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23.フィンの対ロイド用の交渉術(フィン視点)
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「体はもう大丈夫なのか?」
「ああ、もう大丈夫だ。さすがはフィン」
腕を大きく回して、「体が軽い!」と笑っている。あの時は、彼が死んでしまうのではないかと本当に怖かった。なんだかんだと言っても、私にとってロイドは数少ない大切な友人だ。
ところで、話ってなんだ? と、ロイドは先を促す。
「妃候補について、だ」
「ああ、安心しろよ。ジゼルも本気で妃になれると思って参加してない」
ロイドは何を勘違いしているのか、気を遣わせて悪いな、なんて言っている。
「そうじゃない。私はジゼル様にダニエル王子の妃になってほしい」
「……冗談だろう」
「まさか、私はいつでも本気だ」
失礼な奴だ。私は真面目に話している時に冗談など言わない。
「約束と違う。俺とジゼルは元々は人数合わせ、そのはずだろう?」
確かに、最初はそうだった。
「それを言うなら、ダニエル王子に迷惑が掛からぬように確かな家柄のご令嬢を紹介してほしいと言ったはずだ」
薄々は気付いていた。サマー姓はこの国でも多い名字だ、遡れば遠いどこかで繋がりがあってもおかしくないほどで、調べ上げるには途方もない時間が掛かる。一番誤魔化しやすい。
「と言うことは、ジゼルがアリシア・サマーとは全く無関係なことを知っているだろう。ああ、そうだ……以前、あのスプリング家の使用人をしていたということは?」
「……生まれなど、どうにでもなる」
自分でも矛盾したことを言っているとわかっている。だが、本気になればどうにか出来るというのも本当だ。
それにしても、アリシア・サマーと無関係なのは気付いていたが、まさかスプリング家の使用人をしていたとは思わなかった。少しばかり厄介なことだが、これも頑張れば何とか出来ないこともない。
とにかく必死だった。ジゼル・サマーを逃してしまったら、もう二度と彼の妃に相応しいと思える人物が現れないような気がしていた。
「だめだ」
ロイドは頑固な父親のように、頑なに首を縦に振らない。一体こいつは彼女の何なのだろう。
「ジゼル様の本心はどうだ? 彼女はお前のものじゃないだろう」
「そうだが……」
ロイドがグッと言葉に詰まったのが分かった。畳み掛けるように言葉を繋ぐ。反論する隙を与えないのがコツだ。
「ジゼル様が妃になった暁には、今のままお前が彼女に
付いていてやればいい」
ロイドの肩を掴んで、しっかりと目を合わせる。城での生活を想像したのか、瞳が僅かに揺らいだ。ああ、そうだ。報酬は多いが怪しいなんていう仕事を受けることもないぞ。
「ダニエル王子には、彼女のような女性が必要なんだ。優しくて、強い」
彼女がいてくれたら安心だ。
「こんな世界で、彼より早く死んでしまうような女性ではダメなんだ」
これが何より重要なポイントだった。彼を一人にさせないような、強くて逞しい女性。それでいて、少し頼りない彼を優しく包み込んでくれる存在。
「ロイド……」
訴えかけるように名前を呼ぶと、ロイドはとうとう薄い瞼を閉じて熟考タイムに入ったようだった。もうひと押しだ。
「敵に対して怯まずに立ち向かう、特にセレスティ様に対しての、金髪をむしってやる宣言にはグッと来た」
「……もっと他にもグッとくるポイントはあっただろう」
ロイドの目がぱちりと開いた。
「食事をばくばく食べるところ……、何でも食べる女性でなくてはダメだ。有事の際に生き残れない」
私のグッとポイントに、ロイドは片っ端からケチをつけていく。そういえば、昔から好みも合わなかった。
「……それに、彼女は可愛い」
これも大事なポイントだった。むしろ、これが最大の決め手。
「知ってる」
ロイドは呆れたように笑った。やっと意見が一致した。
「……だめだ、だめだ! ジゼルは嫁にはやらない」
「どうして? 彼女に幸せになってほしくないのか?」
「なってほしいさ、だからダメなんだ」
「……あいつにはもっと自由でいてほしい」
「お前が彼女を妻にしたいというなら諦める。だが、そうでないなら、彼女に提案することを許して欲しい」
だめと言ってもするつもりだ。当然、そのことはロイドにもバレているのだろう。
「いいだろう……だが、まず俺が聞く。いいか?」
「ああ、いいだろう」
交渉成立、と差し出した手を、ロイドが掴んだ瞬間だった。壁に何かがぶつかるような音と、パンッと乾いた音が聞こえた。
「ジゼルの部屋からだ……!」
「ああ、もう大丈夫だ。さすがはフィン」
腕を大きく回して、「体が軽い!」と笑っている。あの時は、彼が死んでしまうのではないかと本当に怖かった。なんだかんだと言っても、私にとってロイドは数少ない大切な友人だ。
ところで、話ってなんだ? と、ロイドは先を促す。
「妃候補について、だ」
「ああ、安心しろよ。ジゼルも本気で妃になれると思って参加してない」
ロイドは何を勘違いしているのか、気を遣わせて悪いな、なんて言っている。
「そうじゃない。私はジゼル様にダニエル王子の妃になってほしい」
「……冗談だろう」
「まさか、私はいつでも本気だ」
失礼な奴だ。私は真面目に話している時に冗談など言わない。
「約束と違う。俺とジゼルは元々は人数合わせ、そのはずだろう?」
確かに、最初はそうだった。
「それを言うなら、ダニエル王子に迷惑が掛からぬように確かな家柄のご令嬢を紹介してほしいと言ったはずだ」
薄々は気付いていた。サマー姓はこの国でも多い名字だ、遡れば遠いどこかで繋がりがあってもおかしくないほどで、調べ上げるには途方もない時間が掛かる。一番誤魔化しやすい。
「と言うことは、ジゼルがアリシア・サマーとは全く無関係なことを知っているだろう。ああ、そうだ……以前、あのスプリング家の使用人をしていたということは?」
「……生まれなど、どうにでもなる」
自分でも矛盾したことを言っているとわかっている。だが、本気になればどうにか出来るというのも本当だ。
それにしても、アリシア・サマーと無関係なのは気付いていたが、まさかスプリング家の使用人をしていたとは思わなかった。少しばかり厄介なことだが、これも頑張れば何とか出来ないこともない。
とにかく必死だった。ジゼル・サマーを逃してしまったら、もう二度と彼の妃に相応しいと思える人物が現れないような気がしていた。
「だめだ」
ロイドは頑固な父親のように、頑なに首を縦に振らない。一体こいつは彼女の何なのだろう。
「ジゼル様の本心はどうだ? 彼女はお前のものじゃないだろう」
「そうだが……」
ロイドがグッと言葉に詰まったのが分かった。畳み掛けるように言葉を繋ぐ。反論する隙を与えないのがコツだ。
「ジゼル様が妃になった暁には、今のままお前が彼女に
付いていてやればいい」
ロイドの肩を掴んで、しっかりと目を合わせる。城での生活を想像したのか、瞳が僅かに揺らいだ。ああ、そうだ。報酬は多いが怪しいなんていう仕事を受けることもないぞ。
「ダニエル王子には、彼女のような女性が必要なんだ。優しくて、強い」
彼女がいてくれたら安心だ。
「こんな世界で、彼より早く死んでしまうような女性ではダメなんだ」
これが何より重要なポイントだった。彼を一人にさせないような、強くて逞しい女性。それでいて、少し頼りない彼を優しく包み込んでくれる存在。
「ロイド……」
訴えかけるように名前を呼ぶと、ロイドはとうとう薄い瞼を閉じて熟考タイムに入ったようだった。もうひと押しだ。
「敵に対して怯まずに立ち向かう、特にセレスティ様に対しての、金髪をむしってやる宣言にはグッと来た」
「……もっと他にもグッとくるポイントはあっただろう」
ロイドの目がぱちりと開いた。
「食事をばくばく食べるところ……、何でも食べる女性でなくてはダメだ。有事の際に生き残れない」
私のグッとポイントに、ロイドは片っ端からケチをつけていく。そういえば、昔から好みも合わなかった。
「……それに、彼女は可愛い」
これも大事なポイントだった。むしろ、これが最大の決め手。
「知ってる」
ロイドは呆れたように笑った。やっと意見が一致した。
「……だめだ、だめだ! ジゼルは嫁にはやらない」
「どうして? 彼女に幸せになってほしくないのか?」
「なってほしいさ、だからダメなんだ」
「……あいつにはもっと自由でいてほしい」
「お前が彼女を妻にしたいというなら諦める。だが、そうでないなら、彼女に提案することを許して欲しい」
だめと言ってもするつもりだ。当然、そのことはロイドにもバレているのだろう。
「いいだろう……だが、まず俺が聞く。いいか?」
「ああ、いいだろう」
交渉成立、と差し出した手を、ロイドが掴んだ瞬間だった。壁に何かがぶつかるような音と、パンッと乾いた音が聞こえた。
「ジゼルの部屋からだ……!」
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