いじわるドクター

羽村 美海

文字の大きさ
33 / 201
episodo:5

#3

しおりを挟む
足元がふわふわとして、

身体は海翔さんに支えられ、

壁につかれていた筈の手は、

いつのまにか服の裾から滑り込んできて、

ひんやりとした冷たい感触に身体がびくっと跳ねるように反応した。


「芽依、ごめん」


それに気づいた海翔さんが、

ハッ……としたような表情で私の顔を覗き込んできたと思ったら、

ガバッと身体を強く抱きしめながら、苦しそうな声を搾り出した。


それが耳に流れ込んできたら、

なんだか切なくなってしまって、

涙がポロリと零れ落ちてしまった。


「海翔さんのバカ。なんで謝るの?」


海翔さんに謝って欲しくなくて、

ギュッと胸に抱きついて泣きながら言うことしかできない。


「芽依、ごめん。泣くなよ」


困ったような海翔さんの声を聞いていると、益々涙が零れてきてしまう。


海翔さんが私にしたこと全部を後悔してるんじゃないかと思ったから……。


「もう、海翔さん謝ってばっかり…」


「…芽依」


チーンって音を響かせて、

目的の階まで辿り着いたと告げられても、暫く抱きついたまま動くことができなかった。



***

私は今、

海翔さんの部屋のソファーに座って、あったかいコーヒーを飲ませてもらっている。


泣いたせいで興奮状態になってしまった私を、海翔さんが膝に乗せて後ろから抱っこしてる状態で。


あの後、

なかなか泣き止まない私を横抱きに抱き上げた海翔さんが、私の部屋に送るって言ってくれたんだけど、


泣きながら帰りたくない……って子供みたいにダダをこねるから、

予定通り海翔さんがここに連れて来てくれたのだった。




「海翔さんは、私とのこと後悔してるの?」


「違う、そんなんじゃない…」


「じゃぁ、なんで?なんで謝ったの?」


「芽依を泣かしてばっかだから」


「ホントに?」


「あぁ」


「良かったぁ」



そして、

気になってたことを聞いて、

後悔してたんじゃないことが解って、

ホッとした私は、振り返って勢いに任せて海翔さんに抱きついて現在に至るんだけど…。


それから少しして、

冷静になった私は、

今になって、海翔さんの部屋に居るんだってことに意識してしまい、緊張感に襲われている。


なんとか緊張してるのを落ち着けようと、抱きつくのをやめ、

あったかいカップを両手で持って、コーヒーを啜っているのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ドクターダーリン【完結】

桃華れい
恋愛
女子高生×イケメン外科医。 高校生の伊吹彩は、自分を治療してくれた外科医の神河涼先生と付き合っている。 患者と医者の関係でしかも彩が高校生であるため、周囲には絶対に秘密だ。 イケメンで医者で完璧な涼は、当然モテている。 看護師からは手作り弁当を渡され、 巨乳の患者からはセクシーに誘惑され、 同僚の美人女医とは何やら親密な雰囲気が漂う。 そんな涼に本当に好かれているのか不安に思う彩に、ある晩、彼が言う。 「彩、      」 初作品です。 よろしくお願いします。 ムーンライトノベルズ、エブリスタでも投稿しています。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

処理中です...