのだ。ロイドは彼を部屋の中に招くと、料理を並べるのを手伝った。慌てて、私も手伝おうとすると、フィンがにっこりと笑い、その手を制した。
「ジゼル様、ありがとうございます。ここは、私が」
野菜スープと、ローストされた肉を切り分けたものと、魚のフライが皿に乗せられていた。それから、大きなパイの切れ端で作られたミートパイ。ケーキとプティングまである。
「少し冷めてしまいましたが……こちらは絶対に安全ですので」
「手間を掛けて悪いな」
「お前の言い出しそうなことは分かるから大丈夫だ……こちらは、毒味を済ませてから私たち使用人の分として配分されたものです。念の為、先に私も食べたので大丈夫。ご安心を」
「まあ……そんなことまで」
「こういった場で最も危険なのは正賓室ですからね……」
かといって、各自で食事を取った場合、万が一の際に異変にも気付けない。身を守るためには、自分の用意した食事だけを自分の部屋で取ることだ。
「おいしい~!」
あまりの美味しさに、思わず涙が溢れそうになる。さすが一流の料理人を従えているだけあるわ。
「うちの料理人が喜びます」
フィンが嬉しそうに目を細めて笑った。
「よかった、こんなガツガツ食われちゃ"病弱"も何もないよな……」
「……あ」
そうだ、私は"病弱"キャラだった。ロイドは呆れたように笑った。
「いいんだよ、美味いもの食えて良かった。あんな泣きそうな顔でチキンのパイを見られちゃ申し訳なくて……フィン、ありがとう」
「本当にありがとう」
フィンは少し照れたように俯いて、小さな手帳を取り出した。
「……それで、何かいい情報はあります?」
ああ、そうだ。私は適度に引っ掻き回して、彼らの目にならなくてはいけないのよね……。
「そうね……」
「まあ、まだ到着したばかりですし」
大して収穫もないのに、フィンはまた穏やかに笑って許してくれる。
「お前は?」
ミートパイを頬張るロイドは、少し考えるように目を閉じてながら答えた。
「メリル・スプリングはどうなる?」
「ああ、メリル様」
フィンは困ったように笑って、髪をかき上げた。
「どうしようかと思ったさ……場合によっては反逆罪にもなってしまうからな。彼女は害が無さそうだし、大袈裟にはせずに様子見かな。もう新しい候補を探している場合でもないし」
「えっ、彼女は"退場"じゃないの……?」
「ええ、他のご令嬢も気にしていないようなので、しばらくは騙された振りをしていようかと……」
てっきり、彼女を追い出してもらえると思っていたのに。
「ところで、ロイド。彼女は信頼出来るご令嬢だと言っていたが……」
フィンは唐突に姿勢を正して、ロイドに向き合った。
「お前ともあろう奴が、どうしてこんな素敵なご令嬢と繋がっている?」
もしかして、フィンはこれまでの経緯を知らないの……?
フィンがどこまでこちらの情報を持っているのか、そういえばまだしっかりと聞かされていなかった。
ともすれば、メリルと面識があることは黙っていた方が良さそうだ。
「……秘密」
ロイドは勿体つけて笑った。
メリルのことは自分でなんとかするしかない。ミートパイをもう一つだけ頬張る。スパイスが効いていて本当に美味しい。
「セレスティ・ウィンターは?」
「美人だ」
「そうじゃなくて、だな……」
「美人だよな? あのドレスも彼女によく似合って……話、聞いてるか?」
「聞いてるわよ、ロイド。ああいうツンケンした子が好きだものね」
ロイドは、自分の分のケーキを私にくれようとした手を引っ込めた。好みのタイプを"ツンケン"と称されたのが気に食わないらしい。
「ああ、そうだな」
フィンはロイドと話すときだけ、上品な仮面が剥がれて少年みたいに笑う。そのギャップがまた可愛らしい。
ロイドの分のケーキは、砂糖漬けのフルーツがたくさん入っていてとても美味しかった。少しずつ大事に食べよう。
「じゃあ、ケイティ・オータム」
「彼女は可愛い」
「……そればっかりだな。あまり役に立たないようだから、お前への報酬を減らすぞ」
「俺もまだ到着したばかりだ、大目に見てくれ」
当然ともいうようにロイドが言い返す。
「いいだろう。それでは、しっかり頼むぞ。そろそろ少しずつ"課題"を出すつもりだから」
手に持っていた小さな手帳をパタンと閉じた。
「……それでは、ジゼル様。しっかりお休みください。ロイド、ジゼル様に手を出すなよ」
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