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#47 狼王子と追放された聖女様

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 ーー数年後の未来ーー

 私とクリスとの間には、新しい家族である、小さな三人の可愛い子供たちが加わり、とても賑やかに暮らしている。

 三人とも、狼獣人の血を受け継いだクリス同様、狼獣人の血を譲り受けたため、遊びに夢中になると、いつしか狼の子供の姿で王城の広い庭園内を元気に駆け回るようになった。

 近頃は、その様子を皆で眺めながらティータイムを過ごすのが午後の楽しみとなっている。

 クリスと私の周りには、絶えず子供たちや、ルーカスさん、フェアリーにピクシー、クリスの家族がいて、周囲にはいつも笑みが溢れている。

 もうそこには、元いた世界の両親の陰に苦しんでいる自分の姿はない。

 新しい家族もでき、そこには自分の居場所がある。

 庭園に設置されたテーブルセットで美味しいティーとお菓子を味わいながら、私とクリスは仲良く肩を寄せ合い、青空の下、家族と一緒にいつまでもいつまでも笑い合っていた。

 そんな私たちの周辺には、出会った頃と変わらず、麗らかな春のあたたかな風がそよそよと吹いているのだった。



*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚



 ーー百年後。王城の一室にてーー

「こうして我が侭な隣国の王太子に追放された聖女様は、いつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ。おしまい」

「ねえ、おかあしゃまぁ。ついほーされたせ-じょしゃまのおはなし、もっともっとききたーい。よんでよんでぇ」

「ぼくも、ききたぁい。よんでよんでぇ」

「おやおや、ミシェルとアレクはまた言っているのかい?」

「「だってぇ」」

「しょうがないなぁ。でもこれは、我が王家の誇りでもあるからね。『狼王子』という愛称で親しまれていたという、かの英雄クリストファー・パストゥールを内助の功で支えた伝説の聖女ノゾミの話だからね。こうしてこの話を次の世代に引き継いで、ご先祖様のことを称えることは大事だからねえ。いいよ、読んであげるよ」

「「わ~い! おとうしゃま、だいしゅきぃ」」

 
 ある日突然、異世界へ聖女として召喚されてしまったノゾミは、生涯、夫であるクリスと仲睦まじく暮らし、添い遂げ、長寿を全うした。

 その間、争いごとはなく、穏やかに暮らし、精霊の森でのあの騒動以来、あの驚異的な能力を発揮するような事は一度としてなかったのだという。

 けれどその時の事は、我侭王太子の元へ危険をおかし単身で乗り込んだ英雄クリスを大ピンチから救ったとして、ノゾミもクリス同様に、その功績は称えられた。

 まさかノゾミ本人も、こうして百年以上が経った今でも、自分の功績がクリスとともに称えられ、物語となって後世に語り継がれることになろうとは、夢にも思わなかったに違いない。


~END~

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