いじわるドクター

羽村美海

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episodo:1

#5

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*海翔side*


俺、


何、言い訳してんだよ。



ただ、猫に向けて言っただけのことなのに。



猫女、


もとい、


高岡芽依に対して特別だって言った訳でもねえのに…。



俺は、


高岡芽依に出逢ってからのこの1ヶ月の間、


ずっとペースを乱されっぱなしな気がする。



まだ、20歳そこそこの7つも下のアイツに。



女なんて、関わったら煩わしいだけだって解っていたのに。



だから、深入りしないように、


心を許してしまわないようにって、気を付けていた筈なのに…。



いつのまにか、


誤魔化せないくらいに、


こんなに膨らんでしまった想いを俺はどうすれば良いんだろうか…。



自分の想いを隠すために、


黙りこんだアイツに勘繰られるんじゃって思い、言い訳をして、


診察室に戻ってからの俺は、そればかり考えてしまっていた。


自分が思っている以上に、膨らんでしまった想いに気付きもしないで…。


考え事をしながら、

片付けや明日の準備をしていた俺は、

突然の電話の呼び出し音によって意識を現実へと戻された。


固定電話の受話器を取ると、

暫くして、長年聞き慣れた大きな声が耳に流れ込んできた。


『海翔、猫って、まだ飼い主見付かってないんでしょ?』


「……ん、いや、飼い主なら…もう決まったけど…」


ここ最近で、俺は、この台詞を何度…口にしただろう…。


アイツに逢えなくなるのが嫌ってだけの理由で…。


『え!?そうなの?』


「あぁ、解ったらとっとと切るぞ!」


『あんたは、弟のクセに生意気なのよ』


「悪かったな。じゃぁな」


電話の受話器から、

まだ大きな声が流れ出して来るけど、構わず電話を終わらせた。



まるで、

俺と高岡芽依のような、

一方通行のやり取りのようだなって思いながら…。



「……海翔さん、帰りますね。聞こえちゃったんですけど、飼い主見付かって良かったですね。お休みなさい」



電話を終えた俺に、

いつから居たのか、高岡芽依が無理矢理浮かべたような笑顔を張り付けて…、

それだけ告げると診察室から出て行ってしまった。
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